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第10章 その陰謀、本当に必要ですか?

第107話 腹黒令嬢の嗤い

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「ケヴィン様が何か仕掛けてくると?」
「その可能性が高いかと」

 アイリスに対して人員を割いてしまうとウェルシェの周囲が手薄になる。それでは心許ないとレーキは忠告しているのだ。

「セギュル侯爵は何をしておいでなのかしら?」

 ケヴィン様が暴挙に出ればセギュル家とて今度は無事では済まないはずである。色々やらかしているケヴィンに監視を付けていないとは考えにくい。

「まだ調査中ですが、どうもケヴィン個人の暴走ではないようです」
「まあ、そうでしょうね」

 ケヴィンだけでは人を動かせないはずだ。誰かを使えばセギュル侯爵に露呈するからである。

「セギュル侯爵はケヴィン様に加担するほど愚かではないでしょう」

 ならば、セギュル侯爵にバレないよう誰かがケヴィンに助力していると考えるのが妥当だ。

「考えられるのはセギュル夫人かしら?」
「その可能性が高いかと……目下調査中です」

 お茶会で王妃オルメリアより沙汰が下された時、セギュル侯爵の妻ケイトの表情が不愉快そうに歪んでいたのをウェルシェは見逃していない。

「そっちに関してはカミラに任せるからいいわ」

 他家の内部事情ならカミラの侍女ネットワーク情報網の方が学生のレーキ達より速さ、精密さで勝る。

「この件、どのように対処なさるおつもりで?」
「そうねぇ……」

 唇に人差し指を当てながらウェルシェは思案した。

(このままではオーウェン殿下まで塁が及ぶ可能性が高いわ)

 これを放置していればウェルシェにとって最悪の状況になりかねない。

「まずはケヴィン様が本当に私を狙っているのか、援助しているのはセギュル夫人で間違いないのか、それらをはっきりさせましょう」
「彼らが黒の場合は?」
「あれだけやらかして軽い処罰で済ましてもらっているのよ。それなのに逆恨みするセギュル夫人やまったく懲りていないケヴィン様に更生の余地はないわね」
「私もそう思います」

(オーウェン殿下の介入が表沙汰になる前に決着をつけないと)

「あなた達はケヴィン様の動向を見張っていてもらえるかしら?」
「それは構いませんが……どうなさるのです?」
「ケヴィン様を罠にかけます」

 ウェルシェは口の端を吊り上げニヤリと笑った。

 それは『白銀の妖精』や『妖精姫』と呼ばれている見た目純真可憐な少女とは思えぬ真っ黒なわらい……

「ケヴィン様にはここで退場していただきましょう」
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