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一人で
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走っても走っても追いかけてくる魔物。
「ちっ!しつこすぎるだろ…王都の奴らだったらとっくに諦めてるぞ…」
「やっぱり王都から離れるほど警備は甘くなるからね…人への執着心も段違いなんだろうね」
「このまま拠点に戻っても…拠点が危ないか…」
確かに水である程度臭いを落としたとはいえ、後ろにはかなりの数の魔物が追いかけてきてるし、このまま拠点に戻ってもかえって迷惑だろう。
「仕方無い…誰かここに残って一網打尽にしよう。このままだと生態系とか言う前に三人共全滅なんてこともある…」
「…だな…それにさっき気がついたが…これ真っ直ぐ進んだら崖なんだわ」
ガリウス先輩が提案した案は、先程キーカル先輩が言いかけていたもの。まあ、正直このまま逃げても意味ないし、だったら一気に倒した方がいいのだが…
「倒した血でまた他の魔物がやって来ませんか?」
「そこは結界張るから…キーカルが」
「俺かよ…まあ、別にいいが」
成る程。確かにキーカル先輩の土魔法やら大地魔術やらを使えば魔物がやって来ても襲われることはない…が
「それだと結界の外に出られませんが…」
「ああ…大丈夫だ…まあ、やってみればわかる」
「そうそう!だから宜しくね。ライ」
「…分かりました。先輩達はどうするんですか?真っ直ぐ進んだら崖なんですよね?」
「ああ…抜け道があるから大丈夫。まあその抜け道、足場悪すぎて馬だとめっちゃ時間かかるんだよね」
私が行くのか…まあ、予想はしていたが、いざ言われるとなると少し緊張する。キーカル先輩は結界を張ることで魔力をかなり消費するだろうし、ガリウス先輩は万が一またカール班長から連絡が来た時のために残らない方がいいだろう。
となると、必然的に私が残るとなるのは当然のことで。
「本当に大丈夫?」
「はい。ちゃんと先輩達が拠点に戻るまでの時間稼ぎになりますので。ご心配なく」
「…じゃあ、結界張るな。守り通せ 道を阻め アース·トラップ」
キーカル先輩が発動したのは大地魔術Lv.4の、木の根が敵の行く手を阻み、結界への侵入を防ぐというもの。確かにこれなら私が結界の外に出ることも出きる。
魔物もかなり近づいてきており、二人は名残惜しみつつも馬に乗って走り去った。
「さてさて…どうしましょうか…」
首にかけていた空間魔術を解除する。この数日ずっと先輩達と一緒に行動していたため、解除する機会がなかったのだ。
たまには解除しないと、同じところに空間魔術をかけていたらそこに負担がかかる。実際最近かなり首や肩が凝ってる気がする。
肩をぐるぐる回していると、ドドドという音がだんだん大きくなってきた。少しジャンプしたりして体を暖かくして鎌を抜く。
先輩達が少し開けた場所で下ろしてくれたお陰で心置きなく戦闘に集中できる。
数分もしない内にかなり大きな魔物が数体やってきた。後ろにはかなりの数の小型魔物が。
「…一仕事しますか」
大型魔物達が唸り声をあげながら突進してくる。それを阻むように地面から木の根っこが魔物達の足に絡み付き妨害する。その魔物達を追い抜かすように小型魔物が襲いかかる。
小型とはいえ、私の身長ほどはあるその魔物達。攻撃をギリギリとところで避け、勢いがついて急所がこちら側に丸見えのそいつらを…一閃。どさどさと肉片が落ちる音。服や顔には血がべったりつく。
第二段の魔物の波が来ない内に、動けないでいる大型魔物達をぐさり。もしここに他の騎士がいたら、今夜は肉祭りだ~だなんて騒いでいるのだろうか…
いとも簡単に想像できるそれにすこし力が抜ける。緊張していたし、丁度良く肩の力が抜けた。なんか今ならなんでも出るみたいな…ゾーンに入ってる感じがする。それも、ちゃんと自分の力を調節できる感じ。
私が万全の状態になったのを狙ってか、魔物がやってきた。したも、かなりの数。いくら結界があるとは言え流石に生身でこれはきついかもしれない。久しぶりだが完全獣化して倒すことにする。
「…グル」
喉がなるのを感じながら魔物達を見つめる。私の姿が変わったのをもろともせず、突っ込んでくる。といってもキーカル先輩が張った結界に阻まれてこっちに来れないのだが
「…危機管理能力がないやつは…こうやって死んでいくんだよな」
自分の相手がどうして姿が変わったのかすら分からないから…危機感を感じられなくて…狩られる。
この世はやはり弱肉強食。こんなに危機管理能力がないのによくここまで生きれたものだ。多分こいつらは今日私がここで殺さなくても、いずれ殺されていた。
それが人が魔物かは分からないが。どちらにせよ危機感のないやつは長くは生きられない…まあ、それは私達にも言えることではあるが…な。
第二波も終わり森に静寂が訪れる。とはいえ血の臭いですぐに寄って来るだろうから急いでここを離れるか。
獣化したまま疾走する…前にチョーカーに空間魔術をかける。かけ忘れて身分バレなんて絶対に勘弁だ。バッジによると、既に先輩達は拠点に帰っているようだ。動きが遅い。先輩達がいる方面に向かって進もうとして…大事なことに気がついた。
先輩達が行った方面=私の知らない抜け道=帰り方わからない
そもそもバッジの位置情報は周りの地形を読み取る程高度じゃない。わかるのは自分から何キロ離れたどこの方角に何人いるかってこと。地形なんて読み取ってくれないし、そこまでの行き方なんてもっての他だ。
これなら拠点までの行き方教えてもらえばよかった…そう後悔するも時既に遅し。呆然とその場に立ち尽くすしか私に選択肢はないのだった。
「ちっ!しつこすぎるだろ…王都の奴らだったらとっくに諦めてるぞ…」
「やっぱり王都から離れるほど警備は甘くなるからね…人への執着心も段違いなんだろうね」
「このまま拠点に戻っても…拠点が危ないか…」
確かに水である程度臭いを落としたとはいえ、後ろにはかなりの数の魔物が追いかけてきてるし、このまま拠点に戻ってもかえって迷惑だろう。
「仕方無い…誰かここに残って一網打尽にしよう。このままだと生態系とか言う前に三人共全滅なんてこともある…」
「…だな…それにさっき気がついたが…これ真っ直ぐ進んだら崖なんだわ」
ガリウス先輩が提案した案は、先程キーカル先輩が言いかけていたもの。まあ、正直このまま逃げても意味ないし、だったら一気に倒した方がいいのだが…
「倒した血でまた他の魔物がやって来ませんか?」
「そこは結界張るから…キーカルが」
「俺かよ…まあ、別にいいが」
成る程。確かにキーカル先輩の土魔法やら大地魔術やらを使えば魔物がやって来ても襲われることはない…が
「それだと結界の外に出られませんが…」
「ああ…大丈夫だ…まあ、やってみればわかる」
「そうそう!だから宜しくね。ライ」
「…分かりました。先輩達はどうするんですか?真っ直ぐ進んだら崖なんですよね?」
「ああ…抜け道があるから大丈夫。まあその抜け道、足場悪すぎて馬だとめっちゃ時間かかるんだよね」
私が行くのか…まあ、予想はしていたが、いざ言われるとなると少し緊張する。キーカル先輩は結界を張ることで魔力をかなり消費するだろうし、ガリウス先輩は万が一またカール班長から連絡が来た時のために残らない方がいいだろう。
となると、必然的に私が残るとなるのは当然のことで。
「本当に大丈夫?」
「はい。ちゃんと先輩達が拠点に戻るまでの時間稼ぎになりますので。ご心配なく」
「…じゃあ、結界張るな。守り通せ 道を阻め アース·トラップ」
キーカル先輩が発動したのは大地魔術Lv.4の、木の根が敵の行く手を阻み、結界への侵入を防ぐというもの。確かにこれなら私が結界の外に出ることも出きる。
魔物もかなり近づいてきており、二人は名残惜しみつつも馬に乗って走り去った。
「さてさて…どうしましょうか…」
首にかけていた空間魔術を解除する。この数日ずっと先輩達と一緒に行動していたため、解除する機会がなかったのだ。
たまには解除しないと、同じところに空間魔術をかけていたらそこに負担がかかる。実際最近かなり首や肩が凝ってる気がする。
肩をぐるぐる回していると、ドドドという音がだんだん大きくなってきた。少しジャンプしたりして体を暖かくして鎌を抜く。
先輩達が少し開けた場所で下ろしてくれたお陰で心置きなく戦闘に集中できる。
数分もしない内にかなり大きな魔物が数体やってきた。後ろにはかなりの数の小型魔物が。
「…一仕事しますか」
大型魔物達が唸り声をあげながら突進してくる。それを阻むように地面から木の根っこが魔物達の足に絡み付き妨害する。その魔物達を追い抜かすように小型魔物が襲いかかる。
小型とはいえ、私の身長ほどはあるその魔物達。攻撃をギリギリとところで避け、勢いがついて急所がこちら側に丸見えのそいつらを…一閃。どさどさと肉片が落ちる音。服や顔には血がべったりつく。
第二段の魔物の波が来ない内に、動けないでいる大型魔物達をぐさり。もしここに他の騎士がいたら、今夜は肉祭りだ~だなんて騒いでいるのだろうか…
いとも簡単に想像できるそれにすこし力が抜ける。緊張していたし、丁度良く肩の力が抜けた。なんか今ならなんでも出るみたいな…ゾーンに入ってる感じがする。それも、ちゃんと自分の力を調節できる感じ。
私が万全の状態になったのを狙ってか、魔物がやってきた。したも、かなりの数。いくら結界があるとは言え流石に生身でこれはきついかもしれない。久しぶりだが完全獣化して倒すことにする。
「…グル」
喉がなるのを感じながら魔物達を見つめる。私の姿が変わったのをもろともせず、突っ込んでくる。といってもキーカル先輩が張った結界に阻まれてこっちに来れないのだが
「…危機管理能力がないやつは…こうやって死んでいくんだよな」
自分の相手がどうして姿が変わったのかすら分からないから…危機感を感じられなくて…狩られる。
この世はやはり弱肉強食。こんなに危機管理能力がないのによくここまで生きれたものだ。多分こいつらは今日私がここで殺さなくても、いずれ殺されていた。
それが人が魔物かは分からないが。どちらにせよ危機感のないやつは長くは生きられない…まあ、それは私達にも言えることではあるが…な。
第二波も終わり森に静寂が訪れる。とはいえ血の臭いですぐに寄って来るだろうから急いでここを離れるか。
獣化したまま疾走する…前にチョーカーに空間魔術をかける。かけ忘れて身分バレなんて絶対に勘弁だ。バッジによると、既に先輩達は拠点に帰っているようだ。動きが遅い。先輩達がいる方面に向かって進もうとして…大事なことに気がついた。
先輩達が行った方面=私の知らない抜け道=帰り方わからない
そもそもバッジの位置情報は周りの地形を読み取る程高度じゃない。わかるのは自分から何キロ離れたどこの方角に何人いるかってこと。地形なんて読み取ってくれないし、そこまでの行き方なんてもっての他だ。
これなら拠点までの行き方教えてもらえばよかった…そう後悔するも時既に遅し。呆然とその場に立ち尽くすしか私に選択肢はないのだった。
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