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第12章 その本戦、本当に必要ですか?
第132話 動かぬ影
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「それで、まだケヴィン様に動きはないの?」
ジョウジとレーキに守られながら控え室へと続く廊下をウェルシェは進む。その途中で、ウェルシェはケヴィンの動向が気になった。
今のウェルシェの関心事は剣魔祭の成績ではない。この学園祭の間にケヴィンを罠に嵌められるかどうかである。
「セギュル家を見張っている者からの定時連絡では、ケヴィンはまだ屋敷から出ていないようです」
「そう……なの」
ジョウジの報告にウェルシェは少し考え込む。
「ケヴィン様が昨日の予選を避けたのは予想通りなんだけど……」
初日は校内各所で様々な競技の予選が行われた。そのため、生徒以外にも応援に来ている親族達で多くの者が学園に出入りしていた。
「ええ、人の出入りが激しく潜入にはもってこいなんですが……」
「いかんせん人目のつかない場所がありませんでしたから」
だが、数多の予選試合を消化するため学園全域を会場にしていた。だから人気の無い場所が皆無であり、犯行に及ぶのは難しいだろうと読んだのである。
「試合の全てが観客動員数の大きな主会場のみになる本戦初日に仕掛けてくるって思ったのよね」
ジョウジとレーキの推測に同意しながらも、ウェルシェは今日来るとの予測が外れて肩透かしを食らった気分だ。
「予選が終了した今日以降は皆が限定された会場に集まりますからね。確かに空き教室など死角となる場所には事欠きません」
「ですが、それは明日も同じではありませんか?」
剣魔祭の期間は三日。
初日は前述の通り予選が行われ、二日目から本戦となり、明日は各競技の準決勝や決勝が行われる。
「明日は護衛付きの貴賓席で私は観客になっている可能性が高いのよ?」
今日ならウェルシェはまだ選手として出場している。選手なら会場を移動しており、襲撃するチャンスは間違いなく多いと推測できるはずだ。
「ですが、あなたは氷柱融解盤戯と魔弾の射手の二競技で優勝も目指せるのではありませんか?」
「レーキの言うように、セギュル夫人もそれを予想したかもしれませんね」
「どうかしらね」
正直に言えば魔弾の射手は勝ち進むのは無理だと思っているが、氷柱融解盤戯の方は優勝する自信がある。
氷柱融解盤戯は精密な魔力コントロールがものを言う競技だ。0.1度単位で正確に温度を調節できるウェルシェの魔力コントロールは学生レベルを遥かに超えている。この競技に限っては学園に敵はいないだろう。
だが、それを知る者はほとんどいない。
「私が決勝に進める力があるとしても、セギュル夫人はそれを知らないでしょ?」
ましてや、ウェルシェを良く調べもしていなかったケイトがそれを知っているはずはないのだった。
ジョウジとレーキに守られながら控え室へと続く廊下をウェルシェは進む。その途中で、ウェルシェはケヴィンの動向が気になった。
今のウェルシェの関心事は剣魔祭の成績ではない。この学園祭の間にケヴィンを罠に嵌められるかどうかである。
「セギュル家を見張っている者からの定時連絡では、ケヴィンはまだ屋敷から出ていないようです」
「そう……なの」
ジョウジの報告にウェルシェは少し考え込む。
「ケヴィン様が昨日の予選を避けたのは予想通りなんだけど……」
初日は校内各所で様々な競技の予選が行われた。そのため、生徒以外にも応援に来ている親族達で多くの者が学園に出入りしていた。
「ええ、人の出入りが激しく潜入にはもってこいなんですが……」
「いかんせん人目のつかない場所がありませんでしたから」
だが、数多の予選試合を消化するため学園全域を会場にしていた。だから人気の無い場所が皆無であり、犯行に及ぶのは難しいだろうと読んだのである。
「試合の全てが観客動員数の大きな主会場のみになる本戦初日に仕掛けてくるって思ったのよね」
ジョウジとレーキの推測に同意しながらも、ウェルシェは今日来るとの予測が外れて肩透かしを食らった気分だ。
「予選が終了した今日以降は皆が限定された会場に集まりますからね。確かに空き教室など死角となる場所には事欠きません」
「ですが、それは明日も同じではありませんか?」
剣魔祭の期間は三日。
初日は前述の通り予選が行われ、二日目から本戦となり、明日は各競技の準決勝や決勝が行われる。
「明日は護衛付きの貴賓席で私は観客になっている可能性が高いのよ?」
今日ならウェルシェはまだ選手として出場している。選手なら会場を移動しており、襲撃するチャンスは間違いなく多いと推測できるはずだ。
「ですが、あなたは氷柱融解盤戯と魔弾の射手の二競技で優勝も目指せるのではありませんか?」
「レーキの言うように、セギュル夫人もそれを予想したかもしれませんね」
「どうかしらね」
正直に言えば魔弾の射手は勝ち進むのは無理だと思っているが、氷柱融解盤戯の方は優勝する自信がある。
氷柱融解盤戯は精密な魔力コントロールがものを言う競技だ。0.1度単位で正確に温度を調節できるウェルシェの魔力コントロールは学生レベルを遥かに超えている。この競技に限っては学園に敵はいないだろう。
だが、それを知る者はほとんどいない。
「私が決勝に進める力があるとしても、セギュル夫人はそれを知らないでしょ?」
ましてや、ウェルシェを良く調べもしていなかったケイトがそれを知っているはずはないのだった。
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