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??? Noside
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真夜中。
ライ達ターリスク王国騎士団が必死に会議をしている時。
辺りが静まり暗闇と化した中、ある部屋だけは煌々と明かりがついている。
その部屋には一つの人影が動いていた。
焦ったようにになにかを書いているようで、その手は止まることを知らない。何かを書いては消し、書いては消しを繰り返している。床には既に数十枚の紙が丸めて捨ててある。
数分後、その部屋に一人の人物が飛び込んできた。その人物は、書き物をしている人物の元へ行くと跪き、頭を垂れた。
「主様。例の作戦ですが…失敗致しました。新しく入ってきた新人が思ったより優秀な模様です」
「そうですか。報告ご苦労様です」
部屋の主人は誰かを責めるわけでもなく、小さくため息をついた。報告主はただ体を縮ませて、部屋の退出が許可されるのを待った。
「はあ、あの人の言った通りになったということですか…まあいいでしょう。当初の計画通り計画Bを実行しましょう。あの人達にはどんな手を使ってでも隠し通してください。出来なければ…待つのは滅びです。これが最後のチャンスです。失敗は許されない。私も、貴方も…」
「承知の上です。必ずや成し遂げてみせます」
「宜しくお願いします…退出して大丈夫です。頼みましたよ」
報告主が部屋を退出すると、その人物は、髪を耳にかけながら小さくため息をついた。
「これが成功すればきっと、ターリスク王国はグラード王国に飲み込まれるでしょうね。しかし失敗すればこの二国は戦争になるでしょう。全くあの方は一体何がしたいのか…意図が全く掴めません。一先ず、今回のことの報告をせねば……相当機嫌が悪くなるでしょうね…」
この人を見たら、十人中十人が苦労人、という程にこの人は苦労人だ。上からの圧力。部下からの信頼という名の圧力。常に胃薬を常備するようになったのは、今の立ち位置になってからだ。目の下には濃い隈ができ、どんよりとしたオーラを放っている。
ここまで追い詰められているのに、この人は辞職しようとしない。それは単純にこの人が我慢強いというのもあるが、ひとえにこの人も感覚が狂っており、人の不幸をただただ望んでいる、そんな人であることも関係しているのだろう。
「それにしても新人、ですか。確かライ、でしたよね。黒狼族で、雷を操る。かなり厄介ですね…何が弱みでも見つけられたらいいですが。そもそも住んでいる国が違うから難しいですかね…」
「取り敢えず、あの方に報告したら、この資料のまとめに入らねば。成功しても失敗しても私達の命が危うくなる…しかしもう進む道はこれしか用意されていないのです。戻ることはできません…私達に残されているのは、残された道を全力で走り抜けることだけ。ただ、それだけです」
そう呟くとその人物は長い髪を揺らしながら部屋を出ていった。
机の上の資料には"全世界統合計画 極秘"と書かれた紙が置かれていた。
ライ達ターリスク王国騎士団が必死に会議をしている時。
辺りが静まり暗闇と化した中、ある部屋だけは煌々と明かりがついている。
その部屋には一つの人影が動いていた。
焦ったようにになにかを書いているようで、その手は止まることを知らない。何かを書いては消し、書いては消しを繰り返している。床には既に数十枚の紙が丸めて捨ててある。
数分後、その部屋に一人の人物が飛び込んできた。その人物は、書き物をしている人物の元へ行くと跪き、頭を垂れた。
「主様。例の作戦ですが…失敗致しました。新しく入ってきた新人が思ったより優秀な模様です」
「そうですか。報告ご苦労様です」
部屋の主人は誰かを責めるわけでもなく、小さくため息をついた。報告主はただ体を縮ませて、部屋の退出が許可されるのを待った。
「はあ、あの人の言った通りになったということですか…まあいいでしょう。当初の計画通り計画Bを実行しましょう。あの人達にはどんな手を使ってでも隠し通してください。出来なければ…待つのは滅びです。これが最後のチャンスです。失敗は許されない。私も、貴方も…」
「承知の上です。必ずや成し遂げてみせます」
「宜しくお願いします…退出して大丈夫です。頼みましたよ」
報告主が部屋を退出すると、その人物は、髪を耳にかけながら小さくため息をついた。
「これが成功すればきっと、ターリスク王国はグラード王国に飲み込まれるでしょうね。しかし失敗すればこの二国は戦争になるでしょう。全くあの方は一体何がしたいのか…意図が全く掴めません。一先ず、今回のことの報告をせねば……相当機嫌が悪くなるでしょうね…」
この人を見たら、十人中十人が苦労人、という程にこの人は苦労人だ。上からの圧力。部下からの信頼という名の圧力。常に胃薬を常備するようになったのは、今の立ち位置になってからだ。目の下には濃い隈ができ、どんよりとしたオーラを放っている。
ここまで追い詰められているのに、この人は辞職しようとしない。それは単純にこの人が我慢強いというのもあるが、ひとえにこの人も感覚が狂っており、人の不幸をただただ望んでいる、そんな人であることも関係しているのだろう。
「それにしても新人、ですか。確かライ、でしたよね。黒狼族で、雷を操る。かなり厄介ですね…何が弱みでも見つけられたらいいですが。そもそも住んでいる国が違うから難しいですかね…」
「取り敢えず、あの方に報告したら、この資料のまとめに入らねば。成功しても失敗しても私達の命が危うくなる…しかしもう進む道はこれしか用意されていないのです。戻ることはできません…私達に残されているのは、残された道を全力で走り抜けることだけ。ただ、それだけです」
そう呟くとその人物は長い髪を揺らしながら部屋を出ていった。
机の上の資料には"全世界統合計画 極秘"と書かれた紙が置かれていた。
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