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第5章 そのお茶会、本当に必要ですか?
第57話 踊る愚か者
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(あれがケイト・セギュル侯爵夫人ね)
シキン伯爵夫人に耳打ちされて口撃してきた相手の正体を知ってウェルシェはほくそ笑む。
今回のお茶会に出席した最大の目的はエーリックとの婚約に茶々が入らぬようにするため釘を刺すこと。しつこいケヴィン・セギュルと人の話を聞かない第一王子オーウェンを痛い目に合わせる算段もつけている。
ただ、見知らぬケイトも巻き込んでしまうので、ウェルシェとしてはちょっと心苦しかった。
(でも、この親にしてってやつだったみたいね。これなら心置きなく悪巧みを実行できるわ)
だが、そのケイトが自分の陰口を主導している人物と知って思わずニンマリ笑ってしまったのである。
(王妃様は後継問題で波風立たぬよう、側妃様との関係に腐心しているのが理解できないのかしら?)
ウェルシェはケイトが王妃派だと聞いている。だが、どうにも彼女はエレオノーラを追い落とす事がオルメリアの為だと勘違いしているように思えてならない。
(母子揃って状況把握能力が欠如してるなんて……これでは伝統あるセギュル侯爵家もお先真っ暗ね)
セギュル家は侯爵位の貴族の中でも比較的歴史のある家柄で、グロラッハ侯爵家ほどではないがそれなりに権勢を誇っていた。
だが、跡取り息子が母親の負の因子を色濃く受け継いでいるようで、果たして彼にセギュル家の舵取りを上手くできるか疑わしい。
まあ、ウェルシェからすればセギュル家がどうなろうと知った事ではない。むしろ王家から搾り取る為の踏み台にしようとさえしていた。
(王妃様にもダメージが入るけど……まあ、この方なら大丈夫よね)
王家が安寧を保てているのはオルメリアの手腕によるところが大きいとウェルシェは睨んでいる。
間違いなく今代の王妃は傑物だ。
多少の揺さぶりでは揺るぐまい。
(それより問題なのは王妃様に私の擬態がバレる事よね)
これからケヴィンとオーウェンを攻撃するのだが、さすがにぶりっ子しているのは露見するだろう。
他の者ならいざ知らずオルメリアの目を欺きつつ2人を陥れるのは不可能だ。
(まっ、そこは必要経費と考えましょう)
それにどうやって話を切り出そうか思案していたが、せっかくケイトの方から話題を提供してくれたのだから乗らない手はない。
「実は学園でとある殿方に言い寄られて困っているのです」
さも困ったとウェルシェは片手を頬に当てながら眉を顰めて見せる。そんな素振りもみなの目を惹くほど様になっている。
「その方はいつも違う女性を取っ替え引っ替え侍らせているのです」
「まあ、何て破廉恥な」
「本当ですわね」
「女生徒達もそんな男にふらふらとついて行くなんて慎みが足りませんわ」
ウェルシェが悲しそうに述懐すればケイト達が追随してきた。
それは男を非難するような言動にも聞こえるが、ケイト達は暗にそんな男に靡いているとウェルシェを蔑んでいるのだ。
当然、ウェルシェは彼女達の意図を理解しているが、まるで温室育ちの純真無垢な令嬢の如く素知らぬ顔でにっこり笑う。
「学園生活を謳歌されておいでのようですが……それで落第寸前になるのはとても悲しい事ですわ」
惚けながらも自分はその連中とは違うとアピールしているわけで、これは次の一手の布石である。
「まあ、その方達は学園を何だと勘違いされているのかしら?」
案の定、ケイトの一団が食い付いてきた。
ウェルシェは胸の内でニヤリと笑った。
シキン伯爵夫人に耳打ちされて口撃してきた相手の正体を知ってウェルシェはほくそ笑む。
今回のお茶会に出席した最大の目的はエーリックとの婚約に茶々が入らぬようにするため釘を刺すこと。しつこいケヴィン・セギュルと人の話を聞かない第一王子オーウェンを痛い目に合わせる算段もつけている。
ただ、見知らぬケイトも巻き込んでしまうので、ウェルシェとしてはちょっと心苦しかった。
(でも、この親にしてってやつだったみたいね。これなら心置きなく悪巧みを実行できるわ)
だが、そのケイトが自分の陰口を主導している人物と知って思わずニンマリ笑ってしまったのである。
(王妃様は後継問題で波風立たぬよう、側妃様との関係に腐心しているのが理解できないのかしら?)
ウェルシェはケイトが王妃派だと聞いている。だが、どうにも彼女はエレオノーラを追い落とす事がオルメリアの為だと勘違いしているように思えてならない。
(母子揃って状況把握能力が欠如してるなんて……これでは伝統あるセギュル侯爵家もお先真っ暗ね)
セギュル家は侯爵位の貴族の中でも比較的歴史のある家柄で、グロラッハ侯爵家ほどではないがそれなりに権勢を誇っていた。
だが、跡取り息子が母親の負の因子を色濃く受け継いでいるようで、果たして彼にセギュル家の舵取りを上手くできるか疑わしい。
まあ、ウェルシェからすればセギュル家がどうなろうと知った事ではない。むしろ王家から搾り取る為の踏み台にしようとさえしていた。
(王妃様にもダメージが入るけど……まあ、この方なら大丈夫よね)
王家が安寧を保てているのはオルメリアの手腕によるところが大きいとウェルシェは睨んでいる。
間違いなく今代の王妃は傑物だ。
多少の揺さぶりでは揺るぐまい。
(それより問題なのは王妃様に私の擬態がバレる事よね)
これからケヴィンとオーウェンを攻撃するのだが、さすがにぶりっ子しているのは露見するだろう。
他の者ならいざ知らずオルメリアの目を欺きつつ2人を陥れるのは不可能だ。
(まっ、そこは必要経費と考えましょう)
それにどうやって話を切り出そうか思案していたが、せっかくケイトの方から話題を提供してくれたのだから乗らない手はない。
「実は学園でとある殿方に言い寄られて困っているのです」
さも困ったとウェルシェは片手を頬に当てながら眉を顰めて見せる。そんな素振りもみなの目を惹くほど様になっている。
「その方はいつも違う女性を取っ替え引っ替え侍らせているのです」
「まあ、何て破廉恥な」
「本当ですわね」
「女生徒達もそんな男にふらふらとついて行くなんて慎みが足りませんわ」
ウェルシェが悲しそうに述懐すればケイト達が追随してきた。
それは男を非難するような言動にも聞こえるが、ケイト達は暗にそんな男に靡いているとウェルシェを蔑んでいるのだ。
当然、ウェルシェは彼女達の意図を理解しているが、まるで温室育ちの純真無垢な令嬢の如く素知らぬ顔でにっこり笑う。
「学園生活を謳歌されておいでのようですが……それで落第寸前になるのはとても悲しい事ですわ」
惚けながらも自分はその連中とは違うとアピールしているわけで、これは次の一手の布石である。
「まあ、その方達は学園を何だと勘違いされているのかしら?」
案の定、ケイトの一団が食い付いてきた。
ウェルシェは胸の内でニヤリと笑った。
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