ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編2

輝く時。

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 倉田チーフと同じく、他スタッフも柚花も動揺する。


 この顔ぶれ……。


 間違ってない?


 そう思いながらも柚花は、前に出てきてくれた4人に笑顔を向けた。


 母方のお婆ちゃん……理解してるの?


 智也さん関係のお爺さん?


 智也さん関係の小学生?の女の子。


 貴方が救いです。原口さん……。


その時、司会者の声が会場に響く。


「選ばれた皆様、ようこそお越しくださいました!

これから、野口シェフによる ステーキフランベがございます。

そして、この場で焼かれたお肉を、カットいたしまして、一口ずつ召し上がって頂きます」


 すると原口を筆頭に、4人は喜ぶように拍手をした。


「喜んでいただいて、ありがとうございます。

ただ、しかし、なんです!

お肉の中に、1つだけマスタード付きの物があるのです。

そちらを食べた方は、当たりですが……。辛いです。

そうです、今から!ステーキロシアンルーレットをします!」


 原口は感嘆の声を上げたが、他3人は笑っている。


意味が分かっているのかは、不明だ。


 司会者は、マイクを手にインタビューを開始する。


「田野倉 八重 80歳。
柚花のおばあちゃんです。

あたしは、あのコックさん、知っています」


 お婆ちゃんは、明るく陽気で「あたしはね、老人会のイベントには、引っ張りだこだよ」って、元気な人だけど。


聞かれてもいない事を言い出した!


何、何を知ってるの、お婆ちゃん?


私、酔っ払って、野口の事を言ったことあった?


お願い、誤解を招く事は言わないで!


「あのコックさん、テレビに出てくる人でしょ?
実物の方が、いい男だねえ」


 祖母が言うと、野口は照れて下を向いたが、鼻の下が伸びていたのを、柚花は確認した。


 野口よ、喜んでいるところ悪いが、私のお婆ちゃんは、目が悪いんだよ。


お婆ちゃん、ここは智也さんを褒めて欲しい所なんです。お願いしますね。


 それにしても、なぜ このメンバーになったのか?


クイズのカードに、ロシアンルーレットに参加の有無と、辛い物が好きか嫌いかを、確認する項目があって、OKの人のカードだけを、箱に入れてあったはずなのに。


「田野倉 八重様、お肉にカラシが付いていても、食べられますか?」


「はい、食べられます」


 そのあとも、選ばれたゲストに確認をして、全員からOKをもらったので、皆、一応はホッとしたのだった。


(承諾してもらっても、だからと言って、老人と子どもに辛い物を食べさせるのは、この場ではNGよ。

もともとロシアンルーレットに参加予定の西崎さんに、食べてもらうしかないわね)


 倉田チーフは、迷いの無い顔で、野口に伝えた。


野口は、ニヤっと笑って頷いた。


とても悪い顔をしている。

…………………

 そして、野口のパフォーマンスが始まる。


ブランデーをかけ、豪快に立ち上がる炎にも、ビクともしない姿に、ゲスト達は惜しみない拍手と称賛を送った。


 野口は、焼き上がった肉を素早くカットして、スプーンにのせる。


1つのスプーンにだけ、マスタードが盛り付けてある。


それが当たりだ。


 野口は、マスタード付きスプーンにのっている肉を箸で、上からギュっと押した。


(これくらい、我慢して食えよ!)


 柚花は、野口の行動をチラチラと盗み見て、ギョッとした。


何で、あんなにマスタードをつけるの?


この状況からして、倉田チーフは智也さんに当ててもらうように、仕向けるつもりよね?


普通に考えて、お年寄りと子どもには食べさせられないもの。


……やる?私、やっちゃう?


 柚花が考えているうちに、準備が整った。


「あー!美味しい香りがしてまいりましたね。

さあ、お待ちかねの実食タイムです。

ここで、特別に新郎 智也さんにも参加をしていただきます。

では、智也さんからスプーンを選んでもらいましょう……」


「はい!わ、私が食べます!」


(丸山さん、よくぞ言ってくれました!空気を読んでくれて、ありがとう)
 

 倉田チーフは、柚花の心意気に感謝した。


「いいよ、私が食べるから!
大丈夫。紙エプロンもしているし、ちゃんとに、、大丈夫!冷めちゃうからさ……」


 そう言って、智也は、違和感のあるスプーンを取ろうとする。


実食をしようとする者たちの周囲には、ゲスト達とカメラマンが見守っている。


「あ、ず、ずるいですね。
ここは、ゲストから選ばせて下さい。

私が、それで……」


 手を伸ばし横取りをしたのは、ソフィア汽船社の原口だった。


誰もが驚いて彼を見ると、とても真剣な顔をしていた。


覚悟の顔、と言った方がよいだろう。


(はあ?嘘だろ?それは、コイツに食べさせようとしていたんだぞ!
マスタードの量がハンパないぞ!
やめておけ!)


 野口は、開いた口がふさがらない様子。


 一方、柚花も驚き、原口を凝視する。


えっ?原口さん、分かっているんですか?


もしかして、わざと当たりを引き受けてくれた?


感動です、ありがとうございます!


 感激をしている柚花よりも、更に感激をしている人がいた。


(ああ、原口さん、なんて貴方は、気遣いのプロなのでしょう!

そして、男らしいのですね……。

本当にありがとうございます。

なんとか、頑張って下さいね!)


 倉田チーフは、心の中で精一杯、応援をする。


「選ばれた皆様、用意はよろしいですか?では、実食!」


 ぱくっ!


「……うぐっ!……か、から、ゲホっ、ゲホっ……。ゴホッ、う、ゴホッ、うまい……」


 原口は、予想以上のマスタード量に苦しみ、涙を流しながらも、笑顔を取り繕った。


「まあ、ソフィア汽船社の原口様が、大当たりです!

原口様には、カレンダホテルのディナーお食事券がプレゼントされます。

おめでとうございました」


 涙を拭き拭き、席に戻ろうとする原口に、智也が礼を言う。


「わざと、当ててくれたんですよね?
助けてくれて、ありがとうございました。

もしかしたら、マスタードが……通常よりも多かったかもしれません。

きっと、私の身代わりになったのかも?
すみませんでした」


「いえ、わざとだなんて、偶然ですから、気にしないで下さい。

どうか、丸山さんと末永くお幸せに!」


そう言って、優しい笑顔で戻っていった。


(原口さん、なんて良い人だ……。

それにしても、野口、お前は、俺に嫌がらせをするつもりだったな?
許せないヤツ!)


 怒る智也をよそに、ゲスト達に野口人気が高まり、なかでも柚花祖母の八重は、暫く大絶賛をしていたのだった。

…………………

 柚花は、思い出してムッとする。


「あ、また、怒ってますね。
野口シェフは、平謝りしてくれたんだし、もう、許してあげて下さい」


「えっ?うん、許しているわよ。
でもね、なんかアイツを思い出すと、条件反射かな?こんな感じになっちゃう、気をつけます。

で、お料理はどんな感じでいく?」


 話しを本題に戻し、メモを取る。


「基本、和洋折衷がいいかと……。

ただ、せっかく和装になるし、鯛の塩釜開きをしたいなって、話しています」


「あー、小槌こづちで、叩くのね?なるほど。

じゃあ、その鯛でゲストに鯛茶漬けを振舞うのね?いいわね、いいわ。

和な感じだから、お餅つきもやる?」


「はい!それもいいかも。

和希さんと一緒に、ペッタンペッタン?
ゲストにも、お餅をついてもらって。
盛り上がりますよね?」


 軽米は、頬をピンクに染め、目をキラキラさせて話している。


軽米さん、今の貴女は、眩しいくらい輝いているわ。


と言うより、プランを組み上げてゆく時の花嫁さんの顔は、皆んな輝いている。


 あれしたい、これしたい!と思うだけでも、話すだけでも、それは幸せな時間だし、


制約のある中でも、より良くしようと考える姿は、男女問わずキラキラしている。


 私は、未来を想像し、創造してゆこうとする人を、見るのが好きだ。


理想と現実には、かなりのギャップがあるのは、当たり前だし、


思い通りにならないのも、当たり前。


 例えば、2人きりの挙式になったとしても、少しでも理想に近づけるように、一緒に考えてみる。


結果、ふたりの笑顔が貰えたら、それは最高の報酬なんだ。


 そして、担当した2人の子が、結婚をする時になって、再び、この私がプロデュースできたら……。


そんな夢を、密かに持っていたりする。


 だから私は、まだまだウェディングプランナーを辞められそうにない、かな?
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