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第1章*とんでもない専属メイド初日
20・夢か現の延長線(マクシミリアン視点)
しおりを挟む「……貴女は、可哀想な方だ」
マクシミリアンは欲望を引き抜くと、意識を手放したルーナの頬をそっと指先で撫でた。
(私は、変だ)
出会ったばかりだというのに、これほどまでに夢中になるなんて。
ルーナを助けるためとはいえ、彼女を抱きながら、それだけではない感情を抱いた自分がいるのをマクシミリアンは感じていた。
彼女を自分のものにしたいと。
(あの時私は、我を忘れた)
あんなふうに、我を忘れるほど誰を求めたのは初めてだった。
彼女に負担が少ないように手早く、かつ優しく終わらせようと思っていたのに。
ルーナが初めてだと気づいた時、妙な優越感がマクシミリアンの胸に湧いた。
自分が彼女にとって初めての男なのだという、どうしようもない特別感と……。それから、彼女の大事なバージンを奪ったのだという、罪悪感。
(……仕方がなかったとはいえ、私はとんでもないことを)
媚薬の効果を消すためとはいえ、ルーナの中に自分のモノを吐き出してしまった。
このままでは、妊娠させてしまうかもしれない。
(いや、そうなってしまったら責任はとるつもりだが)
別に今交際している女性がいるわけでもない。金銭面的に困っているわけでもない。ルーナのことを嫌っているわけでもない。むしろ……。
(……いや、これ以上考えるのはよそう)
どんどんと深みにはまっていってしまいそうだ。
ともかく、マクシミリアンに問題がなくてもルーナにはあるだろうと、マクシミリアンは考える。
普通に考えて、よく知りもしない男の子どもを身に宿すなど、女性にとって最悪なのではないか。
いくらマクシミリアンが責任をとるつもりであっても、ルーナにとって自分は、出会って初日で顔も見たくない相手に成り下がってしまったに違いない。
(……っそれは嫌だ)
反射的に心のどこかが訴える。
それをどうにか見て見ぬふりをした。
(……これは、一時の感情に過ぎない)
先ほどまでの甘い熱が抜けきれていないだけだと、マクシミリアンは自分に言い聞かせる。
この部屋を出たら。
ルーナと離れたら。
この夜が終わったら。
今胸にくすぶっている感情は、きっと消えてなくなるに違いない。
(そんなことよりも今は……後処理をしなければ……)
マクシミリアンはルーナの秘所の中へ指を差し入れた。
といっても、これ以上ルーナを刺激するつもりはない。
自分の出したものをルーナの中から掻き出すためだ。
指で掻き出しながらふとベッドを見やれば、情事のせいでシーツはよれ、ルーナから零れた破瓜のしるしや交わった二人分の体液がシーツに染みをつくっていた。
シーツはあとで取り替えておかなければならない。
ここはマクシミリアンに与えられた部屋だ。
こんな状態では、この後就寝できない。
あらかた掻き出し終わると、マクシミリアンはルーナの体を拭き清めた。
このままルーナを放置することなど、マクシミリアンの性格上出来なかった。
(これは、デリカシーのない行動なのだろうか……?)
眉間を寄せて、マクシミリアンは考える。
マクシミリアンは昔から、二つ離れた姉をはじめ、女性にそう言われることが多かった。
自分には、デリカシーや配慮というものが若干欠けているのだと。
(い、いや……これは普通だろう。これ以上女性の体を冷やすわけには……)
ルーナにメイド服を着せ、身なりを整える。
傍から見て、何かあったなんて思えないように。
(私がルーナさんにしたことが殿下の耳に入りでもしたら、殿下が何か言ってくるだろうな……)
殿下はルーナのことを気に入っているようだったから。
致し方ない事情があったとはいえ、殿下よりも先に殿下の専属メイドであるルーナに手をつけたと知れたら少々揉めそうだ。
(あの方は気に入ったものを取られるのを何よりも嫌うから……)
殿下とマクシミリアンは、幼い頃からの長い付き合いになる。
事情がどうであれ、マクシミリアンがルーナと体を重ねたことを知ったら殿下がどう出るか。マクシミリアンには簡単に想像がついた。
手早く自分の服を身に付けながら、マクシミリアンは深い溜息を吐き出す。
今の時点で、すでに先が思いやられる……。
ちらりとルーナを見れば、穏やかに目をつむる彼女が目に入って。
ほんの少しだけ、マクシミリアンの胸を叩く鼓動が早まったような気がした。
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