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第11章 そのお祭り、本当に必要ですか?
第128話 男の子の悲しい性
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「試合お疲れ様です」
ウェルシェは満面の笑みを浮かべてエーリックを出迎えた。
だが、エーリックの方は少しばつが悪そうに顔を曇らせた。
「ごめん、せっかくウェルシェが応援してくれたのに負けちゃた」
「そんな……とっても素晴らしい試合でしたわ」
気落ちするエーリックをむしろウェルシェは褒めた。
「負けたのに?」
「エーリック様の勝利を願ってはおりましたが、勝敗は兵家の常ですわ。それともエーリック様は優勝以外価値が無いとお思いなのですか?」
「そんな事はないけど……やっぱり好きな女の子の前じゃカッコいいところを見せたいじゃないか」
「まぁ、エーリック様ったら」
エーリックに好きな子と言われてポッと頬を染めるウェルシェ。
「私のためにそこまで……」
「だけど、負けたら格好がつかないよね」
ははっとエーリックは力無く笑ったが、ウェルシェは首を横に振った。
「いいえ、エーリック様はとっても素敵でしたわ」
「ホント?」
「はい、エーリック様の勝利する姿を拝見できたら、きっと私はとっても喜んだと思います。ですが、勝ち負けなんて関係なくエーリック様はとってもカッコ良かったですわ」
「そ、そうかな?」
「ええ、もちろん! いつも一所懸命なエーリック様は私にとって世界で一番輝いていますわ。今日この日のために努力されていたエーリック様はいつだって誰よりも最高にカッコいいのです」
「ウェルシェ……ありがとう」
エーリックははにかんで頬をぽりぽりと掻く。
「嬉しいよ……ウェルシェの励ましが何より」
「励ましではありませんわ。それが嘘偽りのない私の本心……エーリック様が素敵なのはまごう事なき真実ですわ」
なんだこの劇薬並に高められた糖度の空間は!
イチャイチャあまあまの二人を物陰に隠れて見せつけられ、チベスナ顔になったレーキは砂でも吐きそうだ。
レーキだけではなく、近くを通りかかった者は老若男女問わずみな一様にチベスナへとクラスチェンジしている。
「それに先程の試合でのエーリック様を見て、私とっても感動しましたの」
劇薬並の糖度に瀕死のダメージを受けていたレーキは、ウェルシェの声質が僅かに変化したと感じ取った。
それは、ほんの少しだけ低くなった声に含まれる何か真摯な気持ちの現れ。
「エーリック様が最後まで日頃の努力の成果を発揮しようと全力で立ち向かわれておられました」
ウェルシェはエーリックをただ煽て、手の上で転がしているだけではない。
「そのエーリック様のどこがカッコ悪いと言うのです?」
「僕は才能が無いからみっともなく足掻いているだけだよ?」
「みっともなくなんてありませんわ!」
自信なさげに自分を卑下するエーリックに両手を握ってウェルシェがぐっと近づく。
「私……エーリック様の弛まぬ努力をされるお姿が……その……大好きですわ」
キャッ言っちゃったと赤くなった顔をウェルシェは両手で覆って隠した。その可愛さにエーリックは完全にノックアウトだ。
「う、うん、ウェルシェのためにもっと頑張るよ!」
「エーリック様なら来年はもっと良い成績が残せますわ」
これは男なら手玉に取られるな、とレーキは感心するのだった。
ウェルシェは満面の笑みを浮かべてエーリックを出迎えた。
だが、エーリックの方は少しばつが悪そうに顔を曇らせた。
「ごめん、せっかくウェルシェが応援してくれたのに負けちゃた」
「そんな……とっても素晴らしい試合でしたわ」
気落ちするエーリックをむしろウェルシェは褒めた。
「負けたのに?」
「エーリック様の勝利を願ってはおりましたが、勝敗は兵家の常ですわ。それともエーリック様は優勝以外価値が無いとお思いなのですか?」
「そんな事はないけど……やっぱり好きな女の子の前じゃカッコいいところを見せたいじゃないか」
「まぁ、エーリック様ったら」
エーリックに好きな子と言われてポッと頬を染めるウェルシェ。
「私のためにそこまで……」
「だけど、負けたら格好がつかないよね」
ははっとエーリックは力無く笑ったが、ウェルシェは首を横に振った。
「いいえ、エーリック様はとっても素敵でしたわ」
「ホント?」
「はい、エーリック様の勝利する姿を拝見できたら、きっと私はとっても喜んだと思います。ですが、勝ち負けなんて関係なくエーリック様はとってもカッコ良かったですわ」
「そ、そうかな?」
「ええ、もちろん! いつも一所懸命なエーリック様は私にとって世界で一番輝いていますわ。今日この日のために努力されていたエーリック様はいつだって誰よりも最高にカッコいいのです」
「ウェルシェ……ありがとう」
エーリックははにかんで頬をぽりぽりと掻く。
「嬉しいよ……ウェルシェの励ましが何より」
「励ましではありませんわ。それが嘘偽りのない私の本心……エーリック様が素敵なのはまごう事なき真実ですわ」
なんだこの劇薬並に高められた糖度の空間は!
イチャイチャあまあまの二人を物陰に隠れて見せつけられ、チベスナ顔になったレーキは砂でも吐きそうだ。
レーキだけではなく、近くを通りかかった者は老若男女問わずみな一様にチベスナへとクラスチェンジしている。
「それに先程の試合でのエーリック様を見て、私とっても感動しましたの」
劇薬並の糖度に瀕死のダメージを受けていたレーキは、ウェルシェの声質が僅かに変化したと感じ取った。
それは、ほんの少しだけ低くなった声に含まれる何か真摯な気持ちの現れ。
「エーリック様が最後まで日頃の努力の成果を発揮しようと全力で立ち向かわれておられました」
ウェルシェはエーリックをただ煽て、手の上で転がしているだけではない。
「そのエーリック様のどこがカッコ悪いと言うのです?」
「僕は才能が無いからみっともなく足掻いているだけだよ?」
「みっともなくなんてありませんわ!」
自信なさげに自分を卑下するエーリックに両手を握ってウェルシェがぐっと近づく。
「私……エーリック様の弛まぬ努力をされるお姿が……その……大好きですわ」
キャッ言っちゃったと赤くなった顔をウェルシェは両手で覆って隠した。その可愛さにエーリックは完全にノックアウトだ。
「う、うん、ウェルシェのためにもっと頑張るよ!」
「エーリック様なら来年はもっと良い成績が残せますわ」
これは男なら手玉に取られるな、とレーキは感心するのだった。
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