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第14章 その最終局面、本当に必要ですか?

第150話 蠢動する者

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「……そう、やっと獲物ケヴィン様が餌に喰らいついたんだ」

 ウェルシェの表現にレーキが苦笑いした。なんせ、ウェルシェの言う餌とは自分自身なのだから。

「獲物に対して餌があまりに豪華すぎてもったいない気はしますが」
「ずいぶん贅沢な外道よね」

 右目を瞑りウィンクしながらウェルシェはおどけた感じでレーキの諧謔かいぎゃくに応じた。

「あまり笑える状況ではありません」

 二人のやり取りにジョウジはため息を漏らす。

「何かまずい事でも?」
「ええ、ケヴィンの所在が掴めていないのですよ」
「どういう事?」

 辻褄の合わない話にウェルシェは眉を顰めた。

「さっきはケヴィン様が動いたって……まさか、尾行がバレたの?」

 それでケヴィンが途中で尾行をまいたのだろか?

「そうではなく……実はケヴィンが屋敷を出たところを誰も見ていないのです」
「見てない?」

 そうなるとケヴィンはまだ屋敷にいるはずだが、ジョウジはさっきケヴィンが動いたと言ったではないか。さらに不可解になり、ウェルシェはいよいよ混乱した。

「屋敷を見張っていた者達に問い合わせたのですが、彼らはケヴィンが外出する姿を見ていないそうなのです」
「ならケヴィン様はまだ屋敷にいるのではないの?」

 それなのにケヴィンが動いたとはいったい?

「それが……学園でケヴィンを見かけた者がいるのです」
「本当に?……見間違いではなくて?」
「その者も最初はケヴィンと思わなかったそうなのです」

 その目撃者はハンス・バウワア――ウェルシェの傘下に入ったレーキ達と同じくオーウェンに干された元側近である

 ハンスは学園にいるセギュル家の手が、学園に出入りしている業者の服を纏った男と接触している現場にたまたま居合わせたらしい。

 それだけなら彼も特に気にも留めなかっただろう。だが、その業者服の人物があまりに不審だった。

 ボサボサの黒髪で顔は痩せこけ鋭く、目つきがギョロリとして異様な光を放っていた。貴族の学園に出入りするにしては、あまりにも人相が悪すぎる。

「……よく見れば特徴的な黒髪にアメジストの瞳、極めつけはケヴィンのトレードマークの泣きぼくろまであって……ケヴィンと気がついたハンスは、別人の如く変わり果てた姿にギョッとしたそうです」

 洒落者のケヴィンとは掛け離れすぎて、初見では彼とは分からなかったらしい。

「ケヴィン様は業者にふんして潜入してきたのね?」
「おそらくセギュル家と取り引きのある商人が力添えしたのでしょう」

 姿をやつして商人達と屋敷を出たため、見張りがケヴィンを見逃してしまったのだろう。
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