ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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新たな展開

待って下さい!

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  智也は、チャペルの脇を通り、裏にある門扉を開けて、宿泊棟へ続く通路を歩いていた。


 かなりのスピードで歩きながら、思う。


(あの子に偶然 会ったら、御礼がしたいから、必ず誘ってほしいと匠海から頼まれ、あの子と一緒にいた子も誘ってきて!と和希に言われていた俺は、渋々、実行したんだ。

 けど、ほら、やっぱり俺の言っていた通り、やんわり断られたじゃないか。

 まったく、何で俺が、こんな恥ずかしい思いをしなくちゃいけないんだよ!)


 先日、酔っていたとはいえ、柚花から頬にキスをされた智也は、偶然に会ってしまうのも、気まずいと思っていた。


(でも、あの子、キスの事を忘れているのか知らないけど、全然、普通にしていたな……。


 まあ、頬だったし、キス魔みたいだったから、何とも思わないのかな。

 ドキッとしたのは、俺だけか……)


 ちなみに、子どもの頃から“僕”と言っている匠海は ともかく、智也と和希は、よそゆきでは、“私”と言い、普段、親しい人の前では“俺”と言って、区別をしているのだった。


 智也は、宿泊棟を通り抜け、昼時の賑やかなレストランの手前を曲がり、通路を真っ直ぐに歩き、会場に入っていった。


………………


私の勤めるカレンダホテルは郊外にあるが、周辺には大きなオフィスが立ち並んでいて、主要道路や駅も近くにある。


 ただ、周辺には商店街は無く、あるのはコンビニと数少ない飲食店くらいだ。


 だから、ランチタイムともなれば、当ホテルにある3つのレストランが満席となり、たちまち行列を作るほど人気となっているのだ。
 

 ……が、しかし、最近、より一層、混雑するようになったのだった。

その要因となったのは、先日、テレビにチョロっと出て、若きイケメンシェフなどと、紹介された野口シェフが、このホテルにいるからだと推測する。
 

 このイケメンが作るランチという噂で、女性客が増えたようなのだが……。


 実は、野口シェフは3つのレストランには関わっていない。

 主に、カレンダホテルの宿泊者用やブライダル等の料理を作っているシェフの1人なのだった。


 ランチタイムが終わり、レストランが落ち着きを取り戻した頃。

 私と挙式担当の緑川さんは、チャペル前や周辺を照らすライトやキャンドルの設置を終わらせた。

 
 小道の方は、外灯だけでは薄暗い為、電気機材担当(私達は、電気屋さんと呼ぶ)が、歩道を照らすライトを設置していた。


「それじゃあ、私は、チャペルまでの案内板の設置をするから。

 電気屋さんの対応と、後の準備を宜しく頼みます。

 あっ、緑川さん、台車を知らない?

 案内板がいくつかあって、結構、重いし……」



 柚花が聞いたが、緑川は知らないと言った。


 仕方がないから、軍手をして箱に入れて運んで行く。

「くっ、結構、重いよ」


 プラスチック製の案内板を要所要所に立てて、歩く。


 ホテル入り口にも案内板を立てた。


 このホテル入り口には、噴水広場がある。
今は普通の噴水なのだが、夕刻にライトアップされて、流れる水はブルーに染まり、実に幻想的なのだ。


 近隣の会社の終業時間ともなれば、この噴水広場は、恋人たちの待ち合わせ場所となっていて、多くのカップルを見かける。

 
 彼がいない私には、縁の無い場所だけど、近いうちに、婚礼式の営業をしてみようかと、倉田チーフと相談中だ。
 

「ふぅ、案内板の設置は完了。
 
 空箱を片付けたし、次は、披露宴会場の様子を見に行こう」


 もう花のセッティングが完了して、あの人は帰ってしまったかな?


 あーあ、出逢いのチャンスだったのに、自分から壊しちゃった……私、馬鹿だよね。


………………


 それは、柚花が披露宴会場の前まで来た時だった。


 ブルブル ブルブル……


 携帯のマナーモード振動を感じた。


 何だろう?


「丸山さん、今、新婦のお支度を始めたところですが、ちょっと問題がありまして」


 新郎新婦担当の軽米からの電話だった。

 
 これは、スタッフ用の携帯電話で、時と場所によってインカムと使い分けをしているのだ。


「軽米さん、どうしたの?」


「花嫁のブーケの事なんです。
 新婦 麻里香さんが知り合いの花屋さんから購入しましたが、ここに来る途中、電車の中に忘れて来てしまったそうなんです。

 それで、新郎 安堂さんが取りに行ったのですが、今、連絡がきて。

 お花が潰れてしまっているそうです……」


「えっ!潰れてしまった?

 あっ、こっちにお花屋さんがいたら、急いでブーケと新郎用コサージュを作れるか、聞いてみるから!

 もし、ダメだったら、造花になるかもしれないから、新婦に話しておいて下さい」


 うわぁ、お花屋さん、あの人、まだ いるかしら?
 

 会場の扉を開けてみたが、綺麗に花は生けられていて、人は居なくなっていた。


 柚花はガッカリしたが、関係者搬入口の駐車場へと急ぐ。


 柚花がアスファルトの駐車場を 思い切り走っていると、前から徐行しながら来る薄ピンクのワゴン車が見えた。


「あっ!あれかな?」


 柚花は手を振りながら、走り寄って行く。


「あれ?君、どうかしましたか?」


 柚花に気がつき、助手席に乗っていた智也が
 声を掛けた。

 
 ワゴン車には、運転をしていた若い男性と後ろの座席には、中年の女性が1人いた。


 柚花が訳を話すと、智也は考え込んだ。


「そうですか……。

 ブーケを作れそうな花なら余った物が車にあるけれど、この2人と この車は、次の場所に行かないといけないしな、困ったな……」


「あっ、無理なら大丈夫です。

 お忙しいところ、引き止めてしまって、申し訳ありませんでした。

 では、ありがとうございました。

 失礼いたします」


 そう言って、柚花は頭を下げ、ホテルのスタッフ通路に向かって、息を切らしながら、ゆっくりと歩いて行った。


 その話しを聞いていた運転席の後藤が言う。


「わか……あっ、に、西崎さん。

 西崎さんがここに残って、ブーケを作ったらいいじゃないっすか。

 会社に戻っても、アレンジメントフラワーの研究、つーか、練習をするんですよね?

 なら、ここでブーケを作る練習をすればいいじゃないっすか?

 なんなら、俺、葬儀会館から迎えに来ますんで!どうっすか?」

 
 智也は、後藤の言葉に関心する。

(コイツは、言葉遣いが悪いが、優しい奴なんだよな。

 うちの会社は、人柄と花を愛する心を重視して、採用している。いい会社だ!)


「そうだよ、ワカ、えーと、に、西崎さん。

 車から花と道具を下ろして、あの人を追いかけなさいよ。

 台車に載せてあげるから!」


 後ろの席から川口が声を掛けたと思ったら、降りて、台車を下ろして花を載せていた。


(早っ!川口さん、素早い行動だ!

 まあ、次に行く予定があるからな、時間がないものな!

 俺がブーケとコサージュを作ってみるか)

  
…………………

  ガラガラガラガラガラガラ……

「おーーーい」


  騒がしい音と共に声がした。


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