ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編 3

自業自得

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 好意を持っている男性から"一生の伴侶になって欲しい!"と言われ、天にも昇る心地になった。


そして、その場の勢いに任せ、交際をOKしたのは、至極、当然の事のように思う。


 だが冷静になると、子持ちのバツイチ中年女性が独身中年男性と、結婚をしない関係をダラダラと、続けてしまってもいいのだろうか?と考えた。


 結婚生活にピリオドを打ち、必死の子育てもほぼ終わりで、これからが自分の自由時間となる今。


再び、結婚生活にチャレンジする勇気は、私には無い。


こんな我儘わがままに、彼を付き合わせることは出来ないし、彼には幸せになってもらいたいと思っているから、プロポーズも交際も、後日断った。


 それから我儘ついでに、親友になって欲しいと頼み込んで、強引に承諾してもらった。


彼は、私には勿体ないくらいの、素晴らしい男性だ。


彼がその気になれば、結婚相手もすぐに見つかるはずだろう。


 そんな事は百も承知だし。


 当たり前だし。


 分かり切っていることだった。

………………

「……チーフ、倉田チーフ?」


 只今、スタッフルームで、ミーティング中。


柚花が声を掛けたが、倉田チーフはうわの空。


(どうしたんだろう?)


「えっ?あ、はい、えーと、婚活イベントのことよね。ああ、はいはい。

昨日、総支配人に確認したところ、いい返事が貰えなくて……。

仕方が無いから、別案を考えましょう」


倉田チーフの表情が、沈んで見えた。


「え、ノリの良い支配人が反対したんですか?

あーあ、やっと自分の案が採用された、と思ったのに残念だな」


「外崎さん、あなたには秘められた力があるのだから、またアイデアをひねり出してみて!
期待しているわよ」


グッ!


倉田チーフは、外崎に向け握り拳を胸の位置まで上げて、エールを送った。


(出た!いつも通りの適当ぶし!
人をその気にさせるのが、上手いんだから)


「えっ、秘められた力が?僕に?知らなかったなぁ。

……はい、倉田チーフ、頑張ってみます!」


「ええ、その調子で頑張って。
野村さんも一緒に考えてみてね。

じゃあ、ミーティングは終わり。
西崎さんサロンに行きましょう」


 柚花と倉田チーフは、2階にあるブライダルサロンへと向かう。


「そうそう、本日夕方、軽米さんと前沢さんが打ち合わせにやって来ます。

倉田チーフも同席しますか?」


「あっ、そうだったわね。
ええと、17時の予定だわね。
あー、私も予定が入っているからダメね。
私の事は気にしないで、好きに決めなさい」


「では、お言葉に甘えて。
バッチリ社割を使って、豪華絢爛ごうかけんらんにさせて頂きます!」


「うぐっ。仕方あるまい、西崎さんの好きにしなさいっ。アハハハハ……。はーぁ」


(何だ、倉田チーフ、元気みたい。良かった)


 日暮れて、打ち合わせが終わった倉田チーフが席を立つ。


隣では、柚花と軽米と前沢が打ち合わせをしていた。


「前沢さん、大切な2人の婚礼式ですから、御自分の意見も、この際はっきりと伝えて下さいね。

それでは、お先に失礼します。
西崎さん、後はお願いします。
じゃあ、軽米さん、明日ね」


「お疲れ様でしたぁ」


3人は、声を揃えて倉田チーフを見送った。


「相変わらず、倉田チーフは若々しいよな。
18歳にもなる子どもがいる様には、見えないよ!」


「ねっ、ホント若いでしょ。
気持ちも若いから、見た目にも表れるのかも?
和希さん、私も若くいられるように、頑張ります!」


「うん、アヤなら、きっと大丈夫だぞ」


(んふふ、仲が良くて何よりだわ)


 柚花は、ニヤけている自分の頬を手で押し上げ、真面目な顔を作りながら言う。


「ストップ。そういうのは、自宅でお願いします。さあ、続きを話しましょう」


 その後、3人は有意義な時を過ごしたのだった。
…………………

 一方、倉田チーフは、足取り重く電車に乗り込み、座席に座る。


和希が言っていた若々しさは、どこにも見られない様子だ。


ふう。


彼女はひと息つき、眠るかのように下を向く。


 正面の席から、視線を送る者がいる事にも、まるで気がつかない。


やがて、駅のアナウンスに頭を上げ、ゆらりと立ち上がり、無表情のまま降りて行ったのだ。


人混みの中、彼女はボーッとしているのか、他人とぶつかりぶつかり、改札を出て行く。


 彼女を追いかけ、手を伸ばす。


「……さん」


 彼女は腕を掴まれ、振り返った。


「うん?あ、真澄……って、あ?えっ?えー?」

………………
 

「お母さん、人にぶつかりまくりだったでしょ?
具合が悪い……の?
って、えっ?何?」


 母親の腕を掴んでいた娘は、自分の横にいる人物に気づいた。


「えっ?お母さんの知り合い?」


「は、原口さんっ!どうしてここに?」


 脱力感漂っていた彼女から、目を見開き、カレンダホテルの倉田チーフにシフトチェンジした瞬間だ。


「どうして?いや、どうしてかな?
電車の中で倉田さんを見かけて、いつもと感じが違うなって……。

気になってたら、乗り越しちゃいまして……。

でも、まあ、娘さん?がいるなら、大丈夫ですね。
じゃあ、これで、失礼します」


 倉田チーフは、赤面する。


「まあ、それは心配をさせてしまい、すみませんでした!
ご迷惑をお掛け致しました!
本当にすみません。ありがとうございました」


 そう言って、お辞儀をする。


(うわっ、ボーッとしていたのを見られていたなんて!恥ずかし過ぎるわ)


「うちの母が、すみませんでした。
これからも、どうぞ母を宜しくお願いします。

お母さん、あたし、帰るから。
この方と、ゆっくりご飯でも食べて来てね。
では、さようなら」


 娘は、ニヤッと笑って去って行ったのだった。


(もう、あの子ったら、誤解してる!
ホントにもう!困ったものね)


「……娘が勝手な事を言って、すみません。
あの、原口さん、会社帰りですか?
マイカー通勤って聞いていたような?」


「ああ、今日は電車に乗って、旅行会社めぐりだったのです。

営業終わりで、自宅へ直帰のところです」


(お疲れのところ、寄り道をさせてしまって、お茶も出さないなんて、悪いわよね?)


「あ、もし、よければ、そこのカフェでも行きませんか?
是非、ご馳走させて下さい」


「いえいえ、そんなに気を遣わなくていいですよ。早く帰って休んで下さい。
また、改めて、私から誘いますから。
じゃあ、帰りますね」


 そう答えた原口は、颯爽さっそうと改札口へ向かう。


「原口さん、ありがとう」


 後ろ姿に感謝をしたあと、暫し、物思いにふける。


(落ち込んでいたら、ダメだわ!
娘にも心配をかけちゃうしね。

明日、根岸君に会ったら、心から恋の応援をしてあげよう。

でも、ひと言だけ言いたい)


「根岸君のバカぁ……」


(ふふふ、バカは私。
大馬鹿者は私。

これを望んでいたのが、この私。
喜ぶべきことなのに。

まったく、私ったら、情け無いっ!
もう、アホらしくなってきた!)


 倉田チーフは、ポケットから携帯電話を取り出し、ただ耳にあてる。


「よーし!じゃんじゃん仕事をするわよぉ。
根岸君の婚礼式は、ドーンと任せなさい!
この私が、担当してあげるわよ!
はっはっは」


 そう言うと、スッキリとした顔になった。
 

(よしっ!きっと、明日は元気だ!

結婚をしなくても、これからも恋はするわよ。

新しい恋よ来い!いらっしゃいませー!

……うん、帰ろう)


 倉田チーフは、変な気合を入れて、家に向かって走り出したのだった。
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