ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編2

託された想い

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 智也は、赤いカーペットを踏まないように歩幅を広げ、チャペルの右端へ移動し一礼をした。


バージンロードは、花嫁の人生を表すものだと聞いているから、自分が最初に歩くわけにはいかない、と思ったからだ。


「おめでとう!」


智也は、一斉に祝福を受けた。


 待っていたのは、智也の両親、新郎親族とその友人たちで、入って右側の席にいて、智也の方を向き立っていた。


(わぁ。ここって、いつも冷んやりしていたのに。こんなに、あったかい場所だったんだな)


オレンジ色の明かりと、柔らかいステンドグラスの光と、心から祝ってくれる声に、寒さなんて吹き飛んだ。



籐籠とうかごをどうぞ」


 チャペルの中にいた倉田チーフから、長めの取っ手の付いた、浅い籐籠を受け取り、後ろ席にいる友人の元へと移動する。


すると、その席にいた友人2人も、席から出て、智也に寄っていく。


 その友人たちは、智也にそれぞれ1本のピンク色の薔薇を渡した。


「西崎、おめでとう。あー、先を越されたな!」


「本当だよな!ああ、やられたぁ。誰か紹介してくれよ」


「杉野、枝元、ありがとう!」


智也は、受け取った薔薇を籐籠に載せ、前の席に移動し、花を受け取る。


「智也、おめでとう。必ず丸山さんを幸せにしろよ!約束だぞ、信じているからな!」


智也は、1本のピンク色のガーベラを受け取った。


「匠海……ああ、約束する!」


 智也は、匠海の真剣な眼差しに、身が引き締まるのを感じた。


(匠海……。ありがとう!)


「へえ、そのグレーのタキシード、カッコいいじゃん!今日は、色々、参考にさせてもらうから。
智也、おめでとう!」


和希はそう言って、白いカスミ草を渡した。


その後、同じように友人、親族からも花を受け取った智也は、祭壇の下に用意したテーブルへ、籐籠を置いた。


テーブルには、リボンなどが置かれている。


「西崎さん、こちらが、新婦側ゲスト様からのお花でございます。どうぞ」


 倉田チーフから、花の束を渡された智也は、その重みを感じ、緊張と責任を改めて感じていた。


 そして、側にあるスタンドマイクの前に立ち、皆に告げる。


「えーと、皆さんから頂いたお花を、花嫁のブーケにしたいと思います。

今から、私が作成しますから、どうか見守っていて下さい」


「智也!しっかり作りなさい、頑張れ!」


「はいっ!」


(父さん、ありがとう。会社の恥にならないように、頑張ります)


智也は、あらかじめイメージしておいた形を思い浮かべ、手早く花をまとめてゆく。

…………………

 一方、チャペルの外にいる柚花は、両親と新婦親族、その友人と共にいた。


「柚……。ベールを下ろすよ……。
このベールの様に、お父さんとお母さんで柚を守ってきたけど、今度、このベールが上がった時から……。

その任務は終了なんだってね……。

はあ……。ぐしゅ、これからは、智也さんに任せて、やっと楽になれるよ。

幸せに……なりなさ……い。うう……」


「うん、うん、今まで……うっ、ありがと……」


 留袖着物を着た母親が、ベールダウンを行い、柚花が応えると父親も涙し、親族、友人たちは盛大に拍手をしたのだった。


「それではお寒いので、お母様、御親族、御友人の皆様はチャペル内へ、どうぞ!

こちら、左側の通路を通ってお席にいらして下さい。

先にお母様、御親族の方々、御友人の方々の順でお願い致します」


 緑川が速やかに、ゲストの移動を開始した。


 扉が開けられた時、チラリと見えたのは、チャペル正面奥で、ブーケを必死に作っている智也の姿だった。


 智也さんが頑張っている!


 そう思ったら、ずっと涙をこらえていた柚花は、込み上げてくるものを抑えられず、嗚咽おえつしてしまった。


「うっ、くっ、ひっく、っく……」


「ゆ、柚、お前、泣くなよ!
お前が泣けば、お父さんまで泣けてくるじゃないか。

はあ、式はこれからなんだし……。

げっ!柚、鼻、鼻が大変だぞ!
かるさん、拭いてあげて!」


「えっ?お軽さん?あ、私のこと?
えっ?わっ、丸山さん、鼻水があ!
ティッシュ、ティッシュ、はい……。
私、いつの間にか、お軽さんになった?」


柚花は、軽米からティッシュを受け取り、


「ふっうーん、ちーん!

……やだぁ、お父さんも氷柱つららが出てるよぉ。
軽米さん、ティッシュ渡してあげて」


父親にもティッシュを渡す。


「ふっうーん、ちーん!おお、スッキリした」


「……」


 軽米は、豪快な親子を目の前にして、一瞬固まった。


「はっ!ま、丸山さん、鼻の下が真っ赤です!
お化粧が凄いハゲハゲです!もう直す時間が無いですよ!

何で、そっと拭かなかったんですか!
もう、目の下も涙の跡があるし!
さっきの顔と違いますからね」


(まさかの親子で鼻水垂らし!
面白すぎるけど、笑ってはいけない)


「えー!マジかあ?はーあ」


「仕方がないな、柚、もう、諦めろ。
あるがままで行けよ。

こんな柚花でも、貰い手が見つかった。

智也君を大事にしろよ。
いつまでも、仲良くなっ!」


「うん……。わかったよ、お父さん。ひっく……」


「もう、また!
泣いたらダメです。
我慢をして下さい!」

…………………

 智也は、受け取ったピンクの薔薇と、ピンクのガーベラと、白いカスミ草を、丸みをつけるように束にして、それを白いリボンが巻き付けてある筒の中に、束になった茎を入れた。


その筒の上部に、作っておいた豪華な白いリボンを結び付け、ブーケを完成させたのだった。


下準備をしておいたため、わりと素早く仕上がり、倉田チーフと外崎がさっと後片付けをした。


「中、準備、OKです」


倉田チーフから連絡が入り、柚花と父親はゆっくりゆっくり、チャペルへと歩いて行く。


 初めて父親と腕を組んで歩くのは、気恥ずかしいけれど、もう、無い事かもしれないし、しっかり踏みしめて歩こう。


 柚花は、思い出に浸りながら、足を進める。


 お父さん、よく小さい頃に肩車をしてもらったね。


肩の上って、とっても高かったけど、お父さんが足を押さえてくれていたから、安心していたよ。


遠くの景色が見えて、嬉しかったことを忘れないからね。


 今まで、大切に育ててくれて、ありがとうございました。


 祭壇下で待っていた新郎へ柚花を託し、去ってゆく父親の背中が、小刻みに震えていたのを、智也は見ていた。


(お義父さん、柚花を大切にします)


「はい、これが花嫁さんへのブーケです。
どうぞ受け取って下さい」


「わあ、可愛い」


 全体に優しいピンク色の丸みのあるブーケを見て、柚花は微笑んだ。


 それから、神父による誓いの儀式等が終わり、いよいよイベントタイムがやってきた。


「さあ皆様、これより恒例のイベントとなります」


 それは、倉田チーフのアナウンスで、開始となった。
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