572 / 767
連載
練習終了、本番前の通知
到着した雪原に向かって第一歩を踏み出した瞬間……自分は盛大に前に倒れた。なぜなら、足を踏み出した瞬間足が雪に埋まり、バランスを保てなくなったためである。すぐさま自分は起き上がったが……
(これ、地面から自分の膝あたりまで雪が積もっている感じなのか。だから足が雪に埋まった、と)
リアルだったら、前に進むのも一苦労だろう。だが、今の自分にはこういう状況も悪路の一つという判定らしく……地面に積もった雪を吹き飛ばすように走っていても負荷が一切ない。しかし、グラッド達はそう言う訳にはいかないだろう……この雪原は、こちらが圧倒的に有利なフィールドと見て良いのかも。
また、この雪原には一定範囲に吹雪が吹き荒れており、その吹雪はゆっくりと雪原の中を移動している事も分かった。この吹雪の中に入るとかなり視界が悪化し、足元も雪がすぐに覆う為普通の人だとこの中を移動するだけで大変だろう……自分には関係ないけど。更にはかなりの速度で体が凍えてくる事も確認。だが、魔王様のマントを纏えば体の凍えは完全に無効化される事もマントの脱着で理解した。
(この雪原フィールドは、スキルと装備の関係で自分にとっては吹雪による視界の悪化以外の妨害要素は意味がないな。このフィールドにグラッド達を追い込むことが出来るなら、かなり優位に戦えるし捕縛も出来る。何とかしてこのフィールドを活かせるように立ち回りたいところだな)
ジャングルの様な木々が多くあるわけでもなく、地下世界の様な地上と地下を行き来しなければいけないわけでもなく、市街地のように奥の建物がこちらの視界を妨げてくる事もない。更には相手の足を奪い、吹雪というこちらにはほぼ害はなく対戦相手のグラッド達には非常に厄介な環境による阻害要素もある。そんなフィールドを活かさない理由など思い当たらない。
更に雪原の情報を集めるべく、雪を跳ね飛ばしながら駆ける。時々見つかる宝箱だが、ここでは雪をかぶっている為なのかぱっと見では地面の雪と同化してしまっている部分が多い為少々見つけずらい。ここまで歩いてきたフィールドと違って、開けられていない宝箱の比率がかなり高い。
一方で天然の落とし穴などはない様にも見受けられた。レガリオンで積もった雪を跳ね飛ばし地面を確認しながら突き進んだが、そう言った仕掛けは確認できなかった。流石にそんな罠まであったら凶悪すぎると言う事になるのだろう。逃げている最中で突然ずぼっと見えない落とし穴にハマってアウトなんて、流石にえぐすぎる。
(後は……足跡というか突き進んだからこそできる跡が消えるのが異様に速いな。一分もすると綺麗に元通りになってしまっている。痕跡が残りにくいというのはちょっと追いかけるのに面倒になる、か?)
このフィールドの特性なのだろう。歩いて後が出来場所に『のみ』雪が降ってきてあっという間に進んだ痕跡を消してしまうのは。そしてふと思った。これ、雪の中に体を小さくして埋まっておけば、その上から雪が降ってくるから体を隠せるんじゃないか、と。青してアイテムによってこちらの《危険察知》を無効化しておけば、近くに居ても自分は気が付かぬまま通り過ぎてしまうのではないか、と。
(あり得るなあ、それ。こっちに優位なフィールドではあるが、完全優位でもないという感じかなー。でもそうなると隠れている間は移動できないし、体が冷えてくるから長時間隠れていると今度は脱出が大変な事になりそう……だが、この可能性は頭に入れておかないとダメだろうな。やっぱりちゃんと見に来てよかった、短時間居るだけでこれだけの情報を集められるのだから)
残された時間はあと一分。このエリアにはグラッドパーティの誰かがいるような気配はしないなぁ……この場所での戦闘とか、追いかけっこをやって感覚を掴んでおきたかったんだけど。やはりイメージはイメージにすぎず、実際にやってみないと分からないと言う事は結構多い。
だから、新規サービスのオンラインゲームの初日にサーバーがダウンしても、掲示板とか不特定多数に見える呟きとかでそのゲームを貶すのは勘弁してやって欲しい。運営側がβテストでこれなら大丈夫だろうと予想して、余裕を持たせて開始してもその予想の斜め上の問題なんかが発生するのはよくある事なのだ……
なんて今の状況と全然関係ない事を何故か思ってしまったタイミングで時間切れ。自分とグラッド達は九九五階のフロアに戻ってきた。一五分でこれか……三〇分会っても鍵を五つそろえるってのは結構難しいかもしれないな。それなりのバランスは保っているのかもしれない。
「時間切れか……結構きついなこりゃ」「結構フィールドが広かったなぁ……三〇分あっても、これは骨が折れるって奴だろうね」「アンタら、これは試練何だから容易い訳ないだろう? シャキッとしな!」
ジャグド、ガル、ゼラァおのおのの言葉である。一方で自分の事をフィールドに飛ばされる前とは別の雰囲気を纏った視線を向けてくる人もいた。グラッドと、ザッドだ。腕を容赦なく折ったから、それが原因だろうか? それを裏付けるかのように、グラッドが口を開く。
「アース、お前が本気で勝つって意気込みを感じられたのは良かったぜ。その上、ザッドの鎧の上から腕を折ってくるとはな……くく、ククククッ! 良いぜ、とても良いじゃねえか! ますます面白くなってきやがった! こうでなきゃ対戦する価値がねえ! 本気で潰しあってこそ、意味があるってモンだ!」
グラッドが楽しくて仕方がないという感じでそんな言葉を自分に向けてきた。その目は、ちょっとやばい感じがしなくもない。そして何より語っていた、早く本番で戦わせろ、と。お互いに見せてない札は多そうだし……本番はより激しい戦いになるだろうな。
「はい、皆様まずは練習お疲れさまでした。五分後に本番となりますが……本番ではいくつかのルールが追加されます。まず、本番では三つの鍵が追加されます。こちらですね」
試験官さんがそう言って、鍵を見せてくる。鍵は純白の鍵、漆黒の鍵、そしてその中間の灰色の鍵。鍵の大きさはどれも五㎝×二㎝の長方形に収まる程度の小さなものだ。
「鍵が無ければ、一部の宝箱は開けられません。豪華な宝箱になれば鍵を二種類、大きい豪華な宝箱となれば三種類持っていなければ開けられなくなります。ですが鍵はあちらこちらに多数配置していますので、全く見つからないと言う事はめったに運が悪くない限りはあり得ないでしょう。また、アース様に捕縛されると手に入れた鍵は失われ、フィールドのどこかに再配置されます」
やっぱり簡単に宝箱を開けられないようにする為の追加ルールか。ここでジャグドが手を挙げた。
「なあ、宝箱を俺の様な技術屋が自力で開けるってのはダメなのか?」「もちろんかまいません。鍵を使わず開ける事も、相応の技術があれば可能であるようになっています。ただし、鍵を使って開ける事で一〇〇%罠を回避できると言う事もお伝えしておきます」
ああ、罠も宝箱に仕掛けられるのね。そうなると鍵を見つけて確実に開けるか危険を冒してでも技術で開けるかの選択になるのか。でも鍵は相当数ばらまかれるようだし、終盤は鍵で開ける一択になるんだろうけど。
「宝箱について、質問があるよー? 鍵のかかっていない宝箱にも罠ってあるの?」「鍵が付けられていない箱に関しては、罠は一切ありません。安心して開けてください」
なるほど、罠があるのは鍵がかかっている箱限定と。恐らく鍵のかかっていない箱の中に鍵が入っている可能性はありそうだな。
「そしてもう一つ、グラッドパーティの皆様が集める五つの鍵ですが、これを見つけた時にアース様の方にどこのエリアで見つかったかが通知されます」
ふむ、これでどこのエリアで見つかったのか分からないという練習時の様な事にはならないのか。まあ、妥当と言えば妥当かな? 鍵が見つかったエリアなのにそれを分からないまま探し回って時間を浪費させられるのは流石にきつい。
「後はアース様に、本番開始直前に鍵の設置するエリアを一つだけ選んでいただきます。一番守りやすい、もしくは探索するグラッドパーティの皆様が探し出すのに苦労すると予想される場所を想像して選んでください」
これは雪原エリア一択かな? 一番自分と相性がいいと思えたエリアだから雪原でいいはずだ。他のエリアで鍵が四つ集められても雪原エリアで粘れば相当な時間を稼ぐことが出来る筈。時間を稼げば、グラッド達の焦りを呼ぶ事も出来るだろう。後はその焦りをつんつんとついて相手の連携を崩していけば勝てる。
「他に質問はございませんね? では本番までしばらくお待ちください」
そこからしばし誰もが沈黙し──いよいよ本番が始まった。
(これ、地面から自分の膝あたりまで雪が積もっている感じなのか。だから足が雪に埋まった、と)
リアルだったら、前に進むのも一苦労だろう。だが、今の自分にはこういう状況も悪路の一つという判定らしく……地面に積もった雪を吹き飛ばすように走っていても負荷が一切ない。しかし、グラッド達はそう言う訳にはいかないだろう……この雪原は、こちらが圧倒的に有利なフィールドと見て良いのかも。
また、この雪原には一定範囲に吹雪が吹き荒れており、その吹雪はゆっくりと雪原の中を移動している事も分かった。この吹雪の中に入るとかなり視界が悪化し、足元も雪がすぐに覆う為普通の人だとこの中を移動するだけで大変だろう……自分には関係ないけど。更にはかなりの速度で体が凍えてくる事も確認。だが、魔王様のマントを纏えば体の凍えは完全に無効化される事もマントの脱着で理解した。
(この雪原フィールドは、スキルと装備の関係で自分にとっては吹雪による視界の悪化以外の妨害要素は意味がないな。このフィールドにグラッド達を追い込むことが出来るなら、かなり優位に戦えるし捕縛も出来る。何とかしてこのフィールドを活かせるように立ち回りたいところだな)
ジャングルの様な木々が多くあるわけでもなく、地下世界の様な地上と地下を行き来しなければいけないわけでもなく、市街地のように奥の建物がこちらの視界を妨げてくる事もない。更には相手の足を奪い、吹雪というこちらにはほぼ害はなく対戦相手のグラッド達には非常に厄介な環境による阻害要素もある。そんなフィールドを活かさない理由など思い当たらない。
更に雪原の情報を集めるべく、雪を跳ね飛ばしながら駆ける。時々見つかる宝箱だが、ここでは雪をかぶっている為なのかぱっと見では地面の雪と同化してしまっている部分が多い為少々見つけずらい。ここまで歩いてきたフィールドと違って、開けられていない宝箱の比率がかなり高い。
一方で天然の落とし穴などはない様にも見受けられた。レガリオンで積もった雪を跳ね飛ばし地面を確認しながら突き進んだが、そう言った仕掛けは確認できなかった。流石にそんな罠まであったら凶悪すぎると言う事になるのだろう。逃げている最中で突然ずぼっと見えない落とし穴にハマってアウトなんて、流石にえぐすぎる。
(後は……足跡というか突き進んだからこそできる跡が消えるのが異様に速いな。一分もすると綺麗に元通りになってしまっている。痕跡が残りにくいというのはちょっと追いかけるのに面倒になる、か?)
このフィールドの特性なのだろう。歩いて後が出来場所に『のみ』雪が降ってきてあっという間に進んだ痕跡を消してしまうのは。そしてふと思った。これ、雪の中に体を小さくして埋まっておけば、その上から雪が降ってくるから体を隠せるんじゃないか、と。青してアイテムによってこちらの《危険察知》を無効化しておけば、近くに居ても自分は気が付かぬまま通り過ぎてしまうのではないか、と。
(あり得るなあ、それ。こっちに優位なフィールドではあるが、完全優位でもないという感じかなー。でもそうなると隠れている間は移動できないし、体が冷えてくるから長時間隠れていると今度は脱出が大変な事になりそう……だが、この可能性は頭に入れておかないとダメだろうな。やっぱりちゃんと見に来てよかった、短時間居るだけでこれだけの情報を集められるのだから)
残された時間はあと一分。このエリアにはグラッドパーティの誰かがいるような気配はしないなぁ……この場所での戦闘とか、追いかけっこをやって感覚を掴んでおきたかったんだけど。やはりイメージはイメージにすぎず、実際にやってみないと分からないと言う事は結構多い。
だから、新規サービスのオンラインゲームの初日にサーバーがダウンしても、掲示板とか不特定多数に見える呟きとかでそのゲームを貶すのは勘弁してやって欲しい。運営側がβテストでこれなら大丈夫だろうと予想して、余裕を持たせて開始してもその予想の斜め上の問題なんかが発生するのはよくある事なのだ……
なんて今の状況と全然関係ない事を何故か思ってしまったタイミングで時間切れ。自分とグラッド達は九九五階のフロアに戻ってきた。一五分でこれか……三〇分会っても鍵を五つそろえるってのは結構難しいかもしれないな。それなりのバランスは保っているのかもしれない。
「時間切れか……結構きついなこりゃ」「結構フィールドが広かったなぁ……三〇分あっても、これは骨が折れるって奴だろうね」「アンタら、これは試練何だから容易い訳ないだろう? シャキッとしな!」
ジャグド、ガル、ゼラァおのおのの言葉である。一方で自分の事をフィールドに飛ばされる前とは別の雰囲気を纏った視線を向けてくる人もいた。グラッドと、ザッドだ。腕を容赦なく折ったから、それが原因だろうか? それを裏付けるかのように、グラッドが口を開く。
「アース、お前が本気で勝つって意気込みを感じられたのは良かったぜ。その上、ザッドの鎧の上から腕を折ってくるとはな……くく、ククククッ! 良いぜ、とても良いじゃねえか! ますます面白くなってきやがった! こうでなきゃ対戦する価値がねえ! 本気で潰しあってこそ、意味があるってモンだ!」
グラッドが楽しくて仕方がないという感じでそんな言葉を自分に向けてきた。その目は、ちょっとやばい感じがしなくもない。そして何より語っていた、早く本番で戦わせろ、と。お互いに見せてない札は多そうだし……本番はより激しい戦いになるだろうな。
「はい、皆様まずは練習お疲れさまでした。五分後に本番となりますが……本番ではいくつかのルールが追加されます。まず、本番では三つの鍵が追加されます。こちらですね」
試験官さんがそう言って、鍵を見せてくる。鍵は純白の鍵、漆黒の鍵、そしてその中間の灰色の鍵。鍵の大きさはどれも五㎝×二㎝の長方形に収まる程度の小さなものだ。
「鍵が無ければ、一部の宝箱は開けられません。豪華な宝箱になれば鍵を二種類、大きい豪華な宝箱となれば三種類持っていなければ開けられなくなります。ですが鍵はあちらこちらに多数配置していますので、全く見つからないと言う事はめったに運が悪くない限りはあり得ないでしょう。また、アース様に捕縛されると手に入れた鍵は失われ、フィールドのどこかに再配置されます」
やっぱり簡単に宝箱を開けられないようにする為の追加ルールか。ここでジャグドが手を挙げた。
「なあ、宝箱を俺の様な技術屋が自力で開けるってのはダメなのか?」「もちろんかまいません。鍵を使わず開ける事も、相応の技術があれば可能であるようになっています。ただし、鍵を使って開ける事で一〇〇%罠を回避できると言う事もお伝えしておきます」
ああ、罠も宝箱に仕掛けられるのね。そうなると鍵を見つけて確実に開けるか危険を冒してでも技術で開けるかの選択になるのか。でも鍵は相当数ばらまかれるようだし、終盤は鍵で開ける一択になるんだろうけど。
「宝箱について、質問があるよー? 鍵のかかっていない宝箱にも罠ってあるの?」「鍵が付けられていない箱に関しては、罠は一切ありません。安心して開けてください」
なるほど、罠があるのは鍵がかかっている箱限定と。恐らく鍵のかかっていない箱の中に鍵が入っている可能性はありそうだな。
「そしてもう一つ、グラッドパーティの皆様が集める五つの鍵ですが、これを見つけた時にアース様の方にどこのエリアで見つかったかが通知されます」
ふむ、これでどこのエリアで見つかったのか分からないという練習時の様な事にはならないのか。まあ、妥当と言えば妥当かな? 鍵が見つかったエリアなのにそれを分からないまま探し回って時間を浪費させられるのは流石にきつい。
「後はアース様に、本番開始直前に鍵の設置するエリアを一つだけ選んでいただきます。一番守りやすい、もしくは探索するグラッドパーティの皆様が探し出すのに苦労すると予想される場所を想像して選んでください」
これは雪原エリア一択かな? 一番自分と相性がいいと思えたエリアだから雪原でいいはずだ。他のエリアで鍵が四つ集められても雪原エリアで粘れば相当な時間を稼ぐことが出来る筈。時間を稼げば、グラッド達の焦りを呼ぶ事も出来るだろう。後はその焦りをつんつんとついて相手の連携を崩していけば勝てる。
「他に質問はございませんね? では本番までしばらくお待ちください」
そこからしばし誰もが沈黙し──いよいよ本番が始まった。
あなたにおすすめの小説
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。