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グラード王国は殆どの人が世界共通語で話すため騎士団採用試験にも出題されない。この中だと私一人だけ理解できていないが、他がハイスペック過ぎるんだよ。流石団長と先輩…格の違いを見せつけられる。
さて、書類に書かれていた内容を教えてもらう。どうやらコント君に与えた指令がズラリと書いてあるらしい。
そしてどうやら文章が途中で切れていて次のページがあるっぽいので、報告書の一部をコント君が持っていたということだろう。
その内容はこんな感じ。
コント君が送られてきた理由はターリスク王国の内政の状況や軍事力の把握。そしてコント君の他にも既に何人かの侵入が成功していること。最後に古代魔術の使用についてーーー
「…使用について、何ですか?」
「そこで文が切られてるね。あの人から出てきた書類はこれだけだから続きを見ることは不可能だよ」
「そうですか。もしかしたらあの事件も…グラード王国、警戒を強めた方がいいのでしょうか…」
「ああ…今部下が総長に掛け合ってるところだ」
古代魔術。パッと思い付くものでいえば騎士団入りたての時に遭遇した奴隷商人だろう。
まさかあの人達とも繋がっている…?グラード王国だからな…可能性は否定できないが…あの人達からはグラード王国の気配が感じられなかった。特に目ぼしい情報を元に言っているわけではないが…可能性は低いと思う。
というかそれ以外にも超重要な事言ってたよな…何人か侵入が成功してるってかなりやばくないか?もしかしたら騎士団本部にも潜入してる可能性があるんだよな。
「いくら入団試験を難しくして一年の間監視をつけてもそれを掻い潜れないとは言いきれない…いや、潜入者がいるとするとこの年入ってきた騎士の方が可能性は高いか…って、何ですか?」
頭を整理しつつ思ったことを口にしていると視線が私に集まった。私変なこと口走ったか?別に何も変なことは言っていないような…?
最初に口を開いたのは第五班班長のラズ班長だった。
「いえ。カール、貴方話しましたか?」
「話すわけないだろ?ライの事だ。自分で気が付いたんだろ。まあライは疑う余地ないし問題は少ないだろ。それにここに読んでる時点でライに話すことは確定していたし…まあ、ちゃんと隠し通せなかった俺の落ち度でもあるが」
「…えっと、私不味いことしちゃいましたかね?」
「いえ…無いとは思いますがライはその事他の人に話してませんよね?」
「その事とは…」
「…新人の一年間はスパイじゃないかどうかを見極める期間だということです。これは一応秘匿情報なのですがね…二年目以上の騎士ならまだしも一年目の騎士に話されるとなるとかなり不味いのですが」
「あっ…大丈夫です。その事は誰にも話してないので」
「ならいいです。これ以降も新人騎士だけでなく他の騎士にもこの事は極力言わないようにお願いします」
「はい」
忘れてた。私の中ではほぼほぼ決定事項だったが別に誰かに教えられたわけではないんだよな。焦った…
「…まあ詳しくは後で聞くとして、ライの言う通り騎士団に潜入者がいる可能性は十分にあります。ですが二年目以上の騎士である可能性は低いでしょう。絞るとしたら一年目です」
私も一応一年目なんだけどね。それ言ったら色々終わるから黙っとくけど。先輩達もこっち見てるし思うことは全員一緒みたいだけど。
「ライは説明せずとも理解してしまったので仕方無しとしましょう。どちらにせよライは侵入者を見つけるための手助けをしてもらうつもりでしたから」
「…それはあまりにも酷じゃない?」
「異議がおありで?リン」
「異議というか…ライはまだ一年目なのに?」
「一年目だろうが関係ありません…それにライの方がやる気のようですし」
一斉に集まる視線。何か恐怖を感じて目をそらす…が、やる気だってなんでわかったんだろう。表情は相変わらず全然動かないし…どこで判断したんだ?
「…確かにやる気ね」
「だろ?ライ…いけますか?」
「勿論です」
うん。私はそんなにわかりやすいのか…そうであってくれ。何故見ただけでわかる。おかしいだろ。
「では宜しくお願いします。我々もできる限りのサポートをするので」
まあ私がやることになるだろうな、とは元々予想ついてた。
そもそも新人騎士に怪しまれずに一番長くいられるのは私だし一番話すのも私だ。向こうも同じ年に入ってきた同僚として接するから手がかりのある話をポロリとしてくれる可能性もある。
そんなわけでこの中の一番の適性者は私なのである。
「騎士団にいない可能性もあるのでそこの対策もしたいですね…第三,第四班で見回り中の聞き込みを怪しまれない程度にやるのと…あと何か意見ありますかね?」
「広場等に警備員の配置も検討した方がいい。怪しまれないように戦闘服じゃなくて完全私服で警備させよう」
「いいですね。ではそれらを考慮した上で見回りの割り振りを第三,第四班はお願いします」
「分かりました」
「分かった」
その後は以外とサクサク物事が決まった。
やはりグラード王国が絡むと議題が長引くのだろうか。ターリスク王国としては穏便に済ませたいと思っているのだが…グラード王国がそうさせてくれないんだよね…
戦力的にも勝てないとわかってる筈なのに…何故なのか。向こうに優秀な政治家がいないのか?流石に一人はいると思うが…その人の意見が無視されているんだろうな…きっと。可哀想に。
「ではこれにて会議を終わります。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」
よし。会議も終わったし…訓練にでも戻るか。
ぐっと伸びをしてから訓練をしようと立ち上がるとカール班長から声をかけられた。
「あ~ライ。さっきの事について…詳しく聞いていいか?なんで一年目に俺らが監視しているのがわかったのか…時間は沢山あるから、な?」
その時の班長の顔はまじで怖かった。多分泣く子も黙る。黙るどころか気絶する。私も足が震えて動けなくなった…まじで怖かった…
さて、書類に書かれていた内容を教えてもらう。どうやらコント君に与えた指令がズラリと書いてあるらしい。
そしてどうやら文章が途中で切れていて次のページがあるっぽいので、報告書の一部をコント君が持っていたということだろう。
その内容はこんな感じ。
コント君が送られてきた理由はターリスク王国の内政の状況や軍事力の把握。そしてコント君の他にも既に何人かの侵入が成功していること。最後に古代魔術の使用についてーーー
「…使用について、何ですか?」
「そこで文が切られてるね。あの人から出てきた書類はこれだけだから続きを見ることは不可能だよ」
「そうですか。もしかしたらあの事件も…グラード王国、警戒を強めた方がいいのでしょうか…」
「ああ…今部下が総長に掛け合ってるところだ」
古代魔術。パッと思い付くものでいえば騎士団入りたての時に遭遇した奴隷商人だろう。
まさかあの人達とも繋がっている…?グラード王国だからな…可能性は否定できないが…あの人達からはグラード王国の気配が感じられなかった。特に目ぼしい情報を元に言っているわけではないが…可能性は低いと思う。
というかそれ以外にも超重要な事言ってたよな…何人か侵入が成功してるってかなりやばくないか?もしかしたら騎士団本部にも潜入してる可能性があるんだよな。
「いくら入団試験を難しくして一年の間監視をつけてもそれを掻い潜れないとは言いきれない…いや、潜入者がいるとするとこの年入ってきた騎士の方が可能性は高いか…って、何ですか?」
頭を整理しつつ思ったことを口にしていると視線が私に集まった。私変なこと口走ったか?別に何も変なことは言っていないような…?
最初に口を開いたのは第五班班長のラズ班長だった。
「いえ。カール、貴方話しましたか?」
「話すわけないだろ?ライの事だ。自分で気が付いたんだろ。まあライは疑う余地ないし問題は少ないだろ。それにここに読んでる時点でライに話すことは確定していたし…まあ、ちゃんと隠し通せなかった俺の落ち度でもあるが」
「…えっと、私不味いことしちゃいましたかね?」
「いえ…無いとは思いますがライはその事他の人に話してませんよね?」
「その事とは…」
「…新人の一年間はスパイじゃないかどうかを見極める期間だということです。これは一応秘匿情報なのですがね…二年目以上の騎士ならまだしも一年目の騎士に話されるとなるとかなり不味いのですが」
「あっ…大丈夫です。その事は誰にも話してないので」
「ならいいです。これ以降も新人騎士だけでなく他の騎士にもこの事は極力言わないようにお願いします」
「はい」
忘れてた。私の中ではほぼほぼ決定事項だったが別に誰かに教えられたわけではないんだよな。焦った…
「…まあ詳しくは後で聞くとして、ライの言う通り騎士団に潜入者がいる可能性は十分にあります。ですが二年目以上の騎士である可能性は低いでしょう。絞るとしたら一年目です」
私も一応一年目なんだけどね。それ言ったら色々終わるから黙っとくけど。先輩達もこっち見てるし思うことは全員一緒みたいだけど。
「ライは説明せずとも理解してしまったので仕方無しとしましょう。どちらにせよライは侵入者を見つけるための手助けをしてもらうつもりでしたから」
「…それはあまりにも酷じゃない?」
「異議がおありで?リン」
「異議というか…ライはまだ一年目なのに?」
「一年目だろうが関係ありません…それにライの方がやる気のようですし」
一斉に集まる視線。何か恐怖を感じて目をそらす…が、やる気だってなんでわかったんだろう。表情は相変わらず全然動かないし…どこで判断したんだ?
「…確かにやる気ね」
「だろ?ライ…いけますか?」
「勿論です」
うん。私はそんなにわかりやすいのか…そうであってくれ。何故見ただけでわかる。おかしいだろ。
「では宜しくお願いします。我々もできる限りのサポートをするので」
まあ私がやることになるだろうな、とは元々予想ついてた。
そもそも新人騎士に怪しまれずに一番長くいられるのは私だし一番話すのも私だ。向こうも同じ年に入ってきた同僚として接するから手がかりのある話をポロリとしてくれる可能性もある。
そんなわけでこの中の一番の適性者は私なのである。
「騎士団にいない可能性もあるのでそこの対策もしたいですね…第三,第四班で見回り中の聞き込みを怪しまれない程度にやるのと…あと何か意見ありますかね?」
「広場等に警備員の配置も検討した方がいい。怪しまれないように戦闘服じゃなくて完全私服で警備させよう」
「いいですね。ではそれらを考慮した上で見回りの割り振りを第三,第四班はお願いします」
「分かりました」
「分かった」
その後は以外とサクサク物事が決まった。
やはりグラード王国が絡むと議題が長引くのだろうか。ターリスク王国としては穏便に済ませたいと思っているのだが…グラード王国がそうさせてくれないんだよね…
戦力的にも勝てないとわかってる筈なのに…何故なのか。向こうに優秀な政治家がいないのか?流石に一人はいると思うが…その人の意見が無視されているんだろうな…きっと。可哀想に。
「ではこれにて会議を終わります。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」
よし。会議も終わったし…訓練にでも戻るか。
ぐっと伸びをしてから訓練をしようと立ち上がるとカール班長から声をかけられた。
「あ~ライ。さっきの事について…詳しく聞いていいか?なんで一年目に俺らが監視しているのがわかったのか…時間は沢山あるから、な?」
その時の班長の顔はまじで怖かった。多分泣く子も黙る。黙るどころか気絶する。私も足が震えて動けなくなった…まじで怖かった…
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