あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第5章 そのお茶会、本当に必要ですか?

第61話 悪い予感は当たるもの

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「ケヴィン・セギュル様は衆目の中でも構わず、嫌がる私の腕を強引に掴んで無体を働こうとなさったのです」

 ああ、とウェルシェは美しい顔を曇らせ嘆き声を上げる。それに釣られて周囲の夫人達の顔も痛ましそうに眉をひそめた。

「ですが、そこでエーリック様がケヴィン・セギュル様の手を払い除け敢然と立ち向かってくださったのです」

 まるで恋する乙女の如くウェルシェはうっとり陶酔するように頬を染めた。
 ここにカミラがいれば胡乱げな目を向け、何のお芝居ですかと問いそうだ。

「まあ素敵!」
「絶世の美少女を巡って男の子達が争うのも尊いわ」
「若いっていいわねぇ」

 だが、夫人達は純真無垢な美少女の擬態を見破れず、若い子達の恋物語に黄色い悲鳴を上げて喜んだ。

 ただ、その中でオルメリアだけが周りに同調せずウェルシェを観察するようにじっと見つめていた。

(セギュル夫人を大人しくさせてくれたのは助かるんだけど……)

 正直に言ってケイトの勘違いによるマウント取りはオルメリアも辟易していた。だから、ウェルシェが彼女をやり込めてくれたのには胸がすく思いである。

 セギュル夫人のテーブル以外の夫人達も彼女を煙たがっていたから同じ思いなのだろう。

 だからこそ天然なウェルシェがいけ好かないケイトに大打撃を与えたのを手放しで喜んでいるのだ。もっとも本当は天然ではなく演技なのだが。

 ウェルシェの擬態をオルメリアは見破っていたし、被害がケイトにだけ限定されるなら問題はないと思っている。

(だけど、この子はそれで済ませてはくれないわよね)

 オルメリアは気がついていた――ウェルシェが語ったケヴィンの話が、国王から聞かされたオーウェンの直談判と内容が同じであると。

(オーウェンから『横恋慕に加担するな』とか『真実の愛を尊重しろ』だとか訳の分からない苦情を捲し立てられたと、陛下あの人から聞かされた時は耳を疑ったのだけれど……)

 息子は何を勘違いしているのかとオルメリアは首を傾げた。

 なんせ当人同士は納得済みなのを確認していたからだ。それに、この婚姻によりエーリックは王族から離れ臣籍降下するので、オーウェンの立太子がほぼ確実となるのだ。

 だが、オーウェンはエーリックのグロラッハ家への婿入りの意義を理解していなかったらしい。

(ケヴィンの暴走にオーウェンも絡んでいると見て間違いなさそうね)

 虫も殺さぬ顔をしているウェルシェだが、オルメリアは彼女がかなりの腹黒だと既に確信していた。恐らくウェルシェはオーウェンについても言及するだろうとオルメリアは身構えた。

「ですが、そこにオーウェン殿下が割って入って来られて……」
(やっぱり!)

 予想通りの展開にオルメリアは暗澹たる気持ちになった。
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