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異常事態⑦
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カリナン達が来てから数十分が経った。
私もそうだが、だんだんみんなの息が荒くなってきた。
そのせいだろうか、こうなってしまったのは。
「カリナン!」
「おっと動くなよ?こいつの命が惜しくなければな」
先程まで私達の後ろで援助してくれていたカリナンがいつの間にか奴隷商人に捕まっていた。
焦る私達を嘲笑うように奴隷商人はカリナンの首元を少しだけナイフで切った。
カリナンの首から血がにじむ。
「……」
それを見た瞬間、私は今まで抑えていた本能をだす。姿を完全に獣化させ、殺気をぶちまける。
「「「!!!」」」
今まで私の本気の殺気を感じたことがない皆は驚いている。
そりゃそうだろう。この殺気は長年私が奴隷として歩んできた時に身に付いたもの。
普通に暮らしていれば出せる筈のない、憎悪と嫌悪がこれでもかと言う程凝縮されている。
「流石、だな。だが、迂闊に近付くとどうなるか分かってるか?」
そう言って奴隷商人はカリナンの首に当てているナイフに力を込める。
でもね。いくらそうしていても、奴隷商人が動き出す前に動けば問題ないよね?
私は黒狼の姿のまま奴隷商人に素早く飛び掛かる。
黒狼は魔力探知なども得意だが、スピードにも長けている。
そんな黒狼に飛び掛かられたら、いくら準備をしていても反応することなど不可能に近い。
そのまま私は奴隷商人を押し倒す。
「この!放せや!」
「「ライ!!」」
奴隷商人がナイフをこちらに振り下ろす。カール班長とカリナンの叫び声が耳に響く。
……咄嗟に私は奴隷商人の腕を噛みちぎった。
鎌でも傷1つ付かなかった奴隷商人の腕は……意図も簡単に私の牙に白旗を上げた。
路地裏に奴隷商人の鮮血が飛び散る。
「……ライ」
奴隷商人は動かなくなり、私は人間の姿に戻る。身体中に張り付いた奴隷商人の血を雨が洗い流していく。
カリナンが私の名前を呼ぶ。
私はそれに、返事をすることが出来なかった。
憎んでいる。私やウィンさんを家畜扱いしていた奴隷商人を。
でも、だからと言ってこんなことするつもりは全くなかった。
別に奴隷商人を殺す勇気がなかったとか、傷付けたくなかったとか、そんな理由じゃなくて、こんなことして私の感覚が狂うのが嫌だったから。
こんなことしたら、誰かを傷つけることに抵抗がなくなってしまうのではと、犯罪者だからと自分を正当化して、人を殺してしまうことに抵抗を覚えなくなってしまうのではと不安だったから。
カール班長が奴隷商人に近付き、首に手を当てる。
「!まだ生きてる!本部に戻るぞ!急げ!」
え。まだ、生きてる?
周りがあわただしく動くなか、私はその言葉を受け止めれなかった。
だって、私は奴隷商人の腕を噛みちぎって、そいつは動かなくなって……なのにまだ、生きてるの?
愕然としている私の腕を、カリナンが引っ張る。
「早くいくよ!ライ!」
「は、はい……」
連れられるまま、裏路地を出ると、人数分の馬が待機していた。
既にカール班長は奴隷商人を馬にくくりつけ、自分もその馬に乗っている。馬の上で最低限の処置をするようだ。
全員が馬に乗り、カール班長を先頭に本部に戻る。
嵐はさらに酷くなり、10m先も良く見えない中、私達は馬を走らせた。
私もそうだが、だんだんみんなの息が荒くなってきた。
そのせいだろうか、こうなってしまったのは。
「カリナン!」
「おっと動くなよ?こいつの命が惜しくなければな」
先程まで私達の後ろで援助してくれていたカリナンがいつの間にか奴隷商人に捕まっていた。
焦る私達を嘲笑うように奴隷商人はカリナンの首元を少しだけナイフで切った。
カリナンの首から血がにじむ。
「……」
それを見た瞬間、私は今まで抑えていた本能をだす。姿を完全に獣化させ、殺気をぶちまける。
「「「!!!」」」
今まで私の本気の殺気を感じたことがない皆は驚いている。
そりゃそうだろう。この殺気は長年私が奴隷として歩んできた時に身に付いたもの。
普通に暮らしていれば出せる筈のない、憎悪と嫌悪がこれでもかと言う程凝縮されている。
「流石、だな。だが、迂闊に近付くとどうなるか分かってるか?」
そう言って奴隷商人はカリナンの首に当てているナイフに力を込める。
でもね。いくらそうしていても、奴隷商人が動き出す前に動けば問題ないよね?
私は黒狼の姿のまま奴隷商人に素早く飛び掛かる。
黒狼は魔力探知なども得意だが、スピードにも長けている。
そんな黒狼に飛び掛かられたら、いくら準備をしていても反応することなど不可能に近い。
そのまま私は奴隷商人を押し倒す。
「この!放せや!」
「「ライ!!」」
奴隷商人がナイフをこちらに振り下ろす。カール班長とカリナンの叫び声が耳に響く。
……咄嗟に私は奴隷商人の腕を噛みちぎった。
鎌でも傷1つ付かなかった奴隷商人の腕は……意図も簡単に私の牙に白旗を上げた。
路地裏に奴隷商人の鮮血が飛び散る。
「……ライ」
奴隷商人は動かなくなり、私は人間の姿に戻る。身体中に張り付いた奴隷商人の血を雨が洗い流していく。
カリナンが私の名前を呼ぶ。
私はそれに、返事をすることが出来なかった。
憎んでいる。私やウィンさんを家畜扱いしていた奴隷商人を。
でも、だからと言ってこんなことするつもりは全くなかった。
別に奴隷商人を殺す勇気がなかったとか、傷付けたくなかったとか、そんな理由じゃなくて、こんなことして私の感覚が狂うのが嫌だったから。
こんなことしたら、誰かを傷つけることに抵抗がなくなってしまうのではと、犯罪者だからと自分を正当化して、人を殺してしまうことに抵抗を覚えなくなってしまうのではと不安だったから。
カール班長が奴隷商人に近付き、首に手を当てる。
「!まだ生きてる!本部に戻るぞ!急げ!」
え。まだ、生きてる?
周りがあわただしく動くなか、私はその言葉を受け止めれなかった。
だって、私は奴隷商人の腕を噛みちぎって、そいつは動かなくなって……なのにまだ、生きてるの?
愕然としている私の腕を、カリナンが引っ張る。
「早くいくよ!ライ!」
「は、はい……」
連れられるまま、裏路地を出ると、人数分の馬が待機していた。
既にカール班長は奴隷商人を馬にくくりつけ、自分もその馬に乗っている。馬の上で最低限の処置をするようだ。
全員が馬に乗り、カール班長を先頭に本部に戻る。
嵐はさらに酷くなり、10m先も良く見えない中、私達は馬を走らせた。
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