あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第3章 その兄弟喧嘩、本当に必要ですか?

第36話 自縄自縛

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 もともとエーリックの方が被害者であって、彼に何ら臆するところは無い。
 怒りに任せず冷静に対応するところはウェルシェとしてはポイントが高い。

 やはりケヴィンのような訳の分からない生き物より、エーリックの方が万倍も良いとウェルシェは心の中で改めて再確認した。

「それに王家を軽んじる発言もあって抗議していたところです」
「なに?」

 エーリックに自分の側近を非難されてオーウェンは顔を険しくする。

「誤解です。決して私は王家に反意はありません」

 そこにケヴィンが直答を許されていないないのに口を挟んできた。

 この行為もそうだが、エーリックを無視してウェルシェを口説くのは王家を軽んじる行為であると認識していないらしい。

「私はただエーリック殿下が権力を使って不当に愛し合う者達を引き裂く無体を嘆いたに過ぎません」

 その発言こそ王家への不満と同じだと言うのに……つまりはケヴィンにとってエーリックは王家の一員ではないのだ。

「待ってください。先程からウェルシェはずっとケヴィン先輩に好意を寄せてはいないと言っているではないですか」

 エーリックの言葉にウェルシェはうんうんと頷く。ケヴィンのような支離滅裂な男を好きになる要素はウェルシェにはミジンコ程もないのだ。

「そうやって権力で以て私のウェルシェに虚偽を言わせるなど見苦しいですよ」

 誰がお前のだ!!!と心の中で絶叫するウェルシェであったが、王族同士の会話に口を挟むわけにもいかない。

 だから先程からウェルシェは口を噤んでいたのだが……

(オーウェン殿下の側近方が礼を欠いて口出ししているし……私も直答して良いのかしら?)

 だが、エーリックの歓心を買う為におっとりとした淑女を演じている以上、ウェルシェは迂闊に意見も言えない。

(うううっ、もどかしい)

 自分で己に課した設定のせいでウェルシェは身動きが取れない。完全なる自縄自縛、自業自得、因果応報である。

 こんなウェルシェをカミラが見たら「ほら見たことか」と笑うか呆れるかのどちらかだろう。

「いい加減な事を言わないでください!」
「君達二人の仲が悪いとアイリスから聞いている」
「僕とウェルシェは良好な関係を築いていますし、この婚約は王家とグロラッハ侯爵家の契約でもあるんですよ」
「ほら、そうやってすぐに王家の権力を盾にする」
「ケヴィン先輩、あなたという人は!」

 温厚なエーリックが珍しく声を荒げたが、それも無理はないだろう。それほどケヴィンは無礼を働いているのだから。

 その時――

「そこまでにしろ」

 それまで黙っていたオーウェンが言い争うエーリックとケヴィンの間に割って入ってきたのだった。
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