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第5章 そのお茶会、本当に必要ですか?

第62話 遥か左斜め上空

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「私がいくらエーリック様と想い合っているのだと説明しても聞いてくださらず、私達の仲を引き裂こうとなさったのです」

 オルメリアの気持ちは沈んでいくが、ウェルシェの一人劇場は留まるところを知らない。

「それで――」

 ヨヨヨと泣き真似をしながらウェルシェは学園でオーウェンが仕出かした詳細を語ると夫人達から同情の声もちらほらと聞こえて来た。

「まあ! なんておいたわしい」
「国王陛下にまで直談判されると宣言されるなんて」
「さぞ心細かったでしょう」

 実際オーウェンは国王のところへ来て公言しているのでオルメリアも誤魔化しようがない。

(ここは素直にオーウェンの非を認め、グロラッハ家へ幾許いくばくか権益を与えて手打ちに持ち込みましょう)

 だが、彼女も一国の王妃である。既に対応策は考えていた。

「オーウェンが勝手な思い込みでエーリックやあなたに不安を与えてしまった事、一人の母としてまた一国の王妃として誠に遺憾です」

 恐らくウェルシェが望んでいるのも何かしらの見返りだろうと、ある程度・・・・オルメリアは彼女の性質を見抜いていた。

「二人には迷惑をかけましたね。オーウェンには私から良く言って聞かせます」
「ありがとうございます」

 あくまで『ある程度』であったが――

「ですが、果たしてオーウェン殿下が聞き分けてくださるか……これからも学園でケヴィン・セギュル様と一緒に難癖をつけて来るのではと不安で……」
「それはどういう意味ですか?」

 表面上は美しい微笑みアルカイックスマイルのままだが、オルメリアは内心では少しむっとしていた。

 それはそうだろう。自分の息子を独善的な者と詰られたのだから。

 だが――

「実は……オーウェン殿下は学園でとある男爵令嬢を侍らせているのですが……」
「……」

 オルメリアは痛いところを突かれた。

 オーウェンが浮気をしていると耳にしてオルメリアは息子を窘めた事があった。だが、一向に改善されていないのである。

「それに対して諫言した側近を排斥なさったのです」
「何ですって!?」

 しかも、寝耳に水の追撃まで。
 ウェルシェに一片の情け無し!

「オーウェンは誰を退けたのです?」

 オルメリアはシキン夫人をチラリと見て嫌な予感に襲われた。

(もっとも最悪なケースはジョウジ・シキンだけど……)

 ウェルシェがシキン夫人を連れて来たという事は最悪のケースであろうとオルメリアは予想した――が、事実はオルメリアの思っていたより遥か上空を行っていた。

「全員です」
「なっ!?」

 オルメリア絶句!
 もはや言葉もない。

「自分の行いを咎める者を排斥した今のオーウェン殿下をお止めできる方は学園にもはやおりません」

 だが、魔王の如きウェルシェに容赦は無い。

「さらには浮気相手の男爵令嬢が薦めた見目の良い令息ばかりを近くに侍らせ学園内で我が世の春……」

 手心を加えぬウェルシェの追い討ちに、オルメリアくらりと眩暈を覚えた。
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