【完結】R-18乙女ゲームの主人公に転生しましたが、のし上がるつもりはありません。

柊木ほしな

文字の大きさ
25 / 75
第1章*とんでもない専属メイド初日

20・夢か現の延長線(マクシミリアン視点)

しおりを挟む

「……貴女は、可哀想な方だ」

 マクシミリアンは欲望を引き抜くと、意識を手放したルーナの頬をそっと指先で撫でた。

(私は、変だ)

 出会ったばかりだというのに、これほどまでに夢中になるなんて。

 ルーナを助けるためとはいえ、彼女を抱きながら、それだけではない感情を抱いた自分がいるのをマクシミリアンは感じていた。

 彼女を自分のものにしたいと。

(あの時私は、我を忘れた)

 あんなふうに、我を忘れるほど誰を求めたのは初めてだった。
 彼女に負担が少ないように手早く、かつ優しく終わらせようと思っていたのに。

 ルーナがだと気づいた時、妙な優越感がマクシミリアンの胸に湧いた。
 自分が彼女にとって初めての男なのだという、どうしようもない特別感と……。それから、彼女の大事なバージンを奪ったのだという、罪悪感。

(……仕方がなかったとはいえ、私はとんでもないことを)

 媚薬の効果を消すためとはいえ、ルーナの中に自分のモノを吐き出してしまった。
  このままでは、妊娠させてしまうかもしれない。
 
(いや、そうなってしまったら責任はとるつもりだが)

 別に今交際している女性がいるわけでもない。金銭面的に困っているわけでもない。ルーナのことを嫌っているわけでもない。むしろ……。

(……いや、これ以上考えるのはよそう)

 どんどんと深みにはまっていってしまいそうだ。
 ともかく、マクシミリアンに問題がなくてもルーナにはあるだろうと、マクシミリアンは考える。
 普通に考えて、よく知りもしない男の子どもを身に宿すなど、女性にとって最悪なのではないか。
 いくらマクシミリアンが責任をとるつもりであっても、ルーナにとって自分は、出会って初日で顔も見たくない相手に成り下がってしまったに違いない。

(……っそれは嫌だ)

 反射的に心のどこかが訴える。
 それをどうにか見て見ぬふりをした。
  
(……これは、一時の感情に過ぎない)

 先ほどまでの甘い熱が抜けきれていないだけだと、マクシミリアンは自分に言い聞かせる。
 
 この部屋を出たら。
 ルーナと離れたら。
 この夜が終わったら。
 今胸にくすぶっている感情は、きっと消えてなくなるに違いない。

(そんなことよりも今は……後処理をしなければ……)

 マクシミリアンはルーナの秘所の中へ指を差し入れた。
 といっても、これ以上ルーナを刺激するつもりはない。
 自分の出したものをルーナの中から掻き出すためだ。

 指で掻き出しながらふとベッドを見やれば、情事のせいでシーツはよれ、ルーナから零れた破瓜のしるしや交わった二人分の体液がシーツに染みをつくっていた。

 シーツはあとで取り替えておかなければならない。
 ここはマクシミリアンに与えられた部屋だ。
 こんな状態では、この後就寝できない。

 あらかた掻き出し終わると、マクシミリアンはルーナの体を拭き清めた。
 このままルーナを放置することなど、マクシミリアンの性格上出来なかった。
 
(これは、デリカシーのない行動なのだろうか……?)

 眉間を寄せて、マクシミリアンは考える。
 マクシミリアンは昔から、二つ離れた姉をはじめ、女性にそう言われることが多かった。
 自分には、デリカシーや配慮というものが若干欠けているのだと。

(い、いや……これは普通だろう。これ以上女性の体を冷やすわけには……)

 ルーナにメイド服を着せ、身なりを整える。
 傍から見て、何かあったなんて思えないように。
 
(私がルーナさんにしたことが殿下の耳に入りでもしたら、殿下が何か言ってくるだろうな……)
 
 殿下はルーナのことを気に入っているようだったから。
 致し方ない事情があったとはいえ、殿下よりも先に殿下の専属メイドであるルーナに手をつけたと知れたら少々揉めそうだ。

(あの方は気に入ったものを取られるのを何よりも嫌うから……)

 殿下とマクシミリアンは、幼い頃からの長い付き合いになる。
 事情がどうであれ、マクシミリアンがルーナと体を重ねたことを知ったら殿下がどう出るか。マクシミリアンには簡単に想像がついた。

 手早く自分の服を身に付けながら、マクシミリアンは深い溜息を吐き出す。
 今の時点で、すでに先が思いやられる……。
 ちらりとルーナを見れば、穏やかに目をつむる彼女が目に入って。
 ほんの少しだけ、マクシミリアンの胸を叩く鼓動が早まったような気がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件

こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?

処理中です...