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ある日、突然。
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柚花と軽米が焼肉店に行ってみると、待つ人の列ができていた。
「さすがオープンしたての お店ですね。
どうします、待ちます?」
「焼肉は今度にしようか。
フードコートなら、きっと空いているでしょう。今日は、そこにしない?」
軽米に聞かれた柚花が逆に提案し、2人はフードコートに向かった。
すると予想通り、こちらは割と空いていた。
あ、席が空いてる。
「軽米さん、あの辺の席にしようか?
私が席を取っておくから、先に買ってきていいよ」
「はい、じゃあ、お言葉に甘えてお先に」
そう言って軽米は、お目当ての店へと行ったのだった。
その時、偶然、智也と和希がフードコートに入って来た。
彼等もまた、オープンしたばかりの焼肉店に来たのだか、諦めてここに来たのだった。
柚花も軽米も、彼等も、互いの存在には、全く気づいていない。
よし、席は、ここでいいよね。
ハンカチを置いて、水を持ってこようかな……。
柚花が歩き出した時に、柔らかな物体が足に当たってきた。
「 ! 」
「あっ!えっ、だいじょうぶぅ?」
ぶつかってきたのは、2歳くらいの女の子で、柚花の足元で転んでいる。
柚花はしゃがんで、幼児を起こしてあげた。
「あ、強いね。泣かなくて偉いね。
いい子ねぇ。すごいねぇ!
えらい、えらい」
わぁ、お願い!泣かないでね。
すると、泣きべそをかきそうだった子がニッと笑って、握った小さな手を柚花に差し出した。
「はい、どうじょ!」
その小さな指で摘んでいた物は、空のストローの袋だった。
「あら、これをくれるの?嬉しいな。
ありがとうね。いい子、いい子」
可愛い幼児にほっこりとしながら、頭を撫でていると、側に近寄ってくる人の気配を感じた。
「あっ、どうもすみません。ありがとうございます」
「あ、いえいえ。可愛いですね……」
急いで来た父親が礼を言ったから、柚花は返事をしながら、立ち上がり父親の顔を見た。
「 ! 」
「 ! 」
柚花は一瞬、身体の臓器全ての動きが、停止した気がした……。
互いに硬直し、言葉なく見つめ合う……。
だが、直ぐに母親が「すみません」と来たから、柚花は会釈をして立ち去った。
一瞬で。
過去に 引き戻されていく。
愛していた人が父親となって、目の前に現れた。
私たちは、互いに結婚を意識していたはずだった。
少なくとも私は……。
絶対に結ばれると信じていた人……。
けれど、ある日 突然、好きな人ができたと告げられた。
……そっか、その彼女と結婚したんだね。
封印して、新しく恋もして、すっかり忘れ去っていたのに。
あの頃の感情が、ふつふつと湧き上がってくる。
自分で、コントロールができない。
こんな場面に、遭遇したことのある世の女性は、どうしているんだろう?
平常心でいられるのかな?
私は、ここに立っているのも辛い。
柚花は戻って来た軽米に、急にお腹の調子が悪くなったから帰ると言った。
心配をしてくれる軽米には悪いと思ったが、一刻も早く ここから立ち去りたかったのだ。
それから、柚花と入れ替わるように和希と智也が、軽米のところへとやって来た。
「あれ?今、柚花が、丸山さんがいたような気がしたけど?」
そう智也から聞かれ、軽米は理由を話す。
その頃、急いで外へと向かっていた柚花だったが、ふと、足を止めた。
あっ!店内に流れているのは……。
これって……。
彼との別れ話の時に、カーステレオから流れてきた曲だ。
どうして、今、流れてくるの?
この曲を聴くと、涙が出ちゃうよ。
あの日にフルスピードで戻っちゃうじゃない……。
柚花は、走って車まで行く。
もう別れた人なんだから、その人がどうしようが、自分には関係は無い。
ショックを受けるのは変なんだから!
とっくに過ぎ去った事を、思い出しても何も得しないでしょっ?
こんな涙を流したって、無駄でしかないでしょっ?
暗い気分なんて、吹っ飛ばせ!
頑張れ自分!
人生は、山あり谷あり、色んな事があるんだ!
彼の幸せを喜んでやりなさい。
それくらい、私は度量の広い女なんだ!
頑張れ自分!頑張れ柚花!
柚花は、自分に言い聞かせ涙を拭った。
「うん、大丈夫!
過去は過去。前進あるのみだ!」
柚花は、両頬を軽くペチペチと叩いてから、車を発進させたのだった。
……………………
あっ、あと一歩、及ばす……。
智也が柚花の後を追い、駐車している車を探して、見つけたと思ったら、発進してしまった。
(腹痛だって?大丈夫なのかな?
アパートに行ったら、迷惑だよな……。
でも……)
智也は、歩きながら電話を掛ける。
「和希、ごめん。俺、先に帰るから」
電話を切って、自分の車へと急いだ。
(取り敢えず、柚花の様子が知りたい)
智也は、車を走らせる。
そして、柚花の住むアパートの近くのコンビニ付近で、信号待ちをしていたら、コンビニから出てくる柚花を見つけた。
何やら買い物袋がパンパンに膨らんでいる。
(腹痛の人が、何をそんなに買ったのか?
あっ、発進して、柚花は裏道に入っていった!先に行ったか。
おっ、信号が変わった)
智也は、駐車をしている柚花の横を通り過ぎ、先の方の路上に車を止め、柚花の元へと急いだ。
袋を持って降りた柚花は、「こんばんは」と声を掛けられ、びくんと肩を上に上げてから「こんばんは」と返した。
「なんだ、智也さんか、びっくりした。
何か、私に用なの?」
柚花は、ケロッとした感じで聞いた。
「うん?さっき、ショッピングモールに居たんだよ。
偶然、軽米さんと会ったら、君がお腹が痛くて帰ったと聞いて……大きなお世話だとは思ったんだけど、来ちゃった。
具合はどうなの?治った?」
えっ、私を心配して来てくれたの?
柚花は、食料品で膨らんだ買い物袋をそっと隠した。
やけ食いをしようとしていたのだ。
「えっ、智也さんもショッピングモールにいたんだね。
もう、私は大丈夫だから!
心配をかけたみたいで、ごめんなさい。
ほら、もう元気だから。
私は、いつだって元気に前進あるのみ!
来てくれて、ありがとうございました。
じゃあ、おやすみなさい」
「あっ、待って!これ、お見舞い……」
車の中に置いてあった物を掴んできた。
何かないとお見舞いという格好がつかないと思ったのだ。
「はい、お大事に!じゃあ、おやすみ」
「あっ、どうもありがとう。
おやすみなさい」
柚花は、手のひらの中で、受け取った棒状の固い物を握り礼を言った。
智也を見送り、智也がくれた物を見たら、それは のど飴だったのだ。
あれ?私は、腹痛ってことだったはず……えっ、のど飴?
でも……のど飴だって、とってもとっても嬉しい。
智也さんの優しさが心に、じんわりと染み渡ってくる。
その飴は、溶けてベタベタになっていたけれど、柚花は美味しく頂いたのだった。
…………………
翌日、カレンダホテルに出勤すると、CMの台本が出来ていた。
台本といっても、内容はざっくりと超薄い物だ。
「皆さん、今から配役を決めましょう」
倉田チーフが集合をかけたのだった。
「さすがオープンしたての お店ですね。
どうします、待ちます?」
「焼肉は今度にしようか。
フードコートなら、きっと空いているでしょう。今日は、そこにしない?」
軽米に聞かれた柚花が逆に提案し、2人はフードコートに向かった。
すると予想通り、こちらは割と空いていた。
あ、席が空いてる。
「軽米さん、あの辺の席にしようか?
私が席を取っておくから、先に買ってきていいよ」
「はい、じゃあ、お言葉に甘えてお先に」
そう言って軽米は、お目当ての店へと行ったのだった。
その時、偶然、智也と和希がフードコートに入って来た。
彼等もまた、オープンしたばかりの焼肉店に来たのだか、諦めてここに来たのだった。
柚花も軽米も、彼等も、互いの存在には、全く気づいていない。
よし、席は、ここでいいよね。
ハンカチを置いて、水を持ってこようかな……。
柚花が歩き出した時に、柔らかな物体が足に当たってきた。
「 ! 」
「あっ!えっ、だいじょうぶぅ?」
ぶつかってきたのは、2歳くらいの女の子で、柚花の足元で転んでいる。
柚花はしゃがんで、幼児を起こしてあげた。
「あ、強いね。泣かなくて偉いね。
いい子ねぇ。すごいねぇ!
えらい、えらい」
わぁ、お願い!泣かないでね。
すると、泣きべそをかきそうだった子がニッと笑って、握った小さな手を柚花に差し出した。
「はい、どうじょ!」
その小さな指で摘んでいた物は、空のストローの袋だった。
「あら、これをくれるの?嬉しいな。
ありがとうね。いい子、いい子」
可愛い幼児にほっこりとしながら、頭を撫でていると、側に近寄ってくる人の気配を感じた。
「あっ、どうもすみません。ありがとうございます」
「あ、いえいえ。可愛いですね……」
急いで来た父親が礼を言ったから、柚花は返事をしながら、立ち上がり父親の顔を見た。
「 ! 」
「 ! 」
柚花は一瞬、身体の臓器全ての動きが、停止した気がした……。
互いに硬直し、言葉なく見つめ合う……。
だが、直ぐに母親が「すみません」と来たから、柚花は会釈をして立ち去った。
一瞬で。
過去に 引き戻されていく。
愛していた人が父親となって、目の前に現れた。
私たちは、互いに結婚を意識していたはずだった。
少なくとも私は……。
絶対に結ばれると信じていた人……。
けれど、ある日 突然、好きな人ができたと告げられた。
……そっか、その彼女と結婚したんだね。
封印して、新しく恋もして、すっかり忘れ去っていたのに。
あの頃の感情が、ふつふつと湧き上がってくる。
自分で、コントロールができない。
こんな場面に、遭遇したことのある世の女性は、どうしているんだろう?
平常心でいられるのかな?
私は、ここに立っているのも辛い。
柚花は戻って来た軽米に、急にお腹の調子が悪くなったから帰ると言った。
心配をしてくれる軽米には悪いと思ったが、一刻も早く ここから立ち去りたかったのだ。
それから、柚花と入れ替わるように和希と智也が、軽米のところへとやって来た。
「あれ?今、柚花が、丸山さんがいたような気がしたけど?」
そう智也から聞かれ、軽米は理由を話す。
その頃、急いで外へと向かっていた柚花だったが、ふと、足を止めた。
あっ!店内に流れているのは……。
これって……。
彼との別れ話の時に、カーステレオから流れてきた曲だ。
どうして、今、流れてくるの?
この曲を聴くと、涙が出ちゃうよ。
あの日にフルスピードで戻っちゃうじゃない……。
柚花は、走って車まで行く。
もう別れた人なんだから、その人がどうしようが、自分には関係は無い。
ショックを受けるのは変なんだから!
とっくに過ぎ去った事を、思い出しても何も得しないでしょっ?
こんな涙を流したって、無駄でしかないでしょっ?
暗い気分なんて、吹っ飛ばせ!
頑張れ自分!
人生は、山あり谷あり、色んな事があるんだ!
彼の幸せを喜んでやりなさい。
それくらい、私は度量の広い女なんだ!
頑張れ自分!頑張れ柚花!
柚花は、自分に言い聞かせ涙を拭った。
「うん、大丈夫!
過去は過去。前進あるのみだ!」
柚花は、両頬を軽くペチペチと叩いてから、車を発進させたのだった。
……………………
あっ、あと一歩、及ばす……。
智也が柚花の後を追い、駐車している車を探して、見つけたと思ったら、発進してしまった。
(腹痛だって?大丈夫なのかな?
アパートに行ったら、迷惑だよな……。
でも……)
智也は、歩きながら電話を掛ける。
「和希、ごめん。俺、先に帰るから」
電話を切って、自分の車へと急いだ。
(取り敢えず、柚花の様子が知りたい)
智也は、車を走らせる。
そして、柚花の住むアパートの近くのコンビニ付近で、信号待ちをしていたら、コンビニから出てくる柚花を見つけた。
何やら買い物袋がパンパンに膨らんでいる。
(腹痛の人が、何をそんなに買ったのか?
あっ、発進して、柚花は裏道に入っていった!先に行ったか。
おっ、信号が変わった)
智也は、駐車をしている柚花の横を通り過ぎ、先の方の路上に車を止め、柚花の元へと急いだ。
袋を持って降りた柚花は、「こんばんは」と声を掛けられ、びくんと肩を上に上げてから「こんばんは」と返した。
「なんだ、智也さんか、びっくりした。
何か、私に用なの?」
柚花は、ケロッとした感じで聞いた。
「うん?さっき、ショッピングモールに居たんだよ。
偶然、軽米さんと会ったら、君がお腹が痛くて帰ったと聞いて……大きなお世話だとは思ったんだけど、来ちゃった。
具合はどうなの?治った?」
えっ、私を心配して来てくれたの?
柚花は、食料品で膨らんだ買い物袋をそっと隠した。
やけ食いをしようとしていたのだ。
「えっ、智也さんもショッピングモールにいたんだね。
もう、私は大丈夫だから!
心配をかけたみたいで、ごめんなさい。
ほら、もう元気だから。
私は、いつだって元気に前進あるのみ!
来てくれて、ありがとうございました。
じゃあ、おやすみなさい」
「あっ、待って!これ、お見舞い……」
車の中に置いてあった物を掴んできた。
何かないとお見舞いという格好がつかないと思ったのだ。
「はい、お大事に!じゃあ、おやすみ」
「あっ、どうもありがとう。
おやすみなさい」
柚花は、手のひらの中で、受け取った棒状の固い物を握り礼を言った。
智也を見送り、智也がくれた物を見たら、それは のど飴だったのだ。
あれ?私は、腹痛ってことだったはず……えっ、のど飴?
でも……のど飴だって、とってもとっても嬉しい。
智也さんの優しさが心に、じんわりと染み渡ってくる。
その飴は、溶けてベタベタになっていたけれど、柚花は美味しく頂いたのだった。
…………………
翌日、カレンダホテルに出勤すると、CMの台本が出来ていた。
台本といっても、内容はざっくりと超薄い物だ。
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倉田チーフが集合をかけたのだった。
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