ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編 3

まさかは、突然に!

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 それは、ある日の昼前のこと。


「西崎さん、西崎さん、にし……。
柚花さん、どうしました?
具合が悪いですか?」


 ブライダルサロンで、ドレスのチェックしているはずの柚花がしゃがんでいた。


「え?……あれ軽米さん。
いつの間にか居たのね……。
具合?
あ、うん、大丈夫。
ちょっと考え事をしていたら、脱力しちゃって……」


だるそうに立ち上がる柚花を見て、一層心配になった軽米は、抱えていた白い箱を椅子に置き駆け寄った。


「考え事って?
何かあったんですか?

あっ!
もしかして、夫婦喧嘩をしたとか?」


「ううん、違うの。
昨夜、西崎家に呼ばれてね……。
はあ……」


 そう言って、溜息混じりに再びしゃがみ込んだ。


「えっ、西崎さん、ちょっと大丈夫ですか?

はっ、まさか!

もしかして、二世帯住宅構想の本格化!とかですか?」


 全身に負のオーラをまとった柚花は、壁に手を当て立ち上がり頷いた。


「えー!そうなんですかぁ。
それは、微妙な気分になりますね。

……だいたいパートナーとの生活だって、好みの違いとかで、何かと揉めたりするのに!

その上、その家族の側で暮らすなんて、気苦労するのが目に見えますもの!
ゾッとしちゃいますよっ!ねっ?」


(あれ、軽米さん、どうしたどうした?
前沢さんと同棲を始めて、上手くいってないの?)


「軽米さん、心配させてしまってごめんね。

覚悟はしていたけど、やっぱり現実味が増すと、少しショックを受けちゃったみたいで……。

でも、軽米さんに気持ちを分かってもらえただけで、元気になったわ。

ありがとう。

さて、仕事、仕事に戻らなくっちゃね」


「そうですか?ならいいですけど?

そうだ、気晴らしに今日のランチは、下のレストランに行きません?」


「えっ?軽米さん、節約をしているのに、社食じゃなくてレストランでいいの?
ワンコインじゃ無理なのに?」


「はい。マイホーム資金のために節約をするのが、嫌になってきちゃいました。
今日は、贅沢をしたい気分なんです」


 軽く両脚を開き、腕組みをした軽米は、口を真一文字に結び、鼻から息を吐いた。


(あらら、軽米さんにマズイ姿を見せちゃったよね……。

悪影響を与えちゃったかな。

なんかマリッジブルーの兆しかも?

今は、結婚に夢を持たせないといけない時期なのに。

あー、私、しくじったな。
とにかく、話題を変えないと)


「そっか、そういうことなら、いいわよ。
ランチに行きましょう。
ところで、その白い箱は何?」


「あっ、これはドレスメーカーさんから届いた新作のミニチュアドレスです。
これから、ドールちゃんに着せてみます」


 軽米は、ビスクドールが置いてあるカウンターに箱を運び、中からミニチュアドレスを取り出して見せた。


「わぁ、ペールピンクのプリンセスラインドレスだね。可愛い!

あ、これって、そこに掛けてあるやつと同じ!

すっごい、小さくてもレンタルドレスに負けてない!

たっぷりのチュールスカートで、ボリューム感あるわ。へぇ。

……じゃあ、私、戻るから。
可愛く着付けてあげてね」


「はーい」


(よかった、軽米さん平常心に戻ってくれたみたい)

…………………
 
 柚花がスタッフルームに戻ると、倉田チーフが私服に着替えていた。


「あら?倉田チーフ、どこかへお出掛けですか?」


 柚花は、不思議そうな顔をした。
 

「は?新商品の展示会に行くのよ?

やだ西崎さん、ミーティングの時、話したはずでしょ。

セレモニーの演出に使えそうな物とか、斬新な引き出物とかを発掘してくるわね。

あ、そうだバス移動だから、もしかしたら、帰りが遅くなってしまうかもしれない。

その時は、連絡をしますから。

西崎さん、野村さん、後はよろしくお願いします。
軽米さんにも声を掛けて行くわね。

行ってきまーす」


「はい、良い物を発掘してきて下さい。
行ってらっしゃーい」


(展示会か、私も行きたかったな。
色んな物があるから、見ていて楽しいんだよね。

倉田チーフってば、何気にウキウキ感があったな。
お菓子とかの試食もあるし、試飲もあるし、サンプルも貰えるし、そりゃあ楽しい所だものね。

そう言えば、軽米さんも、めちゃくちゃ行きたがっていたな)


「西崎さん、倉田チーフは、ノリノリで行きましたね」


「そうだね。他企業の方もいるし、もしかしたら新たなビジネスチャンスがあるかもしれないから、ワクワクしているのかもね」


「あっ、そうですよね。
西崎さんだって、船会社の原口さんと知り合ったのも、この新商品の展示会でしたね。

そっかあ、今度は私も行きたいです。
私、仕事に生きると決めたので、手柄が欲しいです」


 野村は、決意を言葉にした。


今のところ、本気の思いなのだろう。


(そうかそうか、恋を諦め仕事に燃えるつもりなのね。
わかるよ、その気持ち、私だって同じだったし)


「そっかあ、仕事に生きるのも悪くないと思うよ。

まっ、力まないで自然体でいれば、おのずと道は開けるからね。

そんなに仕事命って、線引きをしないで頑張って!」


 野村は、返事の代わりに首を傾け笑顔を見せて、パソコン作業を始めた。


(……野村さん、もしや頑固者?大失恋でもしたのかしら?

まあ、人それぞれ考えが違うしね。

結婚をしないのも有り!なんだけど。

……けど、軽米さん。
ここへ来てキャンセルは、やめて下さいよ。

何か嫌な予感がする……)


 それから程なくして、柚花と軽米はレストランに来ていた。


昼時をずらしているから、割と空いている。


2人は、観葉植物で目隠しされた席に座り、店内の静けさに合わせて、声を潜めて話す。


 だが、聞き捨てならない事を言われた気がして、思わず声のボリュームが上がった。


「えっ?なんて言ったの?」


「結婚したくないです……」


「…………」


(ひゃあ!ヤバい、ヤバいぞ!
何てこったーーー!)
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