恋に臆病なままではいられない

pino

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六章

64.自然と仲直り

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 光ちゃんと二人での出勤を終えて、一人でマンションへ向かう。
 結局冬真との事は光ちゃんには話さなかった。冬真からは途中でメッセージは来た。返さずにいたけど、不思議と朝感じた怒りはなかった。

 むしろ冬真に会いたいとさえ思っていた。
 光ちゃんの幸せな話を聞いたからかな?あの後弁当箱を洗っていた光ちゃんから良平の話をたくさん聞いたんだ。恋バナは苦手だと言っておいて結構好きな人の事は自慢したいタイプらしいな。

 その話を聞いたら無性に冬真に会いたくなったんだ。だから冬真から来たメッセージの言い付けを守って、今日は賄いは食べずに帰って来たんだ。
 光ちゃんから受け取った、良平からのお土産を持って。

 冬真から来たメッセージはこうだ。

『いつも怒らせてばかりでごめんなさい。またちゃんと話し合いたい。ワタルくんと一緒に美味しいご飯を作って待ってるから、今日はお腹空かせて帰って来てね』

 あの冬真からこんなメッセージが来たら言う事聞いちゃうでしょ。このメッセージを読んだのは夜の21時とかで、それからずっと二人が買い物に行ったり、一生懸命にキッチンでご飯を作る姿を想像して楽しみにしていた。
 良平に貰った赤ワインに合うご飯だといいな。

 俺は部屋の鍵を開けて中に入る。
 すると、冬真がすぐに廊下を小走りして出迎えに来てくれた。


「雪!おかえり!朝はごめん……良かったらもう一度話を……」

「もー、疲れて帰って来たのに中にも入れてくれないの?玄関で話せってー?」

「ごめんっ荷物持つよ!」


 俺が話を遮ってわざとらしくため息を吐くと、見て分かるぐらい悲しそうな顔をして俺が持ってた紙袋二つを持ってくれた。
 あー、ダメ。冬真にそんな顔されたら我慢出来ない。


「冗談だよ♡俺もまともに話も聞かずに怒ったりしてごめんね?」

「雪……♡」


 俺がニッコリ笑うと、冬真が嬉しそうに笑うから、キスがしたくなって、ただいまのチューをしようとしてる所に、もう一人の住人がバタバタと大きな足音を立ててやって来た。


「ゆっきーおかえり~♪僕ご飯作るの頑張ったよ~♪」

「ワタル、お前わざと邪魔しに来ただろ?」

「えー?なんの事?それよりもご飯冷めちゃうから、とっととお風呂入って来てよ~」

「どうせほとんど冬真がやったんだろ?メニューは何ー?」

「二人で頑張ったんだもーん♪」

「メニューはトマトの煮込みハンバーグだよ♪あと、ローストビーフにも挑戦してみたんだ♪」

「それー!あんなに美味しく出来るとは思わなかったよねー!」

「ハンバーグかぁ♪それにローストビーフ♡ばっちりじゃん♪ねぇ冬真、これ袋から出しておいて~」


 赤ワインに合いそうなご飯で良かったぁ♪
 冬真に手渡した紙袋を指差して言うと、冬真に聞かれた。
 良平って言っても分からないし、そもそも二人は光ちゃんに恋人が出来た事を知らないよな?聞いたら驚くだろうな。


「これ何?」

「光ちゃんの彼氏からのお土産♪俺は赤ワインとチーズ♪二人にはお菓子だって~」


 そうそう、ちゃんと冬真とワタルの分まであったんだ。お菓子って言ってもコンビニに売ってるような物じゃなくて、高級洋菓子店の人気バームクーヘンだ。何かちょっと良いお土産ってとこがホストっぽいよな。


「「彼氏ぃ!?」」


 二人はお土産にじゃなくて、光ちゃんの彼氏に食い付いた。予想通りでおかしくなって笑っちゃった。
 俺も光ちゃんから聞いた時、同じ反応したもんなー。


「昨日休んだのはデートだったんだって。ちなみに2号店出来たら彼氏とやるらしいよ?」

「えー!光ちゃんてば何で僕には言ってくれないんだー!?」

「ワタルは優先順位が低いからに決まってるだろー?」

「雪、大丈夫?」


 俺とワタルが言い合ってると、冬真が心配そうに聞いて来た。
 光ちゃんがますます離れちゃったから、俺が悲しんでるとでも思ったのか?

 甘いな冬真。不思議と今は落ち着いてるんだ。
 今日、光ちゃんから惚気話を聞いた時、光ちゃんは本当に良平の事が好きなんだなって伝わって来たんだ。
 少し照れながら話す光ちゃんを見てたら、ずっと笑顔で聞いていたくもなったんだ。

 それにね、何より今の俺には光ちゃんだけじゃなくて他にも大切な人がいるんだ。

 俺は冬真に近付いてチュッとキスをしてやった。


「冬真がいてくれるから大丈夫♡ずっと一緒にいてくれるんだろ?」

「うん♡ずっと一緒だよ♡」

「いいなー!ゆっきー僕にもしてー!」

「やだよ。ワタルにする意味が分からない」

「ズルーい!僕だけ仲間外れにする気!?」

「ワタルくん、これは仲間外れとかじゃないよ。雪とキスが出来るのは俺だけだ」

「そう言う事~♪それじゃお風呂行って来るから夕飯の準備よろしくね~」

「こうなったら冬真くんにキスしてやる!ゆっきーと間接キスだ!」

「うわっやめろよ!俺とキス出来るのも雪だけなの!」


 二人の仲の良いやり取りを背中にして俺は機嫌良く脱衣所へ向かった。


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