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最終章
最終話 あけましておめでとう。今年もよろしくな
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祝勝会を抜け、俺と朝乃宮は青島神社に向かっていた。
1月3日の夜、俺はある人物と約束していた。その約束を果たすために俺達は青島神社に向かっている。
こうして朝乃宮と夜道を二人で歩くのはクリスマス以来だ。当然だが、何も変わっていない。
俺達も、この夜空も、静けさも、関係も……。
今年はどうなるのか? この関係は何か一つでも変わることがあるのか?
それは分からないが、今は最優先で解決しなければならないことがある。それは……。
考えているうちに、俺達は青島神社へ着いた。そこに目的の人物達が集まっていた。
その人物達とは……。
「あけまして、おめでとう、正道」
「ったく、おせえぞ」
「何もこんな夜に集まることないんじゃない? この時間帯ならアニメがないからいいだけど」
左近、御堂、潤平の三人がすでに集まっていた。
橘左近。
風紀委員のトップ。
御堂優希。
かつて、青島の三大勢力だった『Blue Ruler』の頭。
長尾潤平。
全国都道府県中学生相撲選手権の無差別級で、三年連続で優勝。
御堂、潤平、朝乃宮。
かつては敵同士で争い、それぞれの思惑があって、今は同じ委員に属している。
俺達が集まった理由は参拝と近況報告だ。
境内に参拝客は見当たらない。俺達は境内の隅で話し合う。
「早速だけど不良の動向から話そうか。正道は元旦に襲われたって聞いてるけど、それ以降は何かあった?」
「……いや、ない」
左近の問いに俺は一つ嘘をついた。
朝乃宮に視線を送る。さっきの件は黙って欲しいとアイコンタクトで伝える。
朝乃宮は肩をすかし、黙っていてくれた。
夜子沢の件はきっと関係ない。なら、黙っておくべきだ。大事にしたくないからな。
「そう……御堂は?」
「私は三回だ」
「さ、三回だと? 無事……だよな。その姿を見れば」
御堂はむすっとしたまま、俺と顔を合わせようとしない。三回も襲われていて、いつもと変わらない態度なので恐れ入る。
「なら、潤平は?」
「僕も正道と同じく一回だけ。しかも、一発張り手をしたら、すぐに逃げちゃったよ」
だろうな。きっと、ここにいる全員が潤平よりも相手の方を心配しているだろう。
一撃の破壊力は潤平がダントツだ。木刀の一撃よりも破壊力があるってどんだけなんだと言いたくなる。
「そっか。僕も一回だから、朝乃宮以外はみんな襲われたことになるね。ちなみに、僕達を襲いかかってきた連中は皆、違うグループだった。でも、黒幕は一人だと考えてる」
「誰だ? ソイツは?」
「それは調査中。確証を得たら話すよ」
確証を得たらか……ということは、目星はついてるんだな、左近には。
俺達を狙った目的は何なのか?
俺を襲ってきた相手はこう言っていた。
「青島に革命を起こし、理想郷を作っちゃうみたいな?」
革命……理想郷……。
分かっているのは、連中がロクでもないことを考えている事くらいだ。
不良の抗争など知らん顔をしていた朝乃宮がここにいるのは、上春を護る為に情報を集めているのだろう。
どんな相手からも最愛の妹を護る為に……友との約束を果たすために……。
俺は……いや、俺達はきっと予感している。
今年は波乱の一年になることを……。
一年前の抗争よりもはるかに危険な事が起こる。
更なる抗争が俺達に襲いかかる。
油断してはならない。気合いを入れていけ。
でなければ……。
マタカゾクヲウシナウコトニナルゾ……。
「正道?」
「……問題ない。誰が相手だろうとたたきのめすだけだ」
そう、それだけだ。
左近は肩をすくめ、話の続きを始める。
「とりあえずは、静観ってことでいい?」
「別に……」
「問題なし」
「ウチも」
「俺もだ」
左近は静観と言っているが、きっと対策をとるはず。それまでは動くべきではない。
それは俺だけでなく、ここにいる全員が分かっているので異議を唱えない。
「そう……今年で僕達は引退するわけだけど、やり残しがないようきっちりと仕事をしよう。立つ鳥跡を濁さずってね」
そうだな。俺達が卒業しても、上春が……伊藤が残っている。
後輩のためにも、綺麗に青島を清掃しておきたい。
「それじゃあ、最後に参拝でもして帰ろうか」
俺達はまたあの鳥居をくぐっていく。
願いは変わらない。家族の安全と健康のみ。
それ以外は自分で叶えるべきだ。
「ねえ、正道。今日の草野球、活躍したんだって? おめでとう」
「……どうも」
左近の情報収集力なら別に驚く事ではない。だが、左近の次の言葉に、俺は驚きを隠せなかった。
「三田村さんの事故の件なんだけど、あれ、事故じゃないから」
「事故じゃない? 木材が崩れて下敷きになったんじゃないのか?」
事故じゃないとしたら……まさか……。
「木材を縛っていたロープなんだけど、切り口がね、綺麗にすぱっと切れていたんだって。意味、分かるよね?」
もし、自然にロープが切れた場合、切れ目はちぢれた跡が残る。刃物で切った場合は切れ目がちぢれず、切れ目に沿った形になる。
つまり、三田村さんは誰かに狙われたことになる。
なぜか?
親善試合に勝つためか? なら、洒落になっていない。
冗談じゃない! 一歩間違えれば、死んでいた可能性だってある。
たかが草野球に、どうしてそこまで勝ちたがるんだ?
何か裏があるのかもしれないな……。
「これはオフレコでお願いね。これ、知れ渡ったら、一悶着がおこるから」
「……みんなを騙せってことか?」
仲間がやられたのに黙っているのは裏切りではないか?
「余計なトラブルは起こさないでって言いたいの。警察もちゃんと動いているから。きっと、正道の祖父さんも気づいているよ。ここは大人に任せなよ。僕達の仕事じゃない。それに、正道だって隠していること、あるんでしょ?」
「……」
警察に任せろとかいいながら、情報集めすぎだろ。しかも、俺の隠し事がバレてるし。
お前が一番謎だ。そう言ってやりたかった。
俺は警察ではない。だから、俺達のできることをやろう。
犯罪者には警察官。
不良には風紀委員。
「藤堂! さっさとこい!」
「正道。早く来なよ」
「さっさと終わらせましょう」
左近、御堂、順平、朝乃宮……目的は違えど、目指すところは俺と同じだ。この五人ならやれないことはないだろう。
考えることは多そうだ。だが、その前に。
「なあ、みんな……言い忘れたことがある」
「なんだ? まだトラブルがあるのか?」
「え、マジで?」
「なんですの?」
「……」
俺は全員の顔を見渡し、告げる。
「あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「「「あけましておめでとう。今年もよろしく」」」
まあ、一応な。正月だし。
俺は気を引き締め、一歩一歩前へ進んだ。
-To be continued-
1月3日の夜、俺はある人物と約束していた。その約束を果たすために俺達は青島神社に向かっている。
こうして朝乃宮と夜道を二人で歩くのはクリスマス以来だ。当然だが、何も変わっていない。
俺達も、この夜空も、静けさも、関係も……。
今年はどうなるのか? この関係は何か一つでも変わることがあるのか?
それは分からないが、今は最優先で解決しなければならないことがある。それは……。
考えているうちに、俺達は青島神社へ着いた。そこに目的の人物達が集まっていた。
その人物達とは……。
「あけまして、おめでとう、正道」
「ったく、おせえぞ」
「何もこんな夜に集まることないんじゃない? この時間帯ならアニメがないからいいだけど」
左近、御堂、潤平の三人がすでに集まっていた。
橘左近。
風紀委員のトップ。
御堂優希。
かつて、青島の三大勢力だった『Blue Ruler』の頭。
長尾潤平。
全国都道府県中学生相撲選手権の無差別級で、三年連続で優勝。
御堂、潤平、朝乃宮。
かつては敵同士で争い、それぞれの思惑があって、今は同じ委員に属している。
俺達が集まった理由は参拝と近況報告だ。
境内に参拝客は見当たらない。俺達は境内の隅で話し合う。
「早速だけど不良の動向から話そうか。正道は元旦に襲われたって聞いてるけど、それ以降は何かあった?」
「……いや、ない」
左近の問いに俺は一つ嘘をついた。
朝乃宮に視線を送る。さっきの件は黙って欲しいとアイコンタクトで伝える。
朝乃宮は肩をすかし、黙っていてくれた。
夜子沢の件はきっと関係ない。なら、黙っておくべきだ。大事にしたくないからな。
「そう……御堂は?」
「私は三回だ」
「さ、三回だと? 無事……だよな。その姿を見れば」
御堂はむすっとしたまま、俺と顔を合わせようとしない。三回も襲われていて、いつもと変わらない態度なので恐れ入る。
「なら、潤平は?」
「僕も正道と同じく一回だけ。しかも、一発張り手をしたら、すぐに逃げちゃったよ」
だろうな。きっと、ここにいる全員が潤平よりも相手の方を心配しているだろう。
一撃の破壊力は潤平がダントツだ。木刀の一撃よりも破壊力があるってどんだけなんだと言いたくなる。
「そっか。僕も一回だから、朝乃宮以外はみんな襲われたことになるね。ちなみに、僕達を襲いかかってきた連中は皆、違うグループだった。でも、黒幕は一人だと考えてる」
「誰だ? ソイツは?」
「それは調査中。確証を得たら話すよ」
確証を得たらか……ということは、目星はついてるんだな、左近には。
俺達を狙った目的は何なのか?
俺を襲ってきた相手はこう言っていた。
「青島に革命を起こし、理想郷を作っちゃうみたいな?」
革命……理想郷……。
分かっているのは、連中がロクでもないことを考えている事くらいだ。
不良の抗争など知らん顔をしていた朝乃宮がここにいるのは、上春を護る為に情報を集めているのだろう。
どんな相手からも最愛の妹を護る為に……友との約束を果たすために……。
俺は……いや、俺達はきっと予感している。
今年は波乱の一年になることを……。
一年前の抗争よりもはるかに危険な事が起こる。
更なる抗争が俺達に襲いかかる。
油断してはならない。気合いを入れていけ。
でなければ……。
マタカゾクヲウシナウコトニナルゾ……。
「正道?」
「……問題ない。誰が相手だろうとたたきのめすだけだ」
そう、それだけだ。
左近は肩をすくめ、話の続きを始める。
「とりあえずは、静観ってことでいい?」
「別に……」
「問題なし」
「ウチも」
「俺もだ」
左近は静観と言っているが、きっと対策をとるはず。それまでは動くべきではない。
それは俺だけでなく、ここにいる全員が分かっているので異議を唱えない。
「そう……今年で僕達は引退するわけだけど、やり残しがないようきっちりと仕事をしよう。立つ鳥跡を濁さずってね」
そうだな。俺達が卒業しても、上春が……伊藤が残っている。
後輩のためにも、綺麗に青島を清掃しておきたい。
「それじゃあ、最後に参拝でもして帰ろうか」
俺達はまたあの鳥居をくぐっていく。
願いは変わらない。家族の安全と健康のみ。
それ以外は自分で叶えるべきだ。
「ねえ、正道。今日の草野球、活躍したんだって? おめでとう」
「……どうも」
左近の情報収集力なら別に驚く事ではない。だが、左近の次の言葉に、俺は驚きを隠せなかった。
「三田村さんの事故の件なんだけど、あれ、事故じゃないから」
「事故じゃない? 木材が崩れて下敷きになったんじゃないのか?」
事故じゃないとしたら……まさか……。
「木材を縛っていたロープなんだけど、切り口がね、綺麗にすぱっと切れていたんだって。意味、分かるよね?」
もし、自然にロープが切れた場合、切れ目はちぢれた跡が残る。刃物で切った場合は切れ目がちぢれず、切れ目に沿った形になる。
つまり、三田村さんは誰かに狙われたことになる。
なぜか?
親善試合に勝つためか? なら、洒落になっていない。
冗談じゃない! 一歩間違えれば、死んでいた可能性だってある。
たかが草野球に、どうしてそこまで勝ちたがるんだ?
何か裏があるのかもしれないな……。
「これはオフレコでお願いね。これ、知れ渡ったら、一悶着がおこるから」
「……みんなを騙せってことか?」
仲間がやられたのに黙っているのは裏切りではないか?
「余計なトラブルは起こさないでって言いたいの。警察もちゃんと動いているから。きっと、正道の祖父さんも気づいているよ。ここは大人に任せなよ。僕達の仕事じゃない。それに、正道だって隠していること、あるんでしょ?」
「……」
警察に任せろとかいいながら、情報集めすぎだろ。しかも、俺の隠し事がバレてるし。
お前が一番謎だ。そう言ってやりたかった。
俺は警察ではない。だから、俺達のできることをやろう。
犯罪者には警察官。
不良には風紀委員。
「藤堂! さっさとこい!」
「正道。早く来なよ」
「さっさと終わらせましょう」
左近、御堂、順平、朝乃宮……目的は違えど、目指すところは俺と同じだ。この五人ならやれないことはないだろう。
考えることは多そうだ。だが、その前に。
「なあ、みんな……言い忘れたことがある」
「なんだ? まだトラブルがあるのか?」
「え、マジで?」
「なんですの?」
「……」
俺は全員の顔を見渡し、告げる。
「あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「「「あけましておめでとう。今年もよろしく」」」
まあ、一応な。正月だし。
俺は気を引き締め、一歩一歩前へ進んだ。
-To be continued-
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