ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編

ハプニング!

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 いよいよ合同挙式 本番となり、ブライズルームにある2つの支度部屋では、花嫁支度の真っ最中。


 先に支度が終わった谷川御夫妻を軽米さんが写真撮影にお連れして、事は順調に進行している。


 そんな矢先に事が起きた!


 隣で支度を終えた吉野様の奥様がくしゃみ ひとつでギックリ腰になってしまったのだ!


 ひぃ!なんて事なの!どうしよう!


 奥様は、背中を前屈まえかがみにして、そのままの姿勢をキープしている状態だ。


「いたたた……まったく、情けない、よりにもよってこんな日に、ほんと情けない……。最悪です……」


 奥様は、涙目になっていた。


 想定外の事に、柚花はめちゃめちゃパニックなのだが、必死に平静を装っている。


 じっとりと脇に汗を感じるが、ひと呼吸をして電話をかけた。


外崎とのさきさん、湿布を持ってきて!」


 慌てて外崎が湿布を持ってきた。


「丸山さん!何事ですか?」


「吉野様がギックリ腰になってしまって!湿布をありがとう。ところで、柳沢様は、いらっしゃったかしら?もう、予約の時間になるのよ……」


 柚花は小声で外崎に話した。


 20代ご夫婦、向井様の奥様は、今さっき隣の支度部屋に入ったけど、もう1組の20代ご夫婦、私の元彼夫妻の奥様がいらしていない。


 ユキ……まさか、来ていないの?


「や、わかりません。あっ、そういえば、さっき倉田チーフがフロントから呼び出されていました。何かあったんですかね?」


「えっ?何かって……。じゃあ外崎さん、一応、ブライダルサロンを見てから下へ降りて、柳沢様を探して下さい。見つからなかったら、連絡をしてみて!お願いします」


 外崎は、すぐに隣にあるブライダルサロンへと向かった。


「吉野様、腰に湿布を貼りましょう。座った方が楽そうですか?」
   

 柚花が聞いた。


「座ったら、立てなくなりそうだから、このままで……。以前にもギックリ腰をやってしまって、癖になったのかも。すみません」


 柚花の問いかけに奥様がそう答えた。


「吉野様、挙式はどうなさいますか?
もうドレスをお脱ぎになりますか?」


 メイクをして、衣装を着せた吉田がズバリと聞いた。


「え?脱ぎません!せっかくドレスを着れたんですから!意地でも、何が何でも写真を撮って、挙式もします。皆さんには、ご迷惑をかけてしまいますが……すみません……」


 その言葉を聞いた吉田が、目を輝かせて言う。


「かしこまりました!では、御協力いたします。ねっ、丸山さん?」


「も、もちろんです!お客様のお式に最善を尽くす事が私の使命です。で、吉田さん、どうしましょうか?」


「じゃあ、吉野様は丸山さんの肩につかまって下さい。湿布を貼りますね。

それから、このコルセットをつけてみましょうか。多少は、腰の痛みが和らぐと思いますので……」


 吉田は、そう言ってドレスの上半身を脱がせ、テキパキと湿布を貼り、コルセットを付けて吉野様に聞く。


「苦しくありませんか?大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です……」


「では、丸山さんに捕まったままで、ここでお待ち下さい。すぐに戻ります」



 吉田がブライズルームから出て行ってしまったので、柚花は場をもたせることに必死になる。


「吉野様、確か、御主人様からこの挙式に参加をしようって、言われたんですよね?」


 柚花の両肩に手を置いて、至近距離で向かい合ったまま奥様も言葉を返す。


「そうなんです。私が“ちゃんとにプロポーズもされていないで結婚した!”って、文句を言ったら、ここの広告を出してきて……」


 奥様は、その時を思い出したのか、とてもいい笑顔で話している。


「ここに行って説明を聞こうか?って、それで……。“結婚して下さい!”って言ってくれたんです……。きゃっ、40代にもなって恥ずかしいな!」


 ほんのりと頬を染めている奥様は、とても若々しく可愛いかった。


 カラカラカラ……。


 音と共に吉田が現れ、息を切らして言う。


「お待たせしました!はぁ、はぁ……。く、車椅子に、の、乗って下さい!」


「えっ!この格好で車椅子に乗るんですか?恥ずかしいですよ!いえ、歩けますから」


 奥様が躊躇ためらった。



「座る時、降りる時には腰が痛むと思いますが、写真スタジオまでと会場までだけ、お乗り下さい。その方が楽だと思います。
時間もないので、どうぞ」


 息を切らせ、額にうっすら汗をかいている吉田の姿を見た奥様は、観念したように言う。


「わかりました。吉田さん、ありがとうございます。お願いします」


「では、押しますね。吉野様、御主人が廊下でお待ちになっていますよ。どうぞ素敵な一日をお過ごし下さい」


「はい。色々とありがとうございます……」


 吉野様は、涙ぐんだ。


 それに気づいた吉田は、奥様の目頭をコットンで軽く押さえて言う。


「や、まだ、泣いたらダメですよ。綺麗なお顔を御主人に見せて下さいね」


 廊下には、御主人と事情を聞いた野村が待っていたのだった。 


………………………


 それから柚花は、すぐに隣で支度をしている向井様の奥様の様子を見に行った。


「向井様、縦巻き髮が可愛いですね。
ティアラも良くお似合いです。
これから行く撮影スタジオにも美容師さんがいて、そこでベールをつけてもらって写真を撮りますよ。楽しみですね」


「丸山さん、ありがとう。なんだか夢を見ているみたい。10代で家を出て結婚して、お金なんて今も無いし、ウェディングドレスなんて一生着ることは無いって思っていたんだ。
なのに、旦那の親がここのチラシを持ってきて、あたしにドレスを着せてあげるよって……。本当に嬉しくて……」


 ああ、この企画を考えて良かった。

ホテル的には儲けはないけど、喜ぶ人がいるなら、実行した甲斐がある。


「本当に良かったですね。おめでとうございます。今日は、幸せを満喫して下さいね。では、次はメイクです。花嫁姿を楽しみにしていますから!では、また後で、失礼致します。吉田さん、メイクをお願いします」


 ヘア担当の松本さんと交代し、メイク担当の吉田さんが向井様の支度部屋に入ってきた。


 若干、まだ、呼吸を整えている最中ではあるようだ。


「は、はい。メイクと着付け担当をする吉田です。よろしくお願いします。

ドレスは、こちらのプリンセスラインドレスで間違いございませんか?」

…………………


 「丸山さん、柳沢様がいらしていませんが?
どうしたんですか?」


 ヘア担当の松本が辺りを見渡して言った。


「そうなんです。どうしたのかしら?
ちょうど柳沢様の予約時間だから、来ていてもいいはずなんですけど……」


 外崎さんがユキ達を探しに行っているはずなのに、このホテルに来ていないのかしら?


 ブルブルブルブル!


 あ、外崎さんからだ!


「えっ?」
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