69 / 76
六章
68.態度のおかしい同居人
しおりを挟む俺と冬真とワタルが光ちゃん達と別れて帰ったのは夕方だった。
リビングで三人揃って少し休みながら話をしていた。
結局話は保留になった。いや、光ちゃんの事だからあのまま勝手に進めていくだろう。
だから、俺が文句を言いつつも合わせるしかないんだ。
「はぁ、あの二人本当にやる気あるのかなぁ」
「ゆっきー大変ね~。でも大丈夫じゃない?あの光ちゃんだし、本気出せば余裕でしょ」
「雪の負担が大きくなるのは心配だな、俺も出来る事は協力するから」
「うん。冬真には甘えちゃうかも」
「ねぇ僕もいるの忘れてない?」
もしさっきの話が実現したなら確実に冬真にも迷惑を掛けると思う。だから今の内に冬真にはglowを任せられるようにしておきたいとか考えていたんだ。
すると、ワタルがプクッと膨れて一生懸命入って来ようとしていた。
「お前は仮だろ。朝も話したけど、家の事をキチンとしてからじゃないと頼る事も出来ないって」
「雪の言う通りだよ。ワタルくんはまずは自分の事を綺麗にするべきだ」
「……冬真くんはいいよね、ゆっきーから愛されてるから」
「え?」
ここでまたらしくないワタルが出た。
説得する冬真に対して、聞こえるか聞こえないかって言うぐらいの小さな声でボソッと言った。
冬真は聞き取れなかったみたいだけど、俺には聞こえたよ。はて、聞かなかった事にするべきか。
いや、そっちの問題もそのままにはしておけないか。
「ワタル、もしまだ俺に対して恋愛感情があるなら、家の事抜きにして出て行ってもらうぞ。俺には冬真がいる。お前の事を愛する事は出来ない」
「雪……」
「分かってるよ~。二人の邪魔はしませんよ~」
本当に分かっているのかいないのか、ワタルは何を考えているのか俺には分からなかった。
こんな不安定なワタルは珍しい。昔別れ際に音信不通になった時ぐらいだった。
俺はワタルを突き離すような言い方をしたと思う。だけど、期待させるような事を言っても俺やワタルの為にならないし、何より冬真にも不満が溜まるだろう。
一体ワタルはどうしたいんだろう。
「そう言えば二人は出掛けるんだろ?」
「あれ、冬真話したの?」
「ううん。俺は言ってないよ」
俺と冬真は帰って来たらホテルにでも行こうと話していたんだけど、ワタルに話した記憶は無かった。
「朝話してるの聞こえたんだよ」
「あ、そうだったんだ」
「俺が出て行くよ。二人は特に予定無いならこのまま家出過ごしたら?なんなら朝まで二人にしてあげるよ」
「出て行くってどこへ?」
「秘密~」
気を使ってなのか、そんな事を言うワタルに、俺と冬真は顔を見合わせてどうしたもんかと思った。
これじゃあまるで俺達が邪魔者扱いしてるみたいじゃないか。
「何だよ、行く当てあるのかよ」
「まぁね」
「何で秘密にするんだ?言えないような所なのか?」
「ゆっきーこそ何でしつこく聞くんだよ?彼氏でもないのに」
「はぁ!?」
「雪、落ち着いて」
「俺は落ち着いてる!ワタルが隠すからっ」
「ワタルくん、一応行き先聞いてもいい?ほら、一緒に暮らしてるし、心配だから」
「冬真くんまで?友達のとこだよ」
「それなら初めからそう言えばいいじゃないか!お前変だぞ」
「うるさいなぁ~、僕が何をしようと勝手だろ~?二人にとやかく言われる筋合いはない」
「んな!?ワタル!」
捻くれた態度に俺が注意をすると、ワタルは立ち上がって逃げようとした。
俺は様子がおかしかったし、態度が気に入らなかったから追い掛けようとしたけど、冬真に止められた。
「待って、行ってどうするんだよ?」
「態度を改めさせるんだよっ」
「正直、ワタルくんの言う事にも一理あると思う。俺と雪は付き合ってるけど、ワタルくんは同居人ってだけで俺達が彼の行動や言動を制限する資格はないよ」
「資格だぁ?あるね!俺はglowの副店長だ!そしてあいつはバイト!部下が生意気だから焼き入れてやるんだよ!」
「あ!雪!」
冬真に最もな事を言われて俺は、無理矢理ワタルに文句を言えるような事を捻り出してワタルを追った。
本当なら冬真の言う通り放っておくべきなのは分かってるんだ。でも、ワタルの様子が明らかにおかしいのは、気になるし、そのままにしておけなかった。
「ワタルー!」
多分部屋に行ったんだろう。
俺はワタルと冬真の部屋のドアを開けて中を確認すると、既に出掛ける準備をしているワタルを見付けた。
俺の呼び掛けも無視してカバンに物を詰めていた。
0
あなたにおすすめの小説
定時後、指先が覚えている
こさ
BL
職場で長く反目し合ってきた二人。
それでも定時後の時間だけは、少しずつ重なっていく。
触れるはずのなかった指先。
逸らさなかった視線。
何も始まっていないのに、
もう偶然とは呼べなくなった距離。
静かなオフィスでゆっくりと近づいていく、
等身大の社会人BL。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる