ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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新たな展開

付き合いって難しい。

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 野口によって、心をズタズタにされてから数日後のこと。


 今日は、平日の仏滅。

 カレンダホテルのブライダル部に属している者は、公休以外に順番に特別休があり、今日は柚花の休みの日だった。


 私は、アパートで1人暮らしをしている。


 朝、遅く起きて洗濯をして、ルームウェアを着たままバルコニーに出て干した。

 今はお昼だろうけど、ずっと起きたままの格好だ。

 私は、今日、髪をかしたっけ?

 思い出した様に本日、初めて鏡を見る。

 失恋をした時から、休みは一日中、外に出ることなく、起きたままの姿でいる事が日常化している。

 
「あっ、そうだ!彼氏を見つけないと!」


 クリスマス前の“お食事ご招待”に連れて行く男性を探しておかないといけないんだった!

 はぁ、面倒くさいなぁ。

 でも、ここで「本当は、彼氏がいない」なんて、アイツに言いたくない。

 よしっ!やるぞ!

 変な気合いを入れて、携帯電話を握りしめる。

 
 原口さん、既婚者かな?

 結婚していなくても、彼女がいる可能性は高いだろうな……。

 ダメで元々、当たってみよう。

 今、仕事中だと悪いからメッセージ機能を使って、連絡してみよう。
 

 出来るだけ短い文章を打ってみよう。
 

〈いつでもいい、連絡待つ〉

 短い文章だけど、意味は伝わるよね?

「よし、送信!行ってこーい」


 さてと、何か食べようかな。


 ピロロリラ、ピロロォーリラー!

 
 柚花の携帯電話からメロディーが鳴った。


「えっ!もう、メッセージの返信?」


〈どうしましたか?今なら電話OKです〉

 
 原口は、食事をしようと店の前にやって来た時、柚花のメッセージが届いた。

「電報みたいな文章!何が起こった?」

 カレンダホテルと何か別の企画があったっけ?と頭の中で、ぐるぐると考えて返信したのだった。


 わっ、さすが原口さんだ!

 打てば響く様な人だわ。

 行動が早い。

「もしもし、丸山です。突然、すみません。
 ご相談したい事がありまして……」


 柚花が電話を掛けたら、今晩、会って話しを聞いてくれることになったのだ。

………………

 夜の海が見えるレストランにいる私。
 久しぶりの異性との待ち合わせ。


 窓際の席に案内されて、恋人を待つ女の振りをする。


 遠くに見える灯りたちが、とても綺麗。



 原口さんから、ここで会いましょうって言われて、待っているけど、ロマンチックなレストランだなぁ。


 もしかして、恋人とよく来る場所かも?


 恋人がいる人なら頼むのは、やめよう。


 あぁ、周囲は、幸せそうに話しているカップルだらけ……。


 うん?

 私の背後から何やら不穏な空気が漂ってくる感じが……。


「えっ?別れようってことなの?」


 そんな女性の声が聞こえてきた!


「ごめん、俺たち、考え方が違い過ぎるから、これ以上、付き合えない!」


 男性が言った。


 少し声を抑えてくれないと、私にまる聞こえなんですが……。


 聞いたらいけない!聞いたらいけない!

 
柚花は、他に気を向けようと、暗い海を見た。
 

ありゃ、窓ガラスに店内が映っている……!


「考え方の違いって、お互い話し合えば解決できると思わない?」

 女性は、別れを受け入れない。粘る。


 そうそう、話し合いって、大事だよ!
 あっ、ダメダメ、人の会話を聞くな!
 でもさ、聞き耳立っちゃうよ!


 ああ、気になる、どんな人が後ろにいるの?
 
 海を見ている振りで、首を最大限に動かし窓を見た。

ガラス窓にぼんやりと映る後ろの人をちらりと盗み見る。

 男の人が私の後ろにいるのか……。


「俺達、根本的に性格が合わないんだ。

  まだ、付き合い始めたばかりで、傷も浅くて済む。

 だから、別れよう。本当にすまない」


  男性がそう言うと、会計伝票を持ち席を立った音がした。


 私の脇を通過した時に、思わず見上げて、彼の横顔をチラっと見た。


 あ、イケメン……?

 うん?

 そして、女性も後を追う様に出て行った。

 
 うーん、男女の仲って、難しい。

 そもそも同性同士だって、難しいもの。

 人間同士、上手く付き合っていくためには、妥協し合うことが必要なんだ。
 
 片方だけが、我慢ばかりしていたら、関係は遅かれ早かれ壊れていくだろう。


 あれ?

 私と野口が、まだ付き合っていたとしたら、野口の方が私の料理に我慢をし続けていることになっていたかも?

 
 いやいや、あの男は私と付き合っているとさえ、思っていなかったんだ!

 
 私は、もてあそばれただけだ!


 うーん、とにかく、男女の仲は 複雑なんだな!
 

…………………

 さて、そろそろ、原口さんが来る頃かな。

 店に人が入って来る度に確認をする。
 恋人を待っている気分だ。


 原口さんは、私より年上だと思うし、結婚しているかもね。

 少し探りを入れてみてから、フリーの人なら相談、お願いをしよう。


「丸山さん、お待たせしました。
  先日は、大変 お疲れ様でした」


「あ、原口さんも お疲れ様でした。
 ピアノ演奏ができるなんて、凄いです。

 とても楽しかったです。
 ありがとうございました」

 互いに、ひと通りの挨拶を済ませた。

 それから、柚花が確認するべき事を聞く。

「あのぉ、お呼びして何なんですが、奥様や御家族の方が家で、待っていらっしゃいますよね?

 わざわざ会社帰りに寄ってもらって、すみません」


 すると、原口さんの表情が曇ったように見えた……。


 えっ?私、まずい事を言ったかな?


「いや、いないから、大丈夫です」

 私は、原口さんの返事を聞いて、尚も質問をする。


「独身なんですか?なら、恋人がいらっしゃいますよね?

 私と ここで会っていて、誤解を受けてしまったら、申し訳ありません」

 
 お願い、恋人はいない。と言って下さい!


 祈る気持ちで、ズバリと言ってみた。


「残念ながらいません……。

 恥ずかしい話しですが、バツイチなんです。

 子どもが1人、男の子がいるんですよ。

 元妻のところにいます」


 よしっ!有り難い!ならば、話しを進めよう……って、うぇ!バツイチ、子持ち?


 これは、良いのか?頼んでいいのか?
 原口さんは、フリーだけど、微妙だ。

 時期がクリスマスの頃だし、お子さんと過ごされるかも……!

 やっぱ、言うのはやめようか……。


「わ、そうだったんですか。
 失礼な事を聞いてしまって、すみません。

 えっと、相談というのは……し、仕事の話しで……あっ、原口さんの会社では、海外クルーズの運行もしていますよね?

 我がホテルで婚礼式をして、新婚旅行は、船でするという企画をしてみたいなぁと思いまして……。

 原口さん、いかがでしょうか?」

 まあ、実際にそんな案が出ているため、思い出して、言ってみたのだった。


「そうですね、いいですね……では、企画を考えてみましょう……。

 これが、相談事ですか?

 なんだ、もっと深刻な事かと思った。
 仕事の話しなら、会社に来てくれても良かったのに……」

原口は、不思議そうな顔で言った。


「それもそうですよね。すみません」

 柚花が素直に謝ると、原口は慌てて、メニュー表を渡し、変な空気を消したのだった。

…………………

 あれから数日経ったが、恋人役は未だ見つかってはいない。

「はぁー」

 スタッフルームにあるテーブルに突っ伏し、溜息をついた。


 頼みの綱の原口がダメだったから、どうしたものかと考えている。


「丸山さん、朝から溜息ついていると、ツキが逃げていくわよ。

 皆さん、今日は、いよいよ模擬披露宴の日です!

 気合いを入れて、ガンガン婚礼式の予約を受けて下さいね。

 でも、真心は忘れないように!

 今日も一日、よろしくお願いします」


 倉田チーフが、皆んなに喝を入れた。


「よろしくお願いします」

  皆んなも声を出し、気合いを入れたのだった。


 さっ、仕事に集中しよう。


「丸山さん、披露宴会場の準備状況を見てきて下さい。

 えっと、軽米さん……は、休みか、野村さん、花嫁モデルさんをブライズルームへと連れて行って下さい」

 
 今日は、模擬披露宴という、これから式を挙げる予定のカップルを招待して、当ホテルでは、こんな披露宴をしますよって、見せる日なのだ。

 是非、うちで婚礼式をして下さいって、営業をする日。


 今日の会場は、2階にある大広間だ。

 
 柚花が会場に入ってみると、智也が花を生けていた。

 
 あっ、お花屋さんがいる!


 私がお花屋さんにキスをしてしまった事を軽米さんから聞いて、知っているけど!

もう、今更、その事を謝っても、既に遅しだから、このまま、忘れてしまいましょう。


 柚花は、ゲストテーブルにいる智也の側まで行き、声を掛ける。


「おはようございます。

 先日は、無理なお願いをして申し訳ございませんでした。

 とても、可愛いブーケで、新婦も喜んでいました。

 ありがとうございました」


 顔を上げた智也が、

「あ、おはようございます、お疲れ様です。

  喜んでくれたのなら、良かったです。

 私も嬉しいです。教えてくれて、ありがとうございます。励みになります」と応えた。

 
「今日は、ガーベラとカスミ草がメインなんですね。とても可愛いです。

 では、お花屋さん、後をよろしく頼みます。

 失礼します」


(うん?また、お花屋さんって言っている)


「花嫁さん、私と これからも、顔を合わせるかと思うので、自己紹介をしますね。

 私は、花屋ガーデンプロデュースの西崎 智也と申します。

 どうぞよろしくお願いします」


「あっ、失礼しました。

 私は、ウェディングプランナーをしております。丸山 柚花と申します。

 どうぞよろしくお願い致します」


 私が、お花屋さんって呼んでいたから、気にしていたのかしら?すみません。


「へぇ、ユズカさん?ユズって、柑橘の柚ってことですか?」


 智也が柚花の名前に、引っかかる。

 そんなに珍しい名前かしら?と柚花は思った。


「はい、柑橘の柚に花と書いて、柚花です」


「へぇ、可愛い名前なんですね。この商売をしていると、植物の名前の人に興味を持って……あ、いや、失礼しました。

 では、丸山さん、後はお任せ下さい」


「はい、西崎さん、後は任せました!ふふ。

 失礼します……」


 いやぁ、朝から、可愛いだなんて、照れちゃうわ。


 あっ、名前が可愛いって、言ったのか……


 照れることないわ!


 西崎さんって名前を忘れないようにしないとね!次、会ったら気をつけよう。

 
 ブルブル ブルブル


「うん?電話?何?」

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