ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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番外編 3

元気ですか?

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 倉田チーフは、手帳型の名刺ホルダーを確認している。


「あった!この人だわ」


「やっぱり電話の相手に、会ったことがあったんですか?」


「ええ野村さん、そうだったわ。

この名刺、確か、展示会の時に頂いたものだから。
きっと、会話をしたはずね」


(あの日、いろんな方と名刺交換をしたから、顔が把握しきれないけれど、多分、美形のあの人かしら?)


「それで、リゾート会社とコラボ企画でもするんですか?」 


「いえ、まだ、その段階の話しではないのよ。
うちの営業部門との、橋渡しを頼まれただけだから。
先方は、宿泊に関係する事を望んでいるのかも」


「あー、そうなんですか、ちょっと残念。
コラボ企画だったら、私が担当したかったです」


「あら、そうだったの。
でも、まあ、どんな企画になるかわからないし。

もしかしたら、こちらも関係してくるかもしれないでしょ?
その時は、やる気のある野村さんに任せますからね」


「はい!是非、お願いします!」


 野村がやる気をアピールすればする程、無理をしている気がして、倉田チーフは心配になってきていた。


「あのね、野村さん、何かあったの?
以前から、結婚はしない!とか言っているし。
良ければ、私に話してみなさい」


「いえ、何も無いです。
ただ倉田チーフの様に、バリバリ仕事が出来る女になりたいだけです!」


そう言って、キリリとした顔で、パソコン作業を始めた。


「あら。あらあら、そう?
もう、野村さんったら、嬉しい事を言ってくれるわね。

あっ、そうだ。
西崎さんだけど、軽米さんの前撮りに同行してしまって、今、留守です」


「えっ、軽米さんの思い出の神社にくっついて?
ロケーションは、時間が掛かるのに。

分かりました、ご安心ください。
来た仕事は、ぜーんぶ私が受けます!」


「ふふっ、これは頼もしい。
じゃあ、営業部に行ってくるから、後はお願いします」


倉田チーフは、にっこり笑顔でブライダルサロンから出て行った。


(野村さん、仕事にやり甲斐を感じているのなら、それでいいわ。
そうよ、たくわえさえあれば、独り身だって、老後も何とかなるはず!
頑張れ野村さん!頑張れ私も!)
……………

 昼下がりになり、ブライダルサロンの中をキョロキョロと覗いている倉田チーフの姿があった。


気づいた柚花は、仕事の手を止め声を掛ける。


「倉田チーフ、どうかしましたか?」


「野村さんを探しているんだけど……。
休憩中だから、外に出ているのかしらね」


「はい、そうみたいですね。
急ぎですか?
電話をしましょうか?」


「あっ、いいの、いいの。
後でいいし。
さてと、西崎さんはタップリと休憩を取ったことだし、私も休憩に入っちゃうわね」


「はいっ、ごゆっくりどうぞ」


 柚花は、軽米の前撮りに勝手に付き添い、手伝っていたのだ。


そして、帰りの車中、食べられない花嫁のかたわらで、サンドイッチをしょくしてきたのだった。


 倉田チーフは、ランチバックを持ち、屋上ガーデンへと向かった。


このところ、ここでお弁当を食べる事がマイブームとなっている。


チェックインの時間にはまだ早く、連泊のお客さん以外は、訪れる人はいない為ひと気が少なく、ホッとできる場所になっているのだ。


(今日は、林の方側に座ろうかしら。

……おっ、先客がいる!
裏側に行こうかな……。
あっ、あれ?野村さん?)


 野村は、景色を見る事なく、白い鉄柵に背を向け、寄り掛かるようにして体育座りをしていた。


丁度探していたので、速攻、声をかけようとすると、野村は項垂れる様に顔を膝に沈めてしまった。


(えっ、何、暗い感じ!
まさか泣いてる?
やだ、どうしたの?
これは、声をかけるべき?
いや、そっとしておく?
でも、ここは屋上だし。
思い詰めていたら、ヤバいし……)


「の、の、野村さーん」


(やっぱり 放っておけないでしょ)


 ハッとした野村は、倉田チーフの声で、サッと立ち上がった。


「はーい」


(なんだ、泣いてはいなかったようね。
良かった、良かった)


「こんな所に直に座ったら、お尻が冷えて痔になっちゃうわよ。

あっ、そうそう。
常夏リゾートさんの件だけど、うちの営業マンと先方とで会うことになったわ。

それで、野村さんにも同席してもらおうと思って。どうかしら?」


「私がですか?
倉田チーフは、行かないんですか?」


「その日は、新作ドレスのファッションショーに行く予定があるから。
代わりに、貴女が行ってきなさい。
何とか婚礼に結びつけれるように、営業をしてきて下さいね」


「はい!わかりました、頑張ります!
あ、もう時間なので、お先に戻ります」


「あー、ちょっと、野村さん……。
だ、大丈夫?えっと、た、体調でも悪い?」


「え、どうしてですか?元気ですよ。
じゃあ、お先です」


そう言って野村は、逃げるように立ち去った。


(うーん、悩み事でもあるのかな?
まあ、悩みが無い人なんているわけないか)


 その時、ポケットのスマホが振動した。


「原口さんから、メッセージだぁ」

……………

ちょんちょん。


 誰かの指が私の肩に触れたから、ドキンとした。


「えっ?

なーんだ、根岸君かあ」


「何、ニヤついてお弁当を食べているんですか?」


「えー、そんな事ないわよ。
我ながら、私のお弁当は、美味しいなって思ってたの。

そう言う、貴方こそニヤついているじゃない?
何かいい事でもあったの?」


「いや、特に無いが。
朝、君から教えてもらったから……。
せっかくだし誘ってみたら、返事がきた」


「へえ……。
ぶっ、ふっふっふっ。
いい歳した男なのに、何だか……」 


(子どもみたいと言うのは、やめておこう。
あー根岸君、可愛いね……)


「ふん、放っといてくれ!
侮辱した罰だ、この卵焼きを頂く!」


 そう言って、支配人がお弁当箱から、倉田チーフ作の卵焼きを摘んで食べた。


「お、うまっ!美味いなあ。
これ、無限に食べていられるなぁ。

こんなに料理上手なのに、本当にアイツは馬鹿だよ……。

あっ、ごめん、今のは無しね」


「こらっ、根岸君!

大昔の事だし、今更、言わないでいいわよ。

でも、料理上手と言ってくれて、ありがとう。
ちょっと自信ついちゃった」


(……あの人も卵焼きを褒めてくれたのよね。
……元気でいるかな?

はっ!過去を振り返るな!
ダメ、ダメ、今を大事に生きるんだ。
頭の中を切り替えよう!

原、原口さんは、甘い卵焼き派かな、塩味派かな?

大丈夫、私、どっちも得意ですから!)


「あっ、また、ニヤついてるぞ!」


「やーね。これが通常の顔なのよ。
ところで、私に何か御用ですか?」


 支配人は、恥ずかしそうに話しを切り出す。


「えーと、私は、お洒落な服を持っていなくて、ほら、スーツばかりだから……。
誰かに選んで欲しいと思って。
例えば、若い感覚が分かる人とかにね」


「……若い感覚?と言うことは、私では無いってこと?
なるほど、緑川さん、外崎さん、野村さんあたりに選んで欲しいと?」


「はい、その通りです。
近いうちに、できれば早急に。
一緒に選んでもらえればと思いまして。
可能なら、休憩時間を合わせますから、頼んでもらえますか?」


「私が選んであげるのに」


「いえ、若い感覚でお願いします」


「何かムカつくけど。
はいはい、分かりました。
何かご馳走してあげて下さいね」


支配人は、喜んで何度も頷いたのだった。
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