ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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新たな展開

訪問者

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「はい、丸山です。えっ?了解、すぐ行きます」


 急いで会場から出て行く柚花を、智也は見ていた。


(何かあったのかな)


「わか……西崎さん、こっちは完了しました。そっちは、どうっすか?」


 隣のテーブルで花を生けていた後藤が聞いた。


「ああ、後藤くん、こっちは、完了した!
 川口さんの方は、どうですか?」

  と、智也が聞いた。

「わか、あっ、西崎さん、もう少しで終わるから、待っていて……この花はここ。うん、これでいいかな?はい、終わりました」


 メインテーブルの花を生けていた川口は、ふぅっと息を吐き、出来栄えに満足した。


「あのさぁ、2人とも、どうして私の苗字の前に“わか”って付けるの?

 いい加減、この呼び方に慣れて下さい」


「だって、西崎さんは、今まで 話しも出来ない存在だった 、うちの会社の若社長じゃないっすか。
 
 それが、いきなり一緒に働く事になって、苗字で呼べって、言われても難しいっすよ」

 と、後藤が不満気に言うと、川口も続けて言う。


「そうですよ、若社長!

急に私達と一緒に現場で働くことにしたし、他の従業員と同じに接しろと言うから、若社長にどう接していいのか、私達、戸惑っているんですよ」


「社長の息子だからって、勝手に若社長って呼ばれ始めただけですよ!

 それに2人とも、戸惑っている感じは、全くありませんが! 

 特に後藤くんは、かなり自然に接してくれていると思います。

 若社長だって、思っていない感じがするから、いいですけど……。

 でもねぇ、後藤くんはハタチになったのだから、そろそろ言葉遣いをキチンとしようよ。ねっ?」

 
 どさくさに紛れて、智也が後藤に注意をした。

「はい、了解っす」

 言いながら、後藤は、ビシッと敬礼をした。

 これは、後藤なりの素直な返事なのだった。

…………………

 一方、呼び出された柚花は、フロントに来ていた。


 先程の電話は、フロントからブライダル部に訪問者がいると連絡を受けた外崎が、近くにいる柚花に電話をしたのだった。


「折原さん、お待たせ致しました。

先日は、お疲れ様でした。

 あちらのソファーへどうぞ」


 フロントで待っていたのは、花嫁に逃げられた新郎、折原 匠海だったのだ。

 
 ダークグレーのスーツに、シルバーに近いグレーのワイシャツ、斜めストライプ柄の明るいエンジ色のネクタイをして、少し痩せたように見えた。


「丸山さん、お仕事中に、すみません。

 あなたとブライダルのスタッフの皆様に、先日の御礼を……と思いまして伺いました。それ……」


 ブルブル ブルブル!


「あっ、すみません。電話に出ても、宜しいでしょうか」

 匠海に許可をもらい、柚花は電話に出た。


「はい、丸山です。えっ?ええー!はい、えー、ああ、はい……」


 電話を切った柚花は、匠海に対して、申し訳ないと言うような表情をした。


 そんな柚花の様子から、何かあったのだと察した匠海だった。


「あ、皆さんは、お忙しいでしょうから、挨拶は今度にします。

 お邪魔をしては、悪いでしょうし……。

 僕は、これで帰りますが、あの、その……。

 丸山さん、あのぉ、ま、また、来ます。

 では、さようなら」


 匠海は、会釈をして、きびすを返し、歩き出した。


「お待ち下さい」


 がしっ!


 柚花が匠海の片腕をつかんで引き止めた。


 驚いた表情で、振り向く匠海。


「えっ?何ですか」


「お引き止めしてしまって、すみません。
 スタッフの倉田が、折原さんがいらしているのなら、是非、お会いしたいと申しておりまして……。

 この後、何かご予定がございますか?」


「えっ?はい、特に予定はありませんが?」

 必死に引き止めてくれて、訳は分からないが嬉しい匠海なのだった。


 辛い事があったから、尚更、嬉しく、女性から腕を掴まれる事も初めてだったから、ドキドキもしていた。


 
 そして、柚花と一緒にエレベーターに乗りこんだ。


「…………」


 沈黙する2人。


 実は、2人それぞれ、秘めている事があり、言い出そうか、どうしようかと考えていたのだ。


「あのっ!」2人同時に切り出した。


「あっ、丸山さんから どうぞ」


 匠海が柚花に譲る。


「いえ、折原さんからどうぞ」


「あ、そうですか、なら、お言葉に甘えて、実は、今日は……」


 匠海が言いかけた時に、


 チン! エレベーターが2階に到着した。


 ガーっと、扉が開くと、そこに倉田チーフと野村さんが待っていたのだった。


「倉田チーフ!まだ、言っていません」

 柚花は、首を横に振り倉田チーフに言った。


 匠海は、キョトンとしたが、婚礼スタッフが自分を待っていたのだと感じたのだった。


「折原様、先日は、ありがとうございました。

 実は、折原様に折り入ってお願いしたい事がございまして……」


 倉田チーフは、言いにくそうに話し始めた。


「お願い?何ですか?僕に出来る事なら、します。恩のある皆さんに嫌とは言えませんから!」

 匠海の言葉にホッとしながら、倉田チーフは、話を続ける。


「本日、模擬披露宴があるのですが、手違いで花婿、花嫁のモデルさんが来ていないのです。

 うちには、男性スタッフもいますが、見栄えを考えると……ちよっと。

 丁度、困っている時に折原様が来ていると聞いて、それなら、花婿さん役をお願いしたいと思いました。

 いかがでしょうか?」

 
「僕が?モデルをするんですか?

 いやぁ、出来るのかな……。

 それで、花嫁さんの方は、決まったんですか?」


 まんざらでも無い様子の匠海が聞いた。


「はい、この前も花嫁を演じた丸山にやらせますから」


 初耳の本人の目の前で、サラリと言ったのだった。


「えぇー!何故、私なんですか!

 野村さんがいるじゃないですか!

 また、ウエストが太いとか言われたら、立ち直れません!嫌です!」


(丸山さん、そんな酷いことを言われていたのか、すみませんでした!

 でも、僕は気にしませんから!)


「僕は、丸山さんと一緒なら安心して、花婿役ができる気がします。

 丸山さん、花嫁さんをお願いします」

 
 私、丸山 柚花 28歳 独身。


 またまた、花嫁になることに……。

 
 花婿は、前回と同じ 折原 匠海さん。


 今回は、模擬披露宴だし、女優にならなくてもいいから、気は楽だ。


「折原さん、無理なお願いをして申し訳ございません。

 私、丸山 柚花が花嫁をやります。

 どうぞ宜しくお願い致します」


 そして、2人はブライズルームに入室した。


 支度部屋に入ろうとする柚花の耳元で、匠海がこっそりと言う。

 
「披露宴が終わったら、何処かでお会い出来ませんか?」


「 ! 」
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