恋に臆病なままではいられない

pino

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六章

68.態度のおかしい同居人

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 俺と冬真とワタルが光ちゃん達と別れて帰ったのは夕方だった。
 リビングで三人揃って少し休みながら話をしていた。
 結局話は保留になった。いや、光ちゃんの事だからあのまま勝手に進めていくだろう。
 だから、俺が文句を言いつつも合わせるしかないんだ。

 
「はぁ、あの二人本当にやる気あるのかなぁ」

「ゆっきー大変ね~。でも大丈夫じゃない?あの光ちゃんだし、本気出せば余裕でしょ」

「雪の負担が大きくなるのは心配だな、俺も出来る事は協力するから」

「うん。冬真には甘えちゃうかも」

「ねぇ僕もいるの忘れてない?」


 もしさっきの話が実現したなら確実に冬真にも迷惑を掛けると思う。だから今の内に冬真にはglowを任せられるようにしておきたいとか考えていたんだ。
 すると、ワタルがプクッと膨れて一生懸命入って来ようとしていた。


「お前は仮だろ。朝も話したけど、家の事をキチンとしてからじゃないと頼る事も出来ないって」

「雪の言う通りだよ。ワタルくんはまずは自分の事を綺麗にするべきだ」

「……冬真くんはいいよね、ゆっきーから愛されてるから」

「え?」


 ここでまたらしくないワタルが出た。
 説得する冬真に対して、聞こえるか聞こえないかって言うぐらいの小さな声でボソッと言った。
 冬真は聞き取れなかったみたいだけど、俺には聞こえたよ。はて、聞かなかった事にするべきか。

 いや、そっちの問題もそのままにはしておけないか。


「ワタル、もしまだ俺に対して恋愛感情があるなら、家の事抜きにして出て行ってもらうぞ。俺には冬真がいる。お前の事を愛する事は出来ない」

「雪……」

「分かってるよ~。二人の邪魔はしませんよ~」


 本当に分かっているのかいないのか、ワタルは何を考えているのか俺には分からなかった。
 こんな不安定なワタルは珍しい。昔別れ際に音信不通になった時ぐらいだった。

 俺はワタルを突き離すような言い方をしたと思う。だけど、期待させるような事を言っても俺やワタルの為にならないし、何より冬真にも不満が溜まるだろう。

 一体ワタルはどうしたいんだろう。


「そう言えば二人は出掛けるんだろ?」

「あれ、冬真話したの?」

「ううん。俺は言ってないよ」


 俺と冬真は帰って来たらホテルにでも行こうと話していたんだけど、ワタルに話した記憶は無かった。


「朝話してるの聞こえたんだよ」

「あ、そうだったんだ」

「俺が出て行くよ。二人は特に予定無いならこのまま家出過ごしたら?なんなら朝まで二人にしてあげるよ」

「出て行くってどこへ?」

「秘密~」


 気を使ってなのか、そんな事を言うワタルに、俺と冬真は顔を見合わせてどうしたもんかと思った。
 これじゃあまるで俺達が邪魔者扱いしてるみたいじゃないか。
 

「何だよ、行く当てあるのかよ」

「まぁね」

「何で秘密にするんだ?言えないような所なのか?」

「ゆっきーこそ何でしつこく聞くんだよ?彼氏でもないのに」

「はぁ!?」

「雪、落ち着いて」

「俺は落ち着いてる!ワタルが隠すからっ」

「ワタルくん、一応行き先聞いてもいい?ほら、一緒に暮らしてるし、心配だから」

「冬真くんまで?友達のとこだよ」

「それなら初めからそう言えばいいじゃないか!お前変だぞ」

「うるさいなぁ~、僕が何をしようと勝手だろ~?二人にとやかく言われる筋合いはない」

「んな!?ワタル!」


 捻くれた態度に俺が注意をすると、ワタルは立ち上がって逃げようとした。
 俺は様子がおかしかったし、態度が気に入らなかったから追い掛けようとしたけど、冬真に止められた。


「待って、行ってどうするんだよ?」

「態度を改めさせるんだよっ」

「正直、ワタルくんの言う事にも一理あると思う。俺と雪は付き合ってるけど、ワタルくんは同居人ってだけで俺達が彼の行動や言動を制限する資格はないよ」

「資格だぁ?あるね!俺はglowの副店長だ!そしてあいつはバイト!部下が生意気だから焼き入れてやるんだよ!」

「あ!雪!」


 冬真に最もな事を言われて俺は、無理矢理ワタルに文句を言えるような事を捻り出してワタルを追った。
 
 本当なら冬真の言う通り放っておくべきなのは分かってるんだ。でも、ワタルの様子が明らかにおかしいのは、気になるし、そのままにしておけなかった。


「ワタルー!」


 多分部屋に行ったんだろう。
 俺はワタルと冬真の部屋のドアを開けて中を確認すると、既に出掛ける準備をしているワタルを見付けた。
 俺の呼び掛けも無視してカバンに物を詰めていた。
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