「結婚しよう」

まひる

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第四章

9.限界だ【4】

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 ん……っ。
 フワリと意識が戻ります。──あれ?何だか暗いですね。

「起きたのか、メル」

 ボンヤリとしていた私に、いつものようにヴォルの低い声が掛けられます。

「はい……。あの、まだ夜ですか?」

 いつものように後ろから抱き締められていたのですが、私の首筋にヴォルが顔を埋めてきました。──ゾワリ、と甘い痺れが背筋を走ります。

「寝たのが早かったからな」

 それを聞いて、ようやく私の頭の中に色々な事が思い起こされました。

「……っ」

 瞬時に真っ赤になった私は、その先の言葉を失いました。
 それでもヴォルはいつだって余裕な感じで、そんな私の熱い頬や唇にキスの雨を降らせます。

「も……んっ……、ム……リ……っ」

 それだけで一杯一杯になる私は、ヴォルに翻弄されっぱなしでした。
 息も絶え絶えになっていると、クゥ──と相変わらず空気の読めない私のお腹が鳴きました。

「確かに腹が減ったな」

 ククッと笑いながらヴォルの唇が放れます。
 うぅ、恥ずかしすぎます。

「ガルシアを呼んでこよう」

 ヴォルが起き上がります。
 えっ、ちょっと待ってくださいよ!?

「ま……っ」

 慌てて起き上がろうとして、私は固まりました。──出てきます。

「ん?……あぁ。湯を用意しよう」

 そんな私を見て気付いたのか、ヴォルが嬉しいような恥ずかしいような申し訳なさそうな顔を見せました。
 あ、このヴォルも初めて見ましたね。

「おいで」

 シーツの中に包まれている私に腕を伸ばし、それごと軽々と抱き上げられてしまいました。

「えっ、え……っ?!」

 焦りましたよ。
 それでお腹に力を入れたら、ツツッ──と伝うものがっ?!

「風呂に行くぞ」

 再び固まるように大人しくなった私をどう思ったのか、ヴォルはそのまま浴室へと向かいました。
 浴室と言ってもバスタブがあるだけなのですが、魔法で水も火も使えるヴォルには十分なお風呂です。何処でも浴室に出来るのですよ。

 いつもはお湯をガルシアさんに運んでもらって、身体を拭くのが主流です。
 農村と違って汚れる事の少ないお城の人々にとっては、それくらいで十分なのでしょう。

「メル、シーツをとれ」

 既に魔法でお湯を作ったヴォルが声を掛けてきました。
 い、いえいえ──何を仰るのですか。
 私はプルプルと首を横に振り、完全拒否の姿勢をとります。

「……俺のは見てるのに?」

 わずかに眉を寄せたヴォルの言葉に、私はようやく彼が一糸纏わぬ姿である事を理解しました。
 ボンッと顔が熱くなります。

「ご……、ごめんなさい……」

 何と答えて良いのか分からず、混乱しつつ口から出てきたのは謝罪の言葉でした。
 もう、穴があったら頭まで埋もれてしまいたいです。
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