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番外編 3
ディナークルーズ
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「乾杯!」
私は今、クルーズ船、ブルースノーの船内にいる。
豪華客船キャプテンソフィア号よりは、小さい船だが新しい。
見上げれば、煌びやかなガラスの照明から柔らかい光が放たれ、窓の枠には装飾があり、キラキラした海を切り取る額縁の様になっていた。
そして、花が飾られたテーブルを挟んで、目の前には原口さん……。
ワイングラスの中身は、互いにブドウのジュースだ。
そう私は、約束をしていた敵陣視察をしているのだ。
「原口さん、車で送ってくれるということで、ワインを飲めませんね。
我慢をさせてしまい、すみません」
「いえいえ。
コレ、とても美味しいですね」
「ええ、そうですね。
でも私、この味、知っている感じなんです。
うちのホテルも仕入れているのかしら?
新商品展示会にあった物と同じかもしれません」
「そうなんですか?
帰ったら資料を見てみます。
さて、お料理を取りに行きましょうか」
「はい。
あ、随分と空いていますね、お料理、取り放題でラッキーです。
あら?原口さん、他のお客様がどんどん上に行きますよ。
何かあるのかしら?」
「ああ、多分、夕日を見るためだと思います。
サンセットクルーズは、人気ですから。
倉田さんも見たいですか?」
(見たいですか?と聞かれたら、見たいですけど。
若いカップル達ばかりで、浮いた存在になる気もするし)
私が曖昧な表情をしていると、原口さんが立ち上がって、行こうと誘ってくれた。
デッキに出た途端、顔にオレンジ色の光が飛び込んできた。
「眩しい!」
手をかざして夕日の方向を見ると、どのカップル達も、仲良く寄り添って眺めている。
(やっぱり若いカップルばかりね……。
でも、とっても綺麗だわ。
そうだ、夕日に願い事をしたら叶うかしら?)
そんな事をふと思い、両手を合わせた。
(どうか原口さんが、気を悪くしませんように!)
「ちょうど沈む前の、いいタイミングでしたね。
今日が良い天気で良かった……。
倉田さん?
夕日に願い事をしていたんですか?」
「あ……。
つい、初日の出の感覚と同じになってしまいました。
あまりに綺麗な夕日だったので……。
……ここは、混み合っていますね」
「わ、風が冷たいな。
中に戻りましょうか?」
………………
「原口さん、このロールキャベツ、美味しそうですよ」
お皿を持って、並んで料理をチェックする。
「トマトソース味では無いんですね。
見た目、コンソメ味かな?
あと、そのサーモンムニエルが気になります。
倉田さん、どんどん食べましょう!」
「あ、はい。味見はお任せ下さい」
大皿てんこ盛りにして席に戻ると、ピアノの生演奏が始まった。
「あら、しっとりとしたピアノ演奏……。
ふふふ、原口さんも弾けますよね」
「あっ、思い出しちゃいました?
何とかさんの羊を……。
恥ずかしいから、忘れて下さい。
あの時は、必死で弾いていたんですから!」
「ふふふ、すみません。
でも、本当に原口さんには、救って頂きました。
スタッフ一同、感謝をしております。
ですので、本日は微力ながら私が、精一杯お手伝いをさせていただきます」
「ハハハ、やめて下さいね。
普通に食事を楽しみましょう。
ところで、ムニエルには何をかけますか?」
「えっ、かける?ムニエルに?
えーと、タルタルソースですが。
それが、何か?」
「やっぱり普通はそうですよね。
私は、少数派なんでしょう。
醤油をほんの少しかけます。
要するに、バター醤油味にするんです」
「えっ、醤油?
あっ、じゃあ私も、これにかけて試してみようかしら。
……うん、悪くはないですね。
ご飯が欲しくなりました」
「そう、そうなんです、白飯にぴったりなんです。
わかってくれて、嬉しいです!」
(原口さん、こんな事で喜んじゃって可愛い!
視察だなんて言っているけど、デートみたいで楽しいんですけど。
あっ、ダメダメ、原口さんは仕事のつもりなんだから!
し、仕事……。そうだ、言わないといけないわよね)
「原口さん!ごめんなさい」
突然、私が謝り出したから、原口さんはキョトンとしている。
それは当然だろう。
「えっ?何ですか」
「この船の系列会社は、常夏リゾート社だったんですね。
私、知らなくて。
私が縁結びをしちゃった感じで。
今、カレンダホテルとの協力企画が進行中なんです」
「なんだ、そんな事ですか。
それはビジネスなんですから、仕方がありません。
うちだって、負けませんから大丈夫です。
いきなり謝るから、驚きましたよ。
てっきり、拒絶されたかと……」
「はぁ。
原口さんが怒らないで良かったです。
常夏リゾートさんと知り合ったのは、新商品展示会だったんです。
すっごい美形の方ですけど、会いませんでしたか?」
「常夏リゾートさんの方とは、名刺交換をしていないですから分かりません。
ホッとしたら、また食欲が出てきました。
ムニエルのおかわりに行ってきます」
(サーモンムニエルが好物なのね。
しかも、バター醤油味が好き。
覚えておこう!)
私は、そんな事を考えながら、目は原口さんを追っていた。
「うん?」
私は、思わず立ち上がった。
私は今、クルーズ船、ブルースノーの船内にいる。
豪華客船キャプテンソフィア号よりは、小さい船だが新しい。
見上げれば、煌びやかなガラスの照明から柔らかい光が放たれ、窓の枠には装飾があり、キラキラした海を切り取る額縁の様になっていた。
そして、花が飾られたテーブルを挟んで、目の前には原口さん……。
ワイングラスの中身は、互いにブドウのジュースだ。
そう私は、約束をしていた敵陣視察をしているのだ。
「原口さん、車で送ってくれるということで、ワインを飲めませんね。
我慢をさせてしまい、すみません」
「いえいえ。
コレ、とても美味しいですね」
「ええ、そうですね。
でも私、この味、知っている感じなんです。
うちのホテルも仕入れているのかしら?
新商品展示会にあった物と同じかもしれません」
「そうなんですか?
帰ったら資料を見てみます。
さて、お料理を取りに行きましょうか」
「はい。
あ、随分と空いていますね、お料理、取り放題でラッキーです。
あら?原口さん、他のお客様がどんどん上に行きますよ。
何かあるのかしら?」
「ああ、多分、夕日を見るためだと思います。
サンセットクルーズは、人気ですから。
倉田さんも見たいですか?」
(見たいですか?と聞かれたら、見たいですけど。
若いカップル達ばかりで、浮いた存在になる気もするし)
私が曖昧な表情をしていると、原口さんが立ち上がって、行こうと誘ってくれた。
デッキに出た途端、顔にオレンジ色の光が飛び込んできた。
「眩しい!」
手をかざして夕日の方向を見ると、どのカップル達も、仲良く寄り添って眺めている。
(やっぱり若いカップルばかりね……。
でも、とっても綺麗だわ。
そうだ、夕日に願い事をしたら叶うかしら?)
そんな事をふと思い、両手を合わせた。
(どうか原口さんが、気を悪くしませんように!)
「ちょうど沈む前の、いいタイミングでしたね。
今日が良い天気で良かった……。
倉田さん?
夕日に願い事をしていたんですか?」
「あ……。
つい、初日の出の感覚と同じになってしまいました。
あまりに綺麗な夕日だったので……。
……ここは、混み合っていますね」
「わ、風が冷たいな。
中に戻りましょうか?」
………………
「原口さん、このロールキャベツ、美味しそうですよ」
お皿を持って、並んで料理をチェックする。
「トマトソース味では無いんですね。
見た目、コンソメ味かな?
あと、そのサーモンムニエルが気になります。
倉田さん、どんどん食べましょう!」
「あ、はい。味見はお任せ下さい」
大皿てんこ盛りにして席に戻ると、ピアノの生演奏が始まった。
「あら、しっとりとしたピアノ演奏……。
ふふふ、原口さんも弾けますよね」
「あっ、思い出しちゃいました?
何とかさんの羊を……。
恥ずかしいから、忘れて下さい。
あの時は、必死で弾いていたんですから!」
「ふふふ、すみません。
でも、本当に原口さんには、救って頂きました。
スタッフ一同、感謝をしております。
ですので、本日は微力ながら私が、精一杯お手伝いをさせていただきます」
「ハハハ、やめて下さいね。
普通に食事を楽しみましょう。
ところで、ムニエルには何をかけますか?」
「えっ、かける?ムニエルに?
えーと、タルタルソースですが。
それが、何か?」
「やっぱり普通はそうですよね。
私は、少数派なんでしょう。
醤油をほんの少しかけます。
要するに、バター醤油味にするんです」
「えっ、醤油?
あっ、じゃあ私も、これにかけて試してみようかしら。
……うん、悪くはないですね。
ご飯が欲しくなりました」
「そう、そうなんです、白飯にぴったりなんです。
わかってくれて、嬉しいです!」
(原口さん、こんな事で喜んじゃって可愛い!
視察だなんて言っているけど、デートみたいで楽しいんですけど。
あっ、ダメダメ、原口さんは仕事のつもりなんだから!
し、仕事……。そうだ、言わないといけないわよね)
「原口さん!ごめんなさい」
突然、私が謝り出したから、原口さんはキョトンとしている。
それは当然だろう。
「えっ?何ですか」
「この船の系列会社は、常夏リゾート社だったんですね。
私、知らなくて。
私が縁結びをしちゃった感じで。
今、カレンダホテルとの協力企画が進行中なんです」
「なんだ、そんな事ですか。
それはビジネスなんですから、仕方がありません。
うちだって、負けませんから大丈夫です。
いきなり謝るから、驚きましたよ。
てっきり、拒絶されたかと……」
「はぁ。
原口さんが怒らないで良かったです。
常夏リゾートさんと知り合ったのは、新商品展示会だったんです。
すっごい美形の方ですけど、会いませんでしたか?」
「常夏リゾートさんの方とは、名刺交換をしていないですから分かりません。
ホッとしたら、また食欲が出てきました。
ムニエルのおかわりに行ってきます」
(サーモンムニエルが好物なのね。
しかも、バター醤油味が好き。
覚えておこう!)
私は、そんな事を考えながら、目は原口さんを追っていた。
「うん?」
私は、思わず立ち上がった。
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