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第12章 その本戦、本当に必要ですか?
第138話 モブに贈る拍手
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ああ……
観客席から漏れ出た落胆のため息は、一つのうねりとなって会場を揺らした。
勝負は決したのだ――
ガコンッ!
バシッ!
――だが、会場に標的を射抜く快音が響く。
少女が放った魔弾が敵人型標的に炸裂したのだ。
敗れても少女は競技を止めようとはしなかった。
負けが確定した場合、途中で競技を終了しても問題はない。むしろ、普通は誰もが最後を待たずに退場する。だが、それでも彼女は歯を食いしばって標的へ魔杖を振るった。
人は彼女の行為を無駄だと嘲り笑うかもしれない。
それでも少女は諦めず懸命に魔杖を振るい続けた。
その背中が泣いているようにエーリックには見えた。
どこかで挫けて崩れ落ちてしまいそうに見えたのだ。
「頑張れ」
だから、そんな彼女の姿にエーリックは自然と呟いていた。
(頑張れ……頑張れ……)
何度も何度も心の中でエールを送る。
ガコンッ! ガコンッ!
バシッ! バシッ!
それからの緑髪の少女は一つもミスをする事なく標的を射抜いていく。そして、最後の標的が出現し、緑髪の少女は魔弾を放った。
緑色の魔弾は吸い込まれるように標的へと着弾する。
この瞬間、彼女の今年の大会は幕を閉じたのだった。
彼女のプレイにはたった一回のミスしかない。
他の全ての試合と比べても見事な成績である。
それでも彼女の敗北が覆ることはなかった。
「くっ、うっ、うっ……」
ついに少女は泣き崩れた。
頬を伝う涙を拭う事なく、ただ泣き続けた。
その様子に誰もが声をかけられず、会場はただ静かに彼女を見守った。
ただただ少女の嗚咽だけが会場に響く。
パチパチパチパチ……
その時、一つの拍手が静寂を破った。
その音に膝をつき俯いていた少女は泣き腫らした顔を上げた。彼女の視界に入ったのは貴賓席で手を叩く金髪の美少年。
拍手を贈るエーリックは固く無表情であったが、少女には涙を流しているように見えた。
少女は立ち上がるとグイッと涙を拭い口を引き締めて胸を張る。
パチパチパチパチ……
パチパチパチパチ……
パチパチパチパチ……
止まっていた会場の時が動き出す。
エーリックにつられて少女の健闘と最後まで立派に力を尽くした振る舞いに、会場から拍手が沸き起こった。
『勝者ルーナミリア・ルーベルト!』
主審の宣言で緑髪の少女の今年の試合は終わった。
だが、少女はもう涙を見せず貴賓席のエーリックへ深々と頭を下げると会場を去っていったのだった……
観客席から漏れ出た落胆のため息は、一つのうねりとなって会場を揺らした。
勝負は決したのだ――
ガコンッ!
バシッ!
――だが、会場に標的を射抜く快音が響く。
少女が放った魔弾が敵人型標的に炸裂したのだ。
敗れても少女は競技を止めようとはしなかった。
負けが確定した場合、途中で競技を終了しても問題はない。むしろ、普通は誰もが最後を待たずに退場する。だが、それでも彼女は歯を食いしばって標的へ魔杖を振るった。
人は彼女の行為を無駄だと嘲り笑うかもしれない。
それでも少女は諦めず懸命に魔杖を振るい続けた。
その背中が泣いているようにエーリックには見えた。
どこかで挫けて崩れ落ちてしまいそうに見えたのだ。
「頑張れ」
だから、そんな彼女の姿にエーリックは自然と呟いていた。
(頑張れ……頑張れ……)
何度も何度も心の中でエールを送る。
ガコンッ! ガコンッ!
バシッ! バシッ!
それからの緑髪の少女は一つもミスをする事なく標的を射抜いていく。そして、最後の標的が出現し、緑髪の少女は魔弾を放った。
緑色の魔弾は吸い込まれるように標的へと着弾する。
この瞬間、彼女の今年の大会は幕を閉じたのだった。
彼女のプレイにはたった一回のミスしかない。
他の全ての試合と比べても見事な成績である。
それでも彼女の敗北が覆ることはなかった。
「くっ、うっ、うっ……」
ついに少女は泣き崩れた。
頬を伝う涙を拭う事なく、ただ泣き続けた。
その様子に誰もが声をかけられず、会場はただ静かに彼女を見守った。
ただただ少女の嗚咽だけが会場に響く。
パチパチパチパチ……
その時、一つの拍手が静寂を破った。
その音に膝をつき俯いていた少女は泣き腫らした顔を上げた。彼女の視界に入ったのは貴賓席で手を叩く金髪の美少年。
拍手を贈るエーリックは固く無表情であったが、少女には涙を流しているように見えた。
少女は立ち上がるとグイッと涙を拭い口を引き締めて胸を張る。
パチパチパチパチ……
パチパチパチパチ……
パチパチパチパチ……
止まっていた会場の時が動き出す。
エーリックにつられて少女の健闘と最後まで立派に力を尽くした振る舞いに、会場から拍手が沸き起こった。
『勝者ルーナミリア・ルーベルト!』
主審の宣言で緑髪の少女の今年の試合は終わった。
だが、少女はもう涙を見せず貴賓席のエーリックへ深々と頭を下げると会場を去っていったのだった……
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