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十七章
十七話 ヤナギ -愛の悲しみ- その三
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獅子王先輩と古見君の謝罪を終えた次の日、私は今後の対策を練る為に会議をおこなうことにした。
参加者は私、獅子王先輩と古見君の三人。
場所は風紀委員室。橘先輩にお願いして、この部屋を使わせてもらえることになった。
ああ、ついに私は帰ってきた、この部屋に。今なら少佐の気持ちが手に取るように分かっちゃう。
もちろん、核弾頭を叩き込むような野暮なことはしない。平和が一番だよね。
風紀委員室は、私の知っているそのままの状態だった。何も変わっていない。
机の配置、橘先輩ご愛用のポット、私がストックしていたお菓子……何も変わっていないのに少しだけ感傷的になっちゃう。
思えば、橘先輩に言い負かされて、この部屋を飛び出したんだよね。
その後も橘先輩に逆らって、一時期は風紀委員クビになりそうだったけど、私は今、ここに立っている。
それってつまり、私が風紀委員最強ってことにならない?
この委員は私が乗っ取りました!
私は橘先輩が座っている席に堂々と座り込む。
何コレ! 柔らかっ! ちょっとずるくない! 私達の座っている席はパイプ椅子なのに!
私はくるくると椅子に座りながら回ってみせる。わーい、楽しいな~。
「ねえ、伊藤さん。無理してない?」
古見君が心配そうに見つめているけど、私はにっこりと笑ってみせる。
心配をこれ以上掛けるわけにはいかない。特に私事だから。
話を進めよう。
「無理なんてしてないよ、古見君。では、会議を始めましょうか。二人を邪魔する風紀委員は残り一人、橘先輩だけです。その橘先輩との勝負が残っていますが、この勝負に勝つために、私はある秘策を用意しました」
「おおっー」
古見君は感嘆の声をあげるけど、獅子王先輩は難しい顔をしている。
ちなみに会議が始まった途端、橘先輩の椅子は獅子王先輩に乗っ取られてしまい、いつものパイプ椅子に座っている。
私は獅子王先輩の表情が気になり、直接尋ねてみた。
「獅子王先輩? 何か意見があるのですか?」
「……いや、ねえよ。続けてくれ」
珍しい……いつもは直球で物事をいう獅子王先輩が我慢しているなんて……。
私は心配でつい、獅子王先輩のおでこに手を当てようとした。
「頭、大丈夫ですか、獅子王先輩? 心の病ですか?」
獅子王先輩の手が私の手首に……。
「いたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ! いたいいたいいたい!」
「どうだ? 心の病にみえるか?」
「みえませんみえませんみえません! 手を離してください!」
痛いよ、もう!
手首に獅子王先輩の手の形が赤く残っている。
信じられない! 痕が残ったらどうするのよ! 先輩だってちゃんと手加減……。
私は今考えたことを忘れようと、頭をブンブンと振った。
「一さん、ダメだよ! 伊藤さん、大丈夫?」
古見君が私の手をさすってくれる。ちょっとだけ、痛みが引いたかも。美少年の少し硬い手にさすられるのも乙だなって思っちゃった。それに……。
「古見君、獅子王先輩を名前で呼んでいるんだね」
「うん。恋人らしくふるまうのなら、名前で呼び合う方がいいと思って。変かな?」
私は二人を祝福するように笑顔で頷く。
「変じゃないよ。私はいいと思う」
「ありがとう」
古見君のはにかんだ幸せそうな顔に、胸の奥に痛みがはしった。古見君が幸せなら、それはいいとこなのに……。
「おい、伊藤」
「な、なんでしょう?」
こ、こわ! 獅子王先輩が私の事、睨んでる。なんで? もしかして、ヤキモチ?
「その……なんだ……余所余所しいんだよ」
「は?」
獅子王先輩がスネている? なにこれ?
ふてくされたような顔をして、私と目を合わさない獅子王先輩に、私は呆然としていた。
「伊藤は、ひなたの友達だろ? なら、俺様の友達でもある。特別に俺様の名前を呼び捨てにする権利をやる。ありがたく思え」
えっ? どういうこと? 友達の友達は友達? いい○もの再来?
「要するに友達になってくださいって意味だよ」
「ひなた、うるせえぞ!」
あ、あははっ。
獅子王先輩が私と友達になりたいなんて、ちょっと嬉しいな。ミジンコ扱いから友達に大出世。
獅子王先輩って本当に、少女漫画の主人公みたい。興味あるかないかの差が激しいよね。
「分かりました。友達でも先輩ですのでさんづけでいいですか?」
「呼び捨てにしろ。命令だ」
「……」
と、友達だよね? 友達に命令しちゃダメって教わらなかったのかな?
まっ、いっか。
「では、一」
「……」
「か、顔が怖いですよ、一」
な、なぜか思いっきり睨まれているんですけど! 怖っ! 男の子の名前を呼んでここまでドキドキしたのは初めて。
どうしてだろう……全然ときめきがないんですけど。
「やっぱり名字でさんづけしろ。伊藤に名前で呼び捨てされると、イラっとくる」
えええっ~。本当にめんどくさいな、この人!
仕方ない、ここは年下の私が大人になるのよ、ほのか。私、ガンバ!
私は自分にエールを送る。だって、誰も私をねぎらってくれないんだもん。しかも、理不尽だらけ。本当に世の中、辛いっす。
「獅子王さん……これでいいですか?」
「ああ、いいぞ。伊藤、下の名前は?」
「ほのかです」
「なら、ほのか。話を進めろ」
私は名前で呼ぶんだ……。
馴れ馴れしい男の子はよく、名前で私の事を呼ぶけど、獅子王先輩はそんな感じがしない。フランクな感じ……かな? 召使とかじゃないよね? 友達だと思われているってことでいいよね?
獅子王さんの気持ちがよくわからない。
「そ、それでは、話を元に戻しますね。橘先輩の勝負に勝つための秘策、それは文化祭こと、青島祭の出し物です!」
「青島祭の」
「出し物?」
二人はきょとんとしている。
ふふっ、意味が分からないって顔していますね。では、説明してあげましょう!
腰に手を当て、私は説明を開始する。ちなみに青島では、文化祭の事を青島祭と呼んでいる。橘先輩に教えてもらった。
「そうです! 青島祭の出し物で、二人の愛が純粋であること、間違っていないことをみんなにアピールします! ちなみに、アピールする方法は劇です!」
これぞ、私の秘策! クラスの出し物を話し合っていたときに考えついた妙案。
劇の中なら、男の子同士でも恋愛物語を演じることができる。
演技として、堂々とギャラリーの前でいちゃつくことができる! いい物語とルックスのいい二人なら、絶対にウケる!
そのことを二人に話してみた。だけど、ピンとこないのか、二人の反応は微妙。
「劇といってもな。ひなた、劇なんてやったことあるか?」
「木の役なら……」
ううっ、古見君、切ないことを言わないでよ。
古見君ならヒロインの座を手にすることなんてわけないと思うのに。
余談だけど、私が幼稚園の時、主役を演じたことがある。途中でセリフを忘れてしまって、本番中に泣いてしまったという黒歴史が存在する。
しかも、その姿をパパンにデジタルハイビジョンビデオカメラでとられてしまった。
なぜ私の親はこんな羞恥プレイを残すのか、疑問に思えて仕方ない。
消したらお小遣い抜きになるので手を出せずにいるんだけど、いつか、パパンやママンの恥ずかしいシーンを撮ってやるんだから。
まあ、それはまたの機会にするとして、今は劇の事を考えよう。
「そこはセリフを少なくするなり、劇の時間を短くする等の対策を考えましょう。細かい劇の準備に関しては橘先輩に任せます!」
「任せちゃうんだ」
古見君が引いているけど、私は問題ないと思う。
こんなときでないと、橘先輩をこき使えないもんね。
普段の恨みを晴らすチャンスを逃したくないし。仕方のないことだよ。ふふっ、仕方ないよね。
「お前、悪魔だな」
「小悪魔って言ってください」
私よりももっと強烈な獅子王なら目の前にいます、そんなことは口を避けても言えないので、そっと心の中で思うことにした。
「ちなみにどんな劇をやるの? 台本は?」
「それなら、私が台本を書きます」
古見君の問いに、私は胸を張って答える。
「書けるのか?」
獅子王さんが疑いの目で私を睨んでいる。
しょうがないな、私の才能をおみせするときがきたようだ。
私はカバンの中から、一冊のノートを取り出し、獅子王さんに渡す。
「なんだ、これは?」
「私が書いた小説です! これで判断してください!」
私が中学の時に書き上げた自作小説。少年漫画を意識して書いた、恋愛バトル小説。
中学の時流行っていた異世界もので、勇者と魔王の熱いバトルが繰り広げられる壮大な物語。アカデミー賞、間違いなしの自信作。
ふふっ、獅子王さんたち、夢中で読んでる。黙りこくって、そんなに夢中になってくれたのかな。
ちょっと恥ずかしいな~自作小説を読んでもらうのって。
でも、感想を聞いてみたい。私は我慢しきれず、二人に声を掛けた。
「どうですか、獅子王先輩!」
「……」
あれ? 獅子王さん達の表情が芳しくない。どうしたのかな?
「ね、ねえ、伊藤さん。これって……」
「傑作でしょ! 私の自信作なの! どうかな?」
私は古見君の顔を上目遣いで見つめる。古見君は笑顔で答えてくれた。
「ど、独創的で面白いかな」
「でしょ!」
流石、古見君は分かってるよ!
だけど、獅子王さんが水を差してきた。
「待て、ひなた。これはやっぱり、変だ」
な、なんですと? まさか、否定されるとは思ってもいなかった。
「へ、変って、どこが変なんですか?」
「お、お前……自分で読んでみて、変だとは思わないのか?」
「そうですかね?」
獅子王さんの言いたいことがさっぱり分からない。私が首をかしげていると、獅子王さんが私にノートを押し付けてきた。
「ほのか、ちょっと読んでみろ」
「? いいですよ」
私は獅子王さんに言われるがまま、読み上げた。
参加者は私、獅子王先輩と古見君の三人。
場所は風紀委員室。橘先輩にお願いして、この部屋を使わせてもらえることになった。
ああ、ついに私は帰ってきた、この部屋に。今なら少佐の気持ちが手に取るように分かっちゃう。
もちろん、核弾頭を叩き込むような野暮なことはしない。平和が一番だよね。
風紀委員室は、私の知っているそのままの状態だった。何も変わっていない。
机の配置、橘先輩ご愛用のポット、私がストックしていたお菓子……何も変わっていないのに少しだけ感傷的になっちゃう。
思えば、橘先輩に言い負かされて、この部屋を飛び出したんだよね。
その後も橘先輩に逆らって、一時期は風紀委員クビになりそうだったけど、私は今、ここに立っている。
それってつまり、私が風紀委員最強ってことにならない?
この委員は私が乗っ取りました!
私は橘先輩が座っている席に堂々と座り込む。
何コレ! 柔らかっ! ちょっとずるくない! 私達の座っている席はパイプ椅子なのに!
私はくるくると椅子に座りながら回ってみせる。わーい、楽しいな~。
「ねえ、伊藤さん。無理してない?」
古見君が心配そうに見つめているけど、私はにっこりと笑ってみせる。
心配をこれ以上掛けるわけにはいかない。特に私事だから。
話を進めよう。
「無理なんてしてないよ、古見君。では、会議を始めましょうか。二人を邪魔する風紀委員は残り一人、橘先輩だけです。その橘先輩との勝負が残っていますが、この勝負に勝つために、私はある秘策を用意しました」
「おおっー」
古見君は感嘆の声をあげるけど、獅子王先輩は難しい顔をしている。
ちなみに会議が始まった途端、橘先輩の椅子は獅子王先輩に乗っ取られてしまい、いつものパイプ椅子に座っている。
私は獅子王先輩の表情が気になり、直接尋ねてみた。
「獅子王先輩? 何か意見があるのですか?」
「……いや、ねえよ。続けてくれ」
珍しい……いつもは直球で物事をいう獅子王先輩が我慢しているなんて……。
私は心配でつい、獅子王先輩のおでこに手を当てようとした。
「頭、大丈夫ですか、獅子王先輩? 心の病ですか?」
獅子王先輩の手が私の手首に……。
「いたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ! いたいいたいいたい!」
「どうだ? 心の病にみえるか?」
「みえませんみえませんみえません! 手を離してください!」
痛いよ、もう!
手首に獅子王先輩の手の形が赤く残っている。
信じられない! 痕が残ったらどうするのよ! 先輩だってちゃんと手加減……。
私は今考えたことを忘れようと、頭をブンブンと振った。
「一さん、ダメだよ! 伊藤さん、大丈夫?」
古見君が私の手をさすってくれる。ちょっとだけ、痛みが引いたかも。美少年の少し硬い手にさすられるのも乙だなって思っちゃった。それに……。
「古見君、獅子王先輩を名前で呼んでいるんだね」
「うん。恋人らしくふるまうのなら、名前で呼び合う方がいいと思って。変かな?」
私は二人を祝福するように笑顔で頷く。
「変じゃないよ。私はいいと思う」
「ありがとう」
古見君のはにかんだ幸せそうな顔に、胸の奥に痛みがはしった。古見君が幸せなら、それはいいとこなのに……。
「おい、伊藤」
「な、なんでしょう?」
こ、こわ! 獅子王先輩が私の事、睨んでる。なんで? もしかして、ヤキモチ?
「その……なんだ……余所余所しいんだよ」
「は?」
獅子王先輩がスネている? なにこれ?
ふてくされたような顔をして、私と目を合わさない獅子王先輩に、私は呆然としていた。
「伊藤は、ひなたの友達だろ? なら、俺様の友達でもある。特別に俺様の名前を呼び捨てにする権利をやる。ありがたく思え」
えっ? どういうこと? 友達の友達は友達? いい○もの再来?
「要するに友達になってくださいって意味だよ」
「ひなた、うるせえぞ!」
あ、あははっ。
獅子王先輩が私と友達になりたいなんて、ちょっと嬉しいな。ミジンコ扱いから友達に大出世。
獅子王先輩って本当に、少女漫画の主人公みたい。興味あるかないかの差が激しいよね。
「分かりました。友達でも先輩ですのでさんづけでいいですか?」
「呼び捨てにしろ。命令だ」
「……」
と、友達だよね? 友達に命令しちゃダメって教わらなかったのかな?
まっ、いっか。
「では、一」
「……」
「か、顔が怖いですよ、一」
な、なぜか思いっきり睨まれているんですけど! 怖っ! 男の子の名前を呼んでここまでドキドキしたのは初めて。
どうしてだろう……全然ときめきがないんですけど。
「やっぱり名字でさんづけしろ。伊藤に名前で呼び捨てされると、イラっとくる」
えええっ~。本当にめんどくさいな、この人!
仕方ない、ここは年下の私が大人になるのよ、ほのか。私、ガンバ!
私は自分にエールを送る。だって、誰も私をねぎらってくれないんだもん。しかも、理不尽だらけ。本当に世の中、辛いっす。
「獅子王さん……これでいいですか?」
「ああ、いいぞ。伊藤、下の名前は?」
「ほのかです」
「なら、ほのか。話を進めろ」
私は名前で呼ぶんだ……。
馴れ馴れしい男の子はよく、名前で私の事を呼ぶけど、獅子王先輩はそんな感じがしない。フランクな感じ……かな? 召使とかじゃないよね? 友達だと思われているってことでいいよね?
獅子王さんの気持ちがよくわからない。
「そ、それでは、話を元に戻しますね。橘先輩の勝負に勝つための秘策、それは文化祭こと、青島祭の出し物です!」
「青島祭の」
「出し物?」
二人はきょとんとしている。
ふふっ、意味が分からないって顔していますね。では、説明してあげましょう!
腰に手を当て、私は説明を開始する。ちなみに青島では、文化祭の事を青島祭と呼んでいる。橘先輩に教えてもらった。
「そうです! 青島祭の出し物で、二人の愛が純粋であること、間違っていないことをみんなにアピールします! ちなみに、アピールする方法は劇です!」
これぞ、私の秘策! クラスの出し物を話し合っていたときに考えついた妙案。
劇の中なら、男の子同士でも恋愛物語を演じることができる。
演技として、堂々とギャラリーの前でいちゃつくことができる! いい物語とルックスのいい二人なら、絶対にウケる!
そのことを二人に話してみた。だけど、ピンとこないのか、二人の反応は微妙。
「劇といってもな。ひなた、劇なんてやったことあるか?」
「木の役なら……」
ううっ、古見君、切ないことを言わないでよ。
古見君ならヒロインの座を手にすることなんてわけないと思うのに。
余談だけど、私が幼稚園の時、主役を演じたことがある。途中でセリフを忘れてしまって、本番中に泣いてしまったという黒歴史が存在する。
しかも、その姿をパパンにデジタルハイビジョンビデオカメラでとられてしまった。
なぜ私の親はこんな羞恥プレイを残すのか、疑問に思えて仕方ない。
消したらお小遣い抜きになるので手を出せずにいるんだけど、いつか、パパンやママンの恥ずかしいシーンを撮ってやるんだから。
まあ、それはまたの機会にするとして、今は劇の事を考えよう。
「そこはセリフを少なくするなり、劇の時間を短くする等の対策を考えましょう。細かい劇の準備に関しては橘先輩に任せます!」
「任せちゃうんだ」
古見君が引いているけど、私は問題ないと思う。
こんなときでないと、橘先輩をこき使えないもんね。
普段の恨みを晴らすチャンスを逃したくないし。仕方のないことだよ。ふふっ、仕方ないよね。
「お前、悪魔だな」
「小悪魔って言ってください」
私よりももっと強烈な獅子王なら目の前にいます、そんなことは口を避けても言えないので、そっと心の中で思うことにした。
「ちなみにどんな劇をやるの? 台本は?」
「それなら、私が台本を書きます」
古見君の問いに、私は胸を張って答える。
「書けるのか?」
獅子王さんが疑いの目で私を睨んでいる。
しょうがないな、私の才能をおみせするときがきたようだ。
私はカバンの中から、一冊のノートを取り出し、獅子王さんに渡す。
「なんだ、これは?」
「私が書いた小説です! これで判断してください!」
私が中学の時に書き上げた自作小説。少年漫画を意識して書いた、恋愛バトル小説。
中学の時流行っていた異世界もので、勇者と魔王の熱いバトルが繰り広げられる壮大な物語。アカデミー賞、間違いなしの自信作。
ふふっ、獅子王さんたち、夢中で読んでる。黙りこくって、そんなに夢中になってくれたのかな。
ちょっと恥ずかしいな~自作小説を読んでもらうのって。
でも、感想を聞いてみたい。私は我慢しきれず、二人に声を掛けた。
「どうですか、獅子王先輩!」
「……」
あれ? 獅子王さん達の表情が芳しくない。どうしたのかな?
「ね、ねえ、伊藤さん。これって……」
「傑作でしょ! 私の自信作なの! どうかな?」
私は古見君の顔を上目遣いで見つめる。古見君は笑顔で答えてくれた。
「ど、独創的で面白いかな」
「でしょ!」
流石、古見君は分かってるよ!
だけど、獅子王さんが水を差してきた。
「待て、ひなた。これはやっぱり、変だ」
な、なんですと? まさか、否定されるとは思ってもいなかった。
「へ、変って、どこが変なんですか?」
「お、お前……自分で読んでみて、変だとは思わないのか?」
「そうですかね?」
獅子王さんの言いたいことがさっぱり分からない。私が首をかしげていると、獅子王さんが私にノートを押し付けてきた。
「ほのか、ちょっと読んでみろ」
「? いいですよ」
私は獅子王さんに言われるがまま、読み上げた。
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