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女を黙らせるにはこうするんだろ? 前編 朝乃宮千春SIDE
2/4 中編
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「……」
「……」
ウチと藤堂はん、おばさま、桜花ちゃんはおじさまの車でなんや『最大多数の最大幸福』という理不尽の元、ウチのマンションに移動していた。
運転は信吾はん。
思いっきり信吾はんの後頭部を睨みつけるけど、信吾はんは完全にスルー。
腹立つわ~。
元凶である桜花ちゃんは……。
「くぴー……くぴー……」
すやすやと寝てるし……。
寝顔は天使やから、怒るに怒れへんし……。
「おい、朝乃宮」
「……なんですの?」
「これ」
藤堂はんは不機嫌丸出しの顔でウチに数枚の紙を渡してきた。
えっ? なんでウチに怒ってるの? 睨みつけてくるん? ウチのせいやないやん!
なんやろ……藤堂はんにそんな顔されると……泣きたくなる……こんなことになったのはウチのせいやないのに……。
ウチは涙をぐっとこらえ、紙を見ると……。
「なにこれ……」
項目多い!
紙をよく見ると、ウチと藤堂はんの同居することに対するルールが紙一杯に書かれていた。
えっ? 何枚あるん? 多過ぎ! 息つまるわ! しかも、いつ書いたの!
それにフツウ逆ちゃう! 女の子の方が同居について注文つけるんとちゃうの!
「安心しろ。朝乃宮には指一本触れる気はない! これで満足だろ?」
指一本触れない? 満足? 何のこと?
「朝乃宮は俺と一緒にいるのが不満なんだろ? 俺だって我慢してやるんだ! 文句言うな!」
はぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!
なに、その言い方!
ムカつく~~~~~~~~~~~~~~~~!
「……ウチに喧嘩売ってます?」
「喧嘩売ってきたのはそっちだろ? 確かに俺と同居なんて嫌かもしれないが、そこまで反対することないだろうが! 俺のせいじゃないだろ!」
なぁ! そこまで言う! ウチかって言いたいこと、いっぱいある!
それに今の状況はウチのせいやない!
それやのに、喧嘩腰とか!
ウチと藤堂はんが睨み合っていると……。
「うぁあああああ~~~~~~~んんんん!」
「お、桜花ちゃん」
あかん! 桜花ちゃんを泣かせてもうた!
「だめぇええええ! けんかしないでぇえええええ!」
べ、別にウチは喧嘩するつもりないけど、藤堂はんが!
藤堂はんが悪いもん!
「千春ちゃん、正道はん。子供は目の前で親が喧嘩すると悲しい気持ちになるんですよ」
「「……」」
そ、それは分かってますけど、藤堂はんが~。ウチ、悪くないし!
おばさまは桜花ちゃんを抱きしめ、諭すようにウチらに話しかけてくる。
「それに正道さんも、千春ちゃんがあそこまで嫌がっていたから、悲しい気持ちになって怒っているんですよ。そこのところ、分かってあげてくれませんか?」
「いや、そんなガキみたいな理由じゃあ……な、何がおかしい!」
ふふふっ、そうなんや~~~。藤堂はん、拗ねてたんや~~~~。
あかん! つい笑みが……。
けど……。
「藤堂はん」
「何だ、俺は別に……」
「ごめんなさい」
「えっ?」
ウチは藤堂はんに頭を下げる。
藤堂はんを困らせたこと、嫌な想いをさせたこと。
それは謝っておきたかった。ウチはそんな気なかったんや。
それに……。
「ウチ、桜花ちゃんを押しつける信吾はん達の態度が気にくわなくて、つい反抗していただけです。藤堂はんと……その……ど、同居が嫌とかそういうのではないですから」
何言わせるねん! 恥ずかしいこと言わせんとって!
ウチが嫌がってる? 確かに抵抗があるけど、それは藤堂はんが好きやからであって、よくよく考えるとむしろ、嬉しい……よりも恥ずかしい! けど、胸がドキドキしてる。
心が躍る!
よくよく考えると、気になる男の子と期間限定の夫婦ごっこも悪くない……いえ、大好きで憧れていたマンガのようなドキドキの展開にテンションが上がってる!
「……すまん。ガキみたいな態度をとって……それに朝乃宮は女だし、男の俺が気遣うべきだった。悪かった」
「それはお互い様です。藤堂はんは反対やなかったんですか? 押しつけられて」
ウチは運転している信吾はんを睨みつけるけど、信吾はんは黙ったまま運転してる。
ええ根性してるわ。
藤堂はんはため息をつく。
「押しつけられた事には腹が立つし、戸惑いもあるが……宇佐美桜花の件は協力したい。義信さんが何の理由もなく宇佐美桜花を預かるわけがない。何か理由がある。それなら、俺は義信さんを助けたい。ただ……」
「ただ?」
「朝乃宮には……申し訳ないと思っている。出来るなら朝乃宮に迷惑をかけたくないんだが、宇佐美桜花があの調子では俺一人の力では無理だ。本当にすまない」
ほんま、真面目なお人。藤堂はんのせいやないのに……。
それに……。
「……おじさまのこと、信じてはるんやね」
チクリと胸に痛みが走るけど、藤堂はんはまっすぐウチを見据えて頷く。
「当然だ。俺は義信さんと楓さんを信じている。楓さんも義信さんの事を信じているから、一緒についてきてくれた。違いますか?」
「ふふっ、正道さんには隠し事できそうにないですね」
正道さんと楓さんを見ていると羨ましく思う。朝乃宮家には絶対にない絆を、藤堂はんと楓はんにはある。
朝乃宮家は打算や見返り、格式、家柄しか興味のない最低な人間の集まり……家族のぬくもりなんてゴミ屑としか思っていない恥ずかしい人種。
身内同士で財産の取り合いをする為、蹴落とす存在としか見ておらず、手を組むとしたらライバルを陥れるときだけ。
敵の敵は味方。
そんな風にしか考えられない最悪の一族。
ほんま、羨ましい。
けど、今はウチも藤堂家の家族。
だから……。
「ど、どうした、朝乃宮? ニヤニヤして……」
「別に。それと謝らんとってください。前にも言いましたけど、何かあればフォローすると約束しましたし。藤堂はんがウチの事、家族と思ってくれていたらですけど」
「当然だ。朝乃宮は俺にとって大事な家族だ」
「……」
「どうかしたか?」
「いえ……」
ほんま、即答とか……恥ずかしいわ!
えっ? 躊躇とかないん? そんなにウチの事、大事やと思ってくれてるん?
口ごもって言われるよりはマシやけど、もう!
顔が赤くなるからやめてほしいわ!
そっちがその気なら……。
「覚悟しておいてください」
「か、覚悟?」
絶対にウチの虜にしてみせる!
ウチが真っ赤になった倍以上、ドキッとさせてみせる!
「ふふふっ、大変ですね、正道さん」
「……パパとママはなかなおりしたの?」
「喧嘩なんてしてませんから、安心してね、桜花ちゃん」
「はい!」
ほんま、桜花ちゃんは元気でええ子や。
藤堂はん。ウチの事大事な家族って言った責任、とってもらいますえ。
ウチが藤堂はんにとって一番信頼できる人物になってみせますさかい、もっともっと大事にしてな!
ウチは堅く心に誓った。
「……」
ウチと藤堂はん、おばさま、桜花ちゃんはおじさまの車でなんや『最大多数の最大幸福』という理不尽の元、ウチのマンションに移動していた。
運転は信吾はん。
思いっきり信吾はんの後頭部を睨みつけるけど、信吾はんは完全にスルー。
腹立つわ~。
元凶である桜花ちゃんは……。
「くぴー……くぴー……」
すやすやと寝てるし……。
寝顔は天使やから、怒るに怒れへんし……。
「おい、朝乃宮」
「……なんですの?」
「これ」
藤堂はんは不機嫌丸出しの顔でウチに数枚の紙を渡してきた。
えっ? なんでウチに怒ってるの? 睨みつけてくるん? ウチのせいやないやん!
なんやろ……藤堂はんにそんな顔されると……泣きたくなる……こんなことになったのはウチのせいやないのに……。
ウチは涙をぐっとこらえ、紙を見ると……。
「なにこれ……」
項目多い!
紙をよく見ると、ウチと藤堂はんの同居することに対するルールが紙一杯に書かれていた。
えっ? 何枚あるん? 多過ぎ! 息つまるわ! しかも、いつ書いたの!
それにフツウ逆ちゃう! 女の子の方が同居について注文つけるんとちゃうの!
「安心しろ。朝乃宮には指一本触れる気はない! これで満足だろ?」
指一本触れない? 満足? 何のこと?
「朝乃宮は俺と一緒にいるのが不満なんだろ? 俺だって我慢してやるんだ! 文句言うな!」
はぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!
なに、その言い方!
ムカつく~~~~~~~~~~~~~~~~!
「……ウチに喧嘩売ってます?」
「喧嘩売ってきたのはそっちだろ? 確かに俺と同居なんて嫌かもしれないが、そこまで反対することないだろうが! 俺のせいじゃないだろ!」
なぁ! そこまで言う! ウチかって言いたいこと、いっぱいある!
それに今の状況はウチのせいやない!
それやのに、喧嘩腰とか!
ウチと藤堂はんが睨み合っていると……。
「うぁあああああ~~~~~~~んんんん!」
「お、桜花ちゃん」
あかん! 桜花ちゃんを泣かせてもうた!
「だめぇええええ! けんかしないでぇえええええ!」
べ、別にウチは喧嘩するつもりないけど、藤堂はんが!
藤堂はんが悪いもん!
「千春ちゃん、正道はん。子供は目の前で親が喧嘩すると悲しい気持ちになるんですよ」
「「……」」
そ、それは分かってますけど、藤堂はんが~。ウチ、悪くないし!
おばさまは桜花ちゃんを抱きしめ、諭すようにウチらに話しかけてくる。
「それに正道さんも、千春ちゃんがあそこまで嫌がっていたから、悲しい気持ちになって怒っているんですよ。そこのところ、分かってあげてくれませんか?」
「いや、そんなガキみたいな理由じゃあ……な、何がおかしい!」
ふふふっ、そうなんや~~~。藤堂はん、拗ねてたんや~~~~。
あかん! つい笑みが……。
けど……。
「藤堂はん」
「何だ、俺は別に……」
「ごめんなさい」
「えっ?」
ウチは藤堂はんに頭を下げる。
藤堂はんを困らせたこと、嫌な想いをさせたこと。
それは謝っておきたかった。ウチはそんな気なかったんや。
それに……。
「ウチ、桜花ちゃんを押しつける信吾はん達の態度が気にくわなくて、つい反抗していただけです。藤堂はんと……その……ど、同居が嫌とかそういうのではないですから」
何言わせるねん! 恥ずかしいこと言わせんとって!
ウチが嫌がってる? 確かに抵抗があるけど、それは藤堂はんが好きやからであって、よくよく考えるとむしろ、嬉しい……よりも恥ずかしい! けど、胸がドキドキしてる。
心が躍る!
よくよく考えると、気になる男の子と期間限定の夫婦ごっこも悪くない……いえ、大好きで憧れていたマンガのようなドキドキの展開にテンションが上がってる!
「……すまん。ガキみたいな態度をとって……それに朝乃宮は女だし、男の俺が気遣うべきだった。悪かった」
「それはお互い様です。藤堂はんは反対やなかったんですか? 押しつけられて」
ウチは運転している信吾はんを睨みつけるけど、信吾はんは黙ったまま運転してる。
ええ根性してるわ。
藤堂はんはため息をつく。
「押しつけられた事には腹が立つし、戸惑いもあるが……宇佐美桜花の件は協力したい。義信さんが何の理由もなく宇佐美桜花を預かるわけがない。何か理由がある。それなら、俺は義信さんを助けたい。ただ……」
「ただ?」
「朝乃宮には……申し訳ないと思っている。出来るなら朝乃宮に迷惑をかけたくないんだが、宇佐美桜花があの調子では俺一人の力では無理だ。本当にすまない」
ほんま、真面目なお人。藤堂はんのせいやないのに……。
それに……。
「……おじさまのこと、信じてはるんやね」
チクリと胸に痛みが走るけど、藤堂はんはまっすぐウチを見据えて頷く。
「当然だ。俺は義信さんと楓さんを信じている。楓さんも義信さんの事を信じているから、一緒についてきてくれた。違いますか?」
「ふふっ、正道さんには隠し事できそうにないですね」
正道さんと楓さんを見ていると羨ましく思う。朝乃宮家には絶対にない絆を、藤堂はんと楓はんにはある。
朝乃宮家は打算や見返り、格式、家柄しか興味のない最低な人間の集まり……家族のぬくもりなんてゴミ屑としか思っていない恥ずかしい人種。
身内同士で財産の取り合いをする為、蹴落とす存在としか見ておらず、手を組むとしたらライバルを陥れるときだけ。
敵の敵は味方。
そんな風にしか考えられない最悪の一族。
ほんま、羨ましい。
けど、今はウチも藤堂家の家族。
だから……。
「ど、どうした、朝乃宮? ニヤニヤして……」
「別に。それと謝らんとってください。前にも言いましたけど、何かあればフォローすると約束しましたし。藤堂はんがウチの事、家族と思ってくれていたらですけど」
「当然だ。朝乃宮は俺にとって大事な家族だ」
「……」
「どうかしたか?」
「いえ……」
ほんま、即答とか……恥ずかしいわ!
えっ? 躊躇とかないん? そんなにウチの事、大事やと思ってくれてるん?
口ごもって言われるよりはマシやけど、もう!
顔が赤くなるからやめてほしいわ!
そっちがその気なら……。
「覚悟しておいてください」
「か、覚悟?」
絶対にウチの虜にしてみせる!
ウチが真っ赤になった倍以上、ドキッとさせてみせる!
「ふふふっ、大変ですね、正道さん」
「……パパとママはなかなおりしたの?」
「喧嘩なんてしてませんから、安心してね、桜花ちゃん」
「はい!」
ほんま、桜花ちゃんは元気でええ子や。
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ウチは堅く心に誓った。
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