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ある日、突然。
そこまで言うのか!
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バージンロードを支配人と一歩ずつ慎重に歩く、智也は柚花の手を取る瞬間を待っている。
智也は、これが現実の事ならば、どんなに嬉しいことかと考えていた。
支配人と柚花が智也の前で、ピタリと止まる。
「娘を……頼みます」
支配人は心を込めて、父として言い、私の手を取り、花婿である智也さんの手に私を託した。
「はい!」
と言った花婿の言葉には、必ず娘さんを幸せにすると誓いますと言っているように聞こえた。
もう2人は、いえ全員が役になりきっている!
私も心を込めて演じよう。
花婿の返事を聞き、父は目を閉じた。
肩の荷が下りてホッとする気持ちと、込み上げてくる寂しい気持ちとが戦っているのだ……。
「毎日を笑って過ごしなさい」
父は、精一杯の笑顔で言った。
その言葉に頷く私たち。
前の席に座り、3人を見守っているのは花嫁の母。
嫁に出す父の気持ちが痛いほどわかる母は、溢れる涙をハンカチで押さえている。
そして、次のシーンは、誓いの言葉だ。
本来の挙式ならば、神父の朗読や祈りがあるのだが、予定にないものは全カットなのだ。
緑川さんは、カツラとつけ髭で変装している。
少し不自然さはあるものの、そんなに映る予定はないので、これで良いという事にしてある。
誓約のシーンを終え、本来なら指輪交換だけどカットして、いよいよベールオープンだ!
進行役の神父が、ベールオープンの説明をしている。
この流れを不思議な気持ちで見ていた者がいた。
そう、それは挙式を経験している匠海だったのだ。
(あれ?以前、式場下見に連れていかれ、挙式の説明を受けた事があるけど、随分とやる事をカットしている気がする……気のせいなのか?)
匠海が1人モヤモヤしながら見守っていることなど、誰も気に留める者などなく、演技は続いていく。
…………………
娘を慈しみ守ってきたことを表すベール。
邪悪な物から花嫁を守る魔除けを意味するベール。
いろんな意味があるベールが花嫁を隠している。
花嫁は中腰になり、花婿が花嫁の顔を隠しているベールを上げた。
花婿と花嫁の間にあったベールという垣根が取り払われ、2人は晴れて結ばれる。
ベールオープン……これからは、自分が、花婿が愛情をもって花嫁を守ってゆく……。
そんな花婿の決意の儀式でもある。
(あ、ベールを上げた!
これから、誓いのキスだな……。
ああ、見たくないな……。
もう親友の妻なのか……。
おっ、智也が丸山さんの両肩に手を置いて、見つめ合っている。
とうとうキスをするのか……どこにする?口か?おでこ?頬にか?
どこにするんだ?やっぱ口か?
うん?しない?しないんかい?
どっちだーーー?)
「はい!カット!確認します!」
突然、外崎が叫んだ。
するとサクラとして参加していた人達の緊張感が和らいだ。
「えっ?何がカット?はあ?
和希、どんな状況かわかる?」
バージンロードを挟んで、匠海が和希に話し掛けた。
「俺もわからない!何だこれ?
軽米さん、何これ?」
匠海と和希は、状況が分からず戸惑っていた。
「えっ?何ってCM撮影をしていますよ。知っているから、協力しに来てくれたんですよね?」
「は?何て言いました?CM撮影?」
思わず和希のいる席に行って軽米に聞いている。
匠海は、智也に騙されたのだと気付いたのだった。
「智也が丸山さんと結婚式を挙げるからって言ってきたんだけど……どうして、そんな嘘を言ったんだろう?」
匠海が和希と軽米に聞いている時に、外崎の声が聞こえてきた。
「はい、OKでーす!解散して下さい。
皆様、ご協力をありがとうございました!」
「あっ、終わった……。あっ、さあ、私には分かりませんけど、この撮影に協力をしてもらいたかったのかしら?
すみません、私、勤務中なので行きます。和希さん、ちょっと通して下さい。すみません、ご協力ありがとうございました。
和希さん、よければロビーで待っていてくれれば……。じゃあ、行くね」
そう言って軽米は、スタッフがいる方に行ったのだった。
「聞いた?勤務中だって……驚いたな……。和希、外に出よう……」
「ああ、うん、出よう……」
匠海も和希も放心状態となっていた。
出ようと歩き出したチャペル内に、再び外崎の声が響く。
「では、これより両親の別撮りをします。
お二人とも、打ち合わせの通りにお願いします」
外崎が現場をびしっと仕切っている。
サクラとして協力をしてくれたホテルスタッフ達は、さっと左ドアの中へ入って消えたが、匠海と和希は入って来たドアの方から外へと出たのだった。
その後を智也が追いかけて、外へと出てきた。
「匠海、待って!」
「あー、お前、僕を騙したのか?
こんな嘘、酷過ぎだと思わないのか?」
匠海は、ブチ切れて文句を言った。
「ごめん、本当にごめんな。
2人とも会社を休んで来てくれたんだろう?本当にすまなかった。
正直に言うと、匠海が柚花のことをどう思っているのか、確かめようとしたんだ……ごめん」
「はあ?何だよそれ?
結婚すると聞いて、僕がどんな反応をするのか見ていたのか?
あー、腹が立つ!
仮に、もし、僕が丸山さんを奪いに来たとしたら、お前は、はい、どうぞ!って彼女を素直に渡す気でいたの?」
腹を立てて、喧嘩ごしの匠海が強い口調で言った。
「いや!いくら親友のお前でも、それは無理だ!
でも、お前が告白して柚花が、お前を選んだとしたら、祝福をする覚悟はあったよ……。
……で、告白をしたいと思ったの?」
智也が気になっていた事をズバリと聞いた。
「僕は、丸山さんのことを確かに好きだよ。でも、上手く言えないけど、愛情とは違う気がするんだ。
何て言えばいいのか……仲間意識というか、丸山さんは、偽妻をしてくれていたから、僕の妻という意識も少しはあったから、多少はムッときたこともあったけど……。
よくわからんが、とにかく、祝福をしにここへと来たんだぞ!」
智也の険しい表情が、少し緩んだようだ。
「それ本当なのか?信じるからな?
なら、俺、柚花を諦めないからな!」
智也が決意を口にした。
智也と匠海の会話を黙って聞いていた和希が話し始める。
「何?超モテモテ智也が、諦めない!なんて言うの初めてだよね。
お前に惚れない女はいないだろう?
匠海がどうのこうの言ったとしても、お前たちが両想いなら、関係ないだろう?」
そう言われて、智也の表情は曇ったのだった。
「……られた」
匠海と和希が「何て言った?」と聞き返した。
「俺、フラれたんだよっ!」
「えーーー、お前があ?フラれた?ってぇ、ま、まじでか?」
和希が驚いて言った。
「へえ、さすが僕の仮嫁さんだ。
ふっちゃうなんて、よくやった!偉い!
お前は、イケメン過ぎて、男の敵なんだからな!女の子を根こそぎ持っていくだろう?
世の中、男は うじゃうじゃいるのに、イケメンにばかり女の子が群がるのは、超不公平だ!
ああ、スッキリした!
お前、いい経験をしたんだぞ!
フラれる気持ちがわかったか?」
匠海の顔は、今一番、輝いている。
「うわぁ、なんかグサってくる事を言ってくれちゃうんだねぇ」
智也が項垂れて言った。
「こらっ、匠海、すっげえ意地の悪い顔をしているぞ!
その辺にしておいてやれよ。
まあ、お前を振る女性が現れるとは、びっくりだな。
それで、匠海に嘘を言って、気持ちを確かめようとしていたのか。
なるほどね……」
和希は、全てをわかったように言ったのだった。
(もしかしたら、丸山さんが匠海のことを好きかもしれないから、匠海の本当の気持ちを知りたかったのか)
「なんだよ、何がなるほどね なんだよ?」匠海は、じれったいと言うように聞いた。
「今の話を聞いた上で、丸山さんのことをどう思っているの?正直に言えよ」
和希が真剣な顔で聞くから、匠海も真剣な顔になる。
「さっき言った通りだよ。
それと、ぶっちゃけて言うと、同僚が結婚する時に、丸山さんが僕に、“今日なんて、新しい出逢いのチャンスの場です”なんて言ったからね。
正直、その時は、門前払いをされたような気分だった。
その後も、だめ押しのように、前に進めと言われたし……。
僕の事は、何とも思っていないから、安心しろよ」
匠海は、やや自虐ぎみに言ったのだった。
「……じゃあ、匠海、俺、柚花に独走して行ってもいいのか?ごめん……。
頑張った結果、嫌いと言われたら諦める。
その時は、2人とも やけ酒に付き合ってよ。
それにしても、今日、2人が来てくれたことが本当に嬉しいよ。俺を思って来てくれて、感動している。本当にありがとう。
友達って、有り難いな……。
このお詫びは、この後、お詫びの アワビをご馳走するから……許して下さい」
智也が心から謝っているのがわかった2人は、笑って言う。
「おう!アワビだな、約束だぞ。
ロビーで待っているからな」
和希が言うと、匠海も言う。
「黒アワビをご馳走になろうかな。
それで、許してあげよう。後でな」
2人は、癒しの小道を歩いて行き、智也はチャペルの中へと入って行ったのだった。
…………………
「どうしたの?なかなか戻らないから、何かあったのかなって……」
智也が中へ入ると、柚花が心配そうに聞いてきた。
「何もないよ!大丈夫だから」
智也がイケメンスマイルで答えたから、柚花はドキっとした。
……………………
「本日は、お疲れ様でした。
このCMが出来上がったら、お知らせしますから、試写会に来て下さいね。
と言っても、短いのでガッカリするかもしれませんけど。
で、御礼は後日させて頂きますので、少しお待ち下さいね」
柚花が言った。
倉田チーフと軽米も一緒に智也に挨拶をしているのだ。
「では、私は これで失礼いたします。
お疲れ様でした」
智也は、よそ行きモードで話した。
「倉田チーフ、西崎さんのお見送りをしてきます」
そう言って、柚花は智也と並んで歩いている。
「……ブーケ……家に持って帰ってくれるのかな?」
智也は、聞きにくそうに言ってきた。
「あーあれ、とっても可愛い花だった。
もちろん、持って帰りますよ。
作ってくれて、どうもありがとう」
「えっ?えっ?喜んでくれるの?
本当?嬉しいな。じゃあさ、じゃあさ、この前、買ってくれた揃いのマグカップを柚花の家に持って行っちゃダメ?」
「マグカップ?あっ、忘れてた!
ダメ!それは、自分の家に置いておいて下さい。
あっ、たっ君、折原さん、前沢さんも本日は、ご協力して頂きありがとうございました。
この御礼は、後日いたします。
では、私は失礼させて頂きます」
私がスタッフルームに戻ろうとしていると、軽米さんとすれ違った。
軽米さん、嬉しそうな顔をしているね。
前沢さんのことが好きなんだね。
頑張れ!
「 あっ!」
大切なブーケをしまい忘れていることに気がついた!
やばい!どこにある?
ウェディングドレスを脱いだのは、ブライズルームで、ブーケは確かテーブルの上に?
急いでブライズルームに行き、テーブルに置いあったブーケを見つけて、胸を撫で下ろした。
これは、智也さんの気持ちが込められているから、受け取らなくっちゃね。
智也は、これが現実の事ならば、どんなに嬉しいことかと考えていた。
支配人と柚花が智也の前で、ピタリと止まる。
「娘を……頼みます」
支配人は心を込めて、父として言い、私の手を取り、花婿である智也さんの手に私を託した。
「はい!」
と言った花婿の言葉には、必ず娘さんを幸せにすると誓いますと言っているように聞こえた。
もう2人は、いえ全員が役になりきっている!
私も心を込めて演じよう。
花婿の返事を聞き、父は目を閉じた。
肩の荷が下りてホッとする気持ちと、込み上げてくる寂しい気持ちとが戦っているのだ……。
「毎日を笑って過ごしなさい」
父は、精一杯の笑顔で言った。
その言葉に頷く私たち。
前の席に座り、3人を見守っているのは花嫁の母。
嫁に出す父の気持ちが痛いほどわかる母は、溢れる涙をハンカチで押さえている。
そして、次のシーンは、誓いの言葉だ。
本来の挙式ならば、神父の朗読や祈りがあるのだが、予定にないものは全カットなのだ。
緑川さんは、カツラとつけ髭で変装している。
少し不自然さはあるものの、そんなに映る予定はないので、これで良いという事にしてある。
誓約のシーンを終え、本来なら指輪交換だけどカットして、いよいよベールオープンだ!
進行役の神父が、ベールオープンの説明をしている。
この流れを不思議な気持ちで見ていた者がいた。
そう、それは挙式を経験している匠海だったのだ。
(あれ?以前、式場下見に連れていかれ、挙式の説明を受けた事があるけど、随分とやる事をカットしている気がする……気のせいなのか?)
匠海が1人モヤモヤしながら見守っていることなど、誰も気に留める者などなく、演技は続いていく。
…………………
娘を慈しみ守ってきたことを表すベール。
邪悪な物から花嫁を守る魔除けを意味するベール。
いろんな意味があるベールが花嫁を隠している。
花嫁は中腰になり、花婿が花嫁の顔を隠しているベールを上げた。
花婿と花嫁の間にあったベールという垣根が取り払われ、2人は晴れて結ばれる。
ベールオープン……これからは、自分が、花婿が愛情をもって花嫁を守ってゆく……。
そんな花婿の決意の儀式でもある。
(あ、ベールを上げた!
これから、誓いのキスだな……。
ああ、見たくないな……。
もう親友の妻なのか……。
おっ、智也が丸山さんの両肩に手を置いて、見つめ合っている。
とうとうキスをするのか……どこにする?口か?おでこ?頬にか?
どこにするんだ?やっぱ口か?
うん?しない?しないんかい?
どっちだーーー?)
「はい!カット!確認します!」
突然、外崎が叫んだ。
するとサクラとして参加していた人達の緊張感が和らいだ。
「えっ?何がカット?はあ?
和希、どんな状況かわかる?」
バージンロードを挟んで、匠海が和希に話し掛けた。
「俺もわからない!何だこれ?
軽米さん、何これ?」
匠海と和希は、状況が分からず戸惑っていた。
「えっ?何ってCM撮影をしていますよ。知っているから、協力しに来てくれたんですよね?」
「は?何て言いました?CM撮影?」
思わず和希のいる席に行って軽米に聞いている。
匠海は、智也に騙されたのだと気付いたのだった。
「智也が丸山さんと結婚式を挙げるからって言ってきたんだけど……どうして、そんな嘘を言ったんだろう?」
匠海が和希と軽米に聞いている時に、外崎の声が聞こえてきた。
「はい、OKでーす!解散して下さい。
皆様、ご協力をありがとうございました!」
「あっ、終わった……。あっ、さあ、私には分かりませんけど、この撮影に協力をしてもらいたかったのかしら?
すみません、私、勤務中なので行きます。和希さん、ちょっと通して下さい。すみません、ご協力ありがとうございました。
和希さん、よければロビーで待っていてくれれば……。じゃあ、行くね」
そう言って軽米は、スタッフがいる方に行ったのだった。
「聞いた?勤務中だって……驚いたな……。和希、外に出よう……」
「ああ、うん、出よう……」
匠海も和希も放心状態となっていた。
出ようと歩き出したチャペル内に、再び外崎の声が響く。
「では、これより両親の別撮りをします。
お二人とも、打ち合わせの通りにお願いします」
外崎が現場をびしっと仕切っている。
サクラとして協力をしてくれたホテルスタッフ達は、さっと左ドアの中へ入って消えたが、匠海と和希は入って来たドアの方から外へと出たのだった。
その後を智也が追いかけて、外へと出てきた。
「匠海、待って!」
「あー、お前、僕を騙したのか?
こんな嘘、酷過ぎだと思わないのか?」
匠海は、ブチ切れて文句を言った。
「ごめん、本当にごめんな。
2人とも会社を休んで来てくれたんだろう?本当にすまなかった。
正直に言うと、匠海が柚花のことをどう思っているのか、確かめようとしたんだ……ごめん」
「はあ?何だよそれ?
結婚すると聞いて、僕がどんな反応をするのか見ていたのか?
あー、腹が立つ!
仮に、もし、僕が丸山さんを奪いに来たとしたら、お前は、はい、どうぞ!って彼女を素直に渡す気でいたの?」
腹を立てて、喧嘩ごしの匠海が強い口調で言った。
「いや!いくら親友のお前でも、それは無理だ!
でも、お前が告白して柚花が、お前を選んだとしたら、祝福をする覚悟はあったよ……。
……で、告白をしたいと思ったの?」
智也が気になっていた事をズバリと聞いた。
「僕は、丸山さんのことを確かに好きだよ。でも、上手く言えないけど、愛情とは違う気がするんだ。
何て言えばいいのか……仲間意識というか、丸山さんは、偽妻をしてくれていたから、僕の妻という意識も少しはあったから、多少はムッときたこともあったけど……。
よくわからんが、とにかく、祝福をしにここへと来たんだぞ!」
智也の険しい表情が、少し緩んだようだ。
「それ本当なのか?信じるからな?
なら、俺、柚花を諦めないからな!」
智也が決意を口にした。
智也と匠海の会話を黙って聞いていた和希が話し始める。
「何?超モテモテ智也が、諦めない!なんて言うの初めてだよね。
お前に惚れない女はいないだろう?
匠海がどうのこうの言ったとしても、お前たちが両想いなら、関係ないだろう?」
そう言われて、智也の表情は曇ったのだった。
「……られた」
匠海と和希が「何て言った?」と聞き返した。
「俺、フラれたんだよっ!」
「えーーー、お前があ?フラれた?ってぇ、ま、まじでか?」
和希が驚いて言った。
「へえ、さすが僕の仮嫁さんだ。
ふっちゃうなんて、よくやった!偉い!
お前は、イケメン過ぎて、男の敵なんだからな!女の子を根こそぎ持っていくだろう?
世の中、男は うじゃうじゃいるのに、イケメンにばかり女の子が群がるのは、超不公平だ!
ああ、スッキリした!
お前、いい経験をしたんだぞ!
フラれる気持ちがわかったか?」
匠海の顔は、今一番、輝いている。
「うわぁ、なんかグサってくる事を言ってくれちゃうんだねぇ」
智也が項垂れて言った。
「こらっ、匠海、すっげえ意地の悪い顔をしているぞ!
その辺にしておいてやれよ。
まあ、お前を振る女性が現れるとは、びっくりだな。
それで、匠海に嘘を言って、気持ちを確かめようとしていたのか。
なるほどね……」
和希は、全てをわかったように言ったのだった。
(もしかしたら、丸山さんが匠海のことを好きかもしれないから、匠海の本当の気持ちを知りたかったのか)
「なんだよ、何がなるほどね なんだよ?」匠海は、じれったいと言うように聞いた。
「今の話を聞いた上で、丸山さんのことをどう思っているの?正直に言えよ」
和希が真剣な顔で聞くから、匠海も真剣な顔になる。
「さっき言った通りだよ。
それと、ぶっちゃけて言うと、同僚が結婚する時に、丸山さんが僕に、“今日なんて、新しい出逢いのチャンスの場です”なんて言ったからね。
正直、その時は、門前払いをされたような気分だった。
その後も、だめ押しのように、前に進めと言われたし……。
僕の事は、何とも思っていないから、安心しろよ」
匠海は、やや自虐ぎみに言ったのだった。
「……じゃあ、匠海、俺、柚花に独走して行ってもいいのか?ごめん……。
頑張った結果、嫌いと言われたら諦める。
その時は、2人とも やけ酒に付き合ってよ。
それにしても、今日、2人が来てくれたことが本当に嬉しいよ。俺を思って来てくれて、感動している。本当にありがとう。
友達って、有り難いな……。
このお詫びは、この後、お詫びの アワビをご馳走するから……許して下さい」
智也が心から謝っているのがわかった2人は、笑って言う。
「おう!アワビだな、約束だぞ。
ロビーで待っているからな」
和希が言うと、匠海も言う。
「黒アワビをご馳走になろうかな。
それで、許してあげよう。後でな」
2人は、癒しの小道を歩いて行き、智也はチャペルの中へと入って行ったのだった。
…………………
「どうしたの?なかなか戻らないから、何かあったのかなって……」
智也が中へ入ると、柚花が心配そうに聞いてきた。
「何もないよ!大丈夫だから」
智也がイケメンスマイルで答えたから、柚花はドキっとした。
……………………
「本日は、お疲れ様でした。
このCMが出来上がったら、お知らせしますから、試写会に来て下さいね。
と言っても、短いのでガッカリするかもしれませんけど。
で、御礼は後日させて頂きますので、少しお待ち下さいね」
柚花が言った。
倉田チーフと軽米も一緒に智也に挨拶をしているのだ。
「では、私は これで失礼いたします。
お疲れ様でした」
智也は、よそ行きモードで話した。
「倉田チーフ、西崎さんのお見送りをしてきます」
そう言って、柚花は智也と並んで歩いている。
「……ブーケ……家に持って帰ってくれるのかな?」
智也は、聞きにくそうに言ってきた。
「あーあれ、とっても可愛い花だった。
もちろん、持って帰りますよ。
作ってくれて、どうもありがとう」
「えっ?えっ?喜んでくれるの?
本当?嬉しいな。じゃあさ、じゃあさ、この前、買ってくれた揃いのマグカップを柚花の家に持って行っちゃダメ?」
「マグカップ?あっ、忘れてた!
ダメ!それは、自分の家に置いておいて下さい。
あっ、たっ君、折原さん、前沢さんも本日は、ご協力して頂きありがとうございました。
この御礼は、後日いたします。
では、私は失礼させて頂きます」
私がスタッフルームに戻ろうとしていると、軽米さんとすれ違った。
軽米さん、嬉しそうな顔をしているね。
前沢さんのことが好きなんだね。
頑張れ!
「 あっ!」
大切なブーケをしまい忘れていることに気がついた!
やばい!どこにある?
ウェディングドレスを脱いだのは、ブライズルームで、ブーケは確かテーブルの上に?
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