ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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新たな展開

妙な気持ち ★

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 外からホテルのスタッフ専用通路に入った時、後ろから声が聞こえた気がして振り向いた。

 うん?

 何も聞こえないか、気のせいだったかも。


「おーい」


 やっぱり声がする!


 私が、入ってきた方のドアを開けようと、ドアノブに手を掛けた瞬間!

 勢いよくドアを引かれたから、体勢を崩して、前のめりに転びそうになった。


 きやっ!


「おっ……と、大丈夫ですか?」


 あっ、この声……。


 その人が咄嗟とっさにに私の右肩辺りを捕まえて、自分の身体を張って、私を抱き止めてくれたのだった。


 柚花は、広い胸板の中に収まった格好になっていた。


 何だか、いい香りがする……。

 このまま、眠りたい感じ。

 あ、この服、知ってる……。


 ……って、仕事中だ!


「わっ、ごめんなさい。すみま……せん」
 

 その人から離れて、顔を見上げて見たら、やっぱりお花屋さんだった。


 私、胸がドキドキしてる。

 はぁ、イケメンだなー。


 はっ、ダメダメ、仕事中!

 柚花は、自分の体勢と髪をさっと直しながら、智也の側にある花桶を見た。


「大変、失礼しました。

 あのぉ、もしかして、ブーケを作ってくださるのですか?」
 

 そんな事は、一目瞭然なのだが、一応、聞いてみたのだった。

…………………

  柚花は、ブーケとコサージュを作ってくれると言う智也と一緒に、新婦の元へと向かっている。


「披露宴会場は、1階にありますが、新郎新婦の支度部屋のブライズルームは2階です。

 お花屋さん、無理を言って申し訳ございません」


 柚花が改めて謝ると、智也が言う。


「いえいえ、親友のピンチを救ってくれた花嫁さんの頼みは、断れませんよ」


 花嫁さん……って、呼ばれている……。

 私の名前を知らないのか。

 どうしよう、自己紹介をするべき?


(お花屋さんって呼んでる……俺の名前を覚えていないのか……)


 そんな事を考えながら、エレベーターのボタンを押すと、扉がすぐに開いた。


 2人は、自己紹介をする間も無く、ブライズルームに入って行った。


「えっ!あっ、えっ?どうして!

 あの折原さんの御友人の方ですよね?

 えー!お花屋さんなんですか!

 驚きました!へぇ!」

 
 軽米が驚いて、やや興奮している。


(丸山さん、平然とした顔で、この人と来たけど、恥ずかしいとかないのかしら?

 熊の様なポーズをして、襲うように2人に チュッ、チュッ!なんてしていたのに!
 もしかして、覚えていないとか?
 
 だとしたら、怖いわ……。

 丸山さん、結婚は きっと遠いことでしょう。お気の毒に……)


 軽米は、心の中で合掌をするのだった……。



 新婦に花桶に入った花を見せ、色合いを決めてもらい、さっそく製作してもらうことになった。


「お花屋さん、スタッフルームで製作して下さい。ご案内しますね。こちらへどうぞ。


 今度は、1階なんです。
 行ったり来たりで、すみません」


 智也は、台車を押しながら柚花の後につき、歩いていく。


 エレベーターで下に降り、スタッフオンリーと英語で書いてあるドアの中に入ると、警備室があって、智也は許可証を貰った。

 
 警備室の前を通り、軽く押して開けるスイングドアを抜けると、少し広い空間があり、真っ直ぐの通路と左右別れの通路があった。

「へぇ、これがカレンダホテルのバックヤードなんですね。

  探検をしているみたいで、ワクワクします」

 智也は、目を輝かせ、声を弾ませて言った。


 ふふ、この人、少年みたいな所もあるんだね。可愛い!


 ……などと、柚花は思ったのだった。


 柚花は、真っ直ぐに歩き突き当たり手前、“ブライダル”とある、左のドアを開けて入った。


 全ドアは、中の様子がわかるようにガラス窓が付いたドアになっている。


 通路は、薄暗い感じで、明かりがついていないと歩けないが、この部屋は、奥に窓がある分だけ明るい。


 長方形の部屋は、入ってすぐ左脇に間仕切りカーテンがあり、更衣室にもなるようだ。


「あちらの楕円形のテーブルの所で、ブーケとコサージュの製作をして下さい」

 
「あっ、はい」


 柚花の言葉に従い、行ってみると、そこには先客がいて、デスクワークをしているようだった。


(見たところ、二十代半ばくらいかな?

 短髪黒髪、しっかりとヘアワックスをつけている。

 真面目そうな男性だ。

 うちの後藤とは真逆のタイプだろうな)


 智也は、瞬時にそんな事を考えていたのだった。


「外崎さん、こちらは、お花屋さんです。

 安堂様婚礼式のブーケとコサージュを今から、作って頂きます」


(あっ、また、お花屋さんって、言った!

 確かにそうですけど!西崎 智也です)


 「ガーデンプロデュースの西崎です。

 すみませんが、ここを使わせて頂きます」



「外崎と申します。

 どうぞ使って下さい。

 よろしくお願いいたします」


 外崎は立ってお辞儀をした。


(やっぱり、礼儀正しい!後藤とは違うなぁ)


「丸山さん、なんかあったんすか?」

 外崎が小声で柚花に聞いている声が、智也まで届いた。


(あれ?後藤と似た感じかも?)


「うん、新婦の麻里香さんが電車にブーケの入った袋を忘れてしまって、見つかったけど、潰れていたんだって!

……って、外崎さん、お客様の前で、その言葉遣いは、ダメよ」

 
「はい、かしこまりました!」

 外崎は、即、返事をしたのだった。


「では、お花屋さん、よろしくお願いします

 私は、他を見てきます。

 そうだ、お花屋さん、帰りはどうやって帰りますか?

 私が送って行ければいいのですが、帰りが遅くなるので、待てませんよね?」


 わざわざ残ってくれた智也に、申し訳無いと思った柚花が聞いた。


(さっき、名前を言ったのに、また、お花屋さん!しかも、2連発だ!)


「仕事帰りに仲間が迎えに来てくれるみたいだから、大丈夫です。

 花嫁さん、お気遣い ありがとう」

 
 花嫁さんと言われた事に突っ込みを入れたい柚花だったが、今は それどころではないから、その場を離れたのだった。


 スタッフルームに男、2人。


 ほわわぁーんと漂ってくる匂い……。


 ぐーー!


「あっ、すみません、西崎さん!
 お腹が鳴っちゃいました!あんまりにも、いい匂いがしてくるから」


「その通り、美味しそうな匂いですよ!

 お腹が空いてきますよね、外崎さん」
 

 この部屋の隣に厨房があるので、窓から匂いが入ってくるらしい。


 男性は、美味しそうと思う匂いだが、女性陣にとっては、特に肉の匂いは最悪らしい。

 髪や服に匂いが移ると言って、消臭スプレーを吹きかけるのだ。


「あっ、西崎さん、なかなか素敵な花束になってきましたね!」


 ピンクの薔薇を中心として、可愛いイメージに仕上げる予定だ。

…………………

「出来た!」


 思わず智也が言った!


「まあ、とっても素敵です!

 新婦の麻里香さんも、喜びますね。

 お疲れ様でした。

 本当にありがとうございました」

 
 準備に行った外崎に代わり、今は、倉田チーフが智也の側にいた。


 前にあった婚礼式が終わり、他のスタッフ達もいる。


「それでは、このブーケを私がお届け致しますが、お迎えの方は、来られますか?」


 迎えが来る予定だと、柚花から聞いていた倉田チーフが聞いた。

 
「はい、もうすぐ来てくれると思います」


 携帯画面を確認してから、智也が言ったのだった。

 …………………

 間もなく挙式開始となる頃のこと。


「丸山さん、ゲストの予定数より1名多いです。どうしましょう」


 緑川さんが私に言ってきた。

 
「えぇー!それは、早く厨房に連絡しないとね!幸い、今日の料理は、ビュッフェスタイルだから良かったけど……。

 新婦手作りのパンが切り方によっては、足りなくなるかも!

 じゃあ、私は、厨房に行くから。

 しっかりと進行をしていて下さいね」


 走りながら、厨房に連絡をする。


 案の定、厨房は修羅場状態のようで、その様子は電話からでも、分かるほどだ。

 話しても、怒鳴り声が聞こえてくるから聞き取れない……。

 あぁ、出来れば行きたくない所なんだけど!

 
  行くしかない!

「すみません、披露宴で出す、新婦手作りのフランスパンを1人分追加で、切ってほしいのですが……」


「なんだと!この忙しい時に!

 もう、とっくに切ってあるぞ!

 まったく!おい、野口、何とかしてやれ」


 リーダー格のシェフが言った。

 この人は、苦手なのよね。怖いもの。


 そして、今、私の目の前に来たのが、噂の野口シェフ。


 テレビで言う程のイケメンではないけど、なかなかモテるのだ!


「よっ!元気?テレビ観てくれた?」


「あ、ああ、うん、まあ。

 それでは、パンのこと、1人分追加でお願いします。じゃあね」


 柚花は、さっさと立ち去ったのだった。


 野口は、その後ろ姿を見ていた。




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