恋に臆病なままではいられない

pino

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六章

63.唯一無二の相棒の幸せ

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 軽く買い出しをしてから店に行くと、既に店の鍵が開いていた。まだ12時前なのに、光ちゃんてばもう来てるのかと少しホッとしてドアを開ける。
 すると、カウンターでコーヒーを飲みながら手作りっぽいお弁当を食べている光ちゃんがいた。


「おう、雪早いな!」

「光ちゃんこそ……そのお弁当どうしたの?」

「ん?ああ、作ってもらったんだよ」

「誰に?」

「良平」

「って誰だよ!」


 普通の顔して、普通に食べながら、普通に答えてるけど、俺からしたら普通じゃない!
 一人暮らしの筈の光ちゃんが手作り弁当を食べているのにも驚きなのに、「良平」って名前にも驚いてしまった。
 俺がいつも通りにツッコむと、光ちゃんはケラケラ笑っていた。


「名前教えてなかったっけ?良平ってのは俺の好きな奴だよ。付き合う事になった」

「思い出した!2号店一緒にやる予定の光ちゃんの好きなホスト野郎だ!」

「あだな長ぇよ。あ、昨日は休んじゃって悪かったな~」


 相変わらずな光ちゃんに俺の怒りゲージが上がりそうになったけど、ここはグッと堪えて話を聞く事にした。
 せっかく光ちゃんに冬真の事を愚痴ろうと思ってたのに……


「もしかして昨日休んだのって……」

「へへ♪良平とデートしてたんだ♪」

「聞いてないよ!」

「落ち着けって。とりあえず荷物置いて来いよ~」


 光ちゃんに言われて、買って来た中に生物があるのを思い出して慌ててバックヤードへ入る。
 それでも光ちゃんは様子を変えずに弁当を食べ続けていた。

 冷蔵庫の中に買って来た物をしまいながら、気持ちの整理をしようと思った。
 今俺が知らなかった事を責めても、光ちゃんを困らせるだけだ。朝から冬真と喧嘩しちゃったのもあるから光ちゃんとだけは上手くやりたい。

 とりあえず、光ちゃんは昨日休んで好きだった良平とか言う奴と一緒に過ごして、付き合う事になった。別におかしい事ではないよ、俺と冬真だって出会ってすぐに付き合う事になったんだし。

 でもさ、でもさぁ!
 俺、まだ光ちゃんの好きな人に会ってないし、何も知らないし、心から「おめでとう」って言えないんだ。

 ふと冷蔵庫の中にある見慣れない箱が目に入った。何だろこれ?昨日こんなのあったかな?
 俺がその箱に手を伸ばそうとした時、光ちゃんがキッチンに入って来て、笑顔で声を掛けて来た。


「そうそう、冷蔵庫の中にお土産あるんだわ。良平から雪に」

「俺に?」

「ワインが好きだって話したら、コレとつまみにチーズ♪今日持って帰れよ」


 そう言ってバックヤードから細長い紙袋から細長い箱をチラッと見せてお土産と言うワインらしき物を見せて来た。
 良平が俺にお土産だと!?
 出来る男アピールか!?
 冷蔵庫の中の物も分かったから中身は見ずにそのまま扉を閉めて光ちゃんを見る。


「あ、ありがとう……お礼言っておいて」

「了解♪お前に会うの楽しみにしてたぞ。いつも俺がお前の話してたから気になってるんだ」

「何て話してるの?」

「可愛い弟がいるって♪」

「ま、間違ってないけどっ」


 光ちゃんの答えに俺は嬉しくて、思わずニヤけそうになって慌てて顔を見られないようにそっぽ向いた。
 

「すぐ怒るし、こうと決めたらなかなか曲げない頑固者だけど、度胸があって、覚悟を決めたら必ずやり遂げるまでやる漢気のある俺の唯一無二の相棒だって教えた」

「…………」


 光ちゃんの言葉に、俺はそっぽ向いたまま動かせずにいた。そしてじんわり込み上げて来る涙。
 それはズルいよ光ちゃん。
 そんな事を言われたら俺、何が何でも祝福してあげなきゃじゃん……

 俺にとっても誰にも代え難い相棒である光ちゃん。冬真達が言うように、俺だって光ちゃんには、好きな事して幸せになってもらいたいんだよ。

 黙ったままでいると、光ちゃんは俺に近寄って頭を優しく撫でてくれた。
 その瞬間、堪えていた涙がポロポロと流れるのが分かった。


「雪は泣き虫だよな~。ほんと、可愛い奴~」

「うるせぇ……」


 俺が憎まれ口を叩くと、光ちゃんは優しく抱きしめてくれた。
 光ちゃんから普段はしない香水の匂いがした。きっと良平がつけているんだ。ふん、光ちゃんに匂いが移るまで近付いて一緒にいたってのか。


「おめでとう光ちゃんっ……良平の事、ちゃんと大切にしろよなっ!」

「おう♪喧嘩したら愚痴でも聞いてくれや♪」


 そして俺は光ちゃんの腕の中で、思い切り泣いた。
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