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第6章 その第一王子、本当に必要ですか?

第64話 伯爵夫人暴走モード突入!

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「他の側近となった者も似たり寄ったりだとか」
「ええ、私も娘から聞かされたわ」

 夫人達から次々に非難の声が自然発生して、次々と他のテーブルへと伝播していく。

 これはシキン夫人の影響力もあるが、ウェルシェの仕込みによるところも大きい。

 実はこのお茶会にはウェルシェの息が掛かったサクラが紛れ込んでいるのだ。そのサクラとなっている夫人達がウェルシェに合わせて周囲を扇動していたのである。

 傘下に収めたレーキ・ノモを始めとした有能なオーウェンの元側近達をフル活用し、出席者を洗い出し自分に協力してくれる者に接触していたのだ。

 本当に優秀だとウェルシェは感心する。それと同時に彼らの真価に気づかず捨てたオーウェンはどうしようもなく愚かだと思う。


(だけど、そんなものなのかもね)

 人の才とは容易に測れるものではなく、ゆえに古今東西どこにおいても人の登用とは難しいものなのである。

 そして、自分は他者と違いちゃんと能力を判別できると勘違いするところまでがセットである。


(オーウェン殿下はジョウジ様やレーキ様達を無能で現側近達を優秀だとのご自分の評価を疑ってもいない)

 つまるところオーウェンは自分が優れた指導者であると盲信しているのだ。エーリックは逆に自分に対して自信がなさすぎだが根拠の無い自信よりもマシだとウェルシェは思う。


「今現在、学園ではオーウェン殿下とその側近達が件の男爵令嬢を囲って好き放題されておられますわ。特に側近達の婚約者達が被害を被っておりますの」
「私の息子のように側近でさえお諌めすれば不興を買ってしまうので、誰にもオーウェン殿下を止める手立てがございません」

 ウェルシェに追随するシキン夫人の声は凍えるほど冷えていた。

(あれ? こんな展開は台本になかったけど……)

 ウェルシェは首を捻った。

 演技ではなく本当にシキン夫人は怒っている。
 温厚温和で知られている彼女にしては珍しい。


「学園では真に国を憂う若者達が不当に扱われ、殿下に阿る者達が横柄に振る舞っております。王妃殿下はこれを子供がする事だからと捨て置かれますか?」

 ウェルシェはびっくりした。

 シキン夫人が台本にない行動を示したのもそうだが、その言葉の内容は不敬と断じられてもおかしくない直諫だったからだ。

「学園は小さな王国です。この国の将来を映す鏡です」

 いや、驚いたのはウェルシェだけではない。
 この場の誰もが驚愕して目を見開いている。

「このままならばオーウェン殿下がマルトニア王国の頂きにて見下ろされる景色の中に、我がシキン伯爵家は恐らく無いでしょう」

 そして、シキン夫人はとんでもない発言をぶっこんだのだった。
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