華燭の城

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 だがナギは気丈に平静を装った。
 ここで隙を見せ、つけ込まれるわけにはいかない。
 そして、未だ取り乱し暴れ回る男に更なる追い打ちをかけた。

「なぁ、ガルシアは全てを話したぞ?
 もうお前ひとりが、ガルシアをかばったところで、意味がないのは判っただろう?
 正直に全て話せ。このままでは全ての罪を、お前ひとりで被る事になるぞ?」

 その言葉に男は、汗でびっしょりになった顔を上げた。
 わずか数分で何十も年を取ったような、疲弊ひへいしきった顔だった。

「そんな……! ま、待ってくれ…………!
 わかった……! 全部話す……!
 話すから、私の言い分も聞いてくれ!」

 その生気のない顔で、ナギ達の後ろに居並ぶ近衛兵を順に目で追い、
「でもここで……皆の前で話して……いいのか?」
 そうも言った。

 ナギの顔に懐疑の表情が浮かぶ。
 眉間に皺を寄せたまま、ヴィルの方を見た。
 その視線でヴィルが近衛に合図をすると、後ろにいた兵達は一斉に頭を下げ、部屋を出て行く。

 バタンと扉が閉まり部屋に三人きりになるとナギは、これでどうだ。とでも言うように冷たく男を睨みつけた。
 その威に負けて、男がゆっくりと口を開く。

「先に……言っておくが……。
 誘ってきたのは向こうだからな……!
 誰だって……断りはしないだろ……?
 あの美しい神の子を抱かせてやると言われて、断るヤツなどいない……」

「……! おいッ!! 
 ……今、何と言った……!?」

「え……。シュリ皇子と……。
 遊ばせて……くれると……ガルシアが……」

 ナギが目を見開き、唇を噛む。

「……それ……で……?」
 冷静を装っても、ショックで乾いた喉からは、それだけしか言葉が出てこない。

「……で……?
 で……って……あの……。ガルシアは全部……喋った……んだよな?」
 ナギの様子に違和を感じたのか、男が慌てて口をつぐむ。

「うるさい!! ガタガタ言わずに、さっさと全部吐け!!
 何かひとつでも隠したらどうなるか、判ってるだろうな!!」

「ヒッィ!」

 テーブルを叩きつけて立ち上がったナギの迫力に、男は身を震わせ、両腕で頭を覆うようにして、口早に話し始めた。

「その……石牢で……シュリに……。
 ……いや……シュリ皇子に……その媚薬と道具を使って……」

「……石牢とは何だ! ……道具とは!!」

「あの……その……ガルシアの部屋の奥が……牢の様な造りで……。
 ……そこで私の……針で……。
 あ、針は……いつも私が仕事で……拷問に使う道具で……。
 それでシュリ皇子の体を灼いた……り……刺し……たり……。
 その……色々と……愉しんだ後……その……。    
 ……ガルシアと二人で……犯……した……」

「……灼いて……犯し……っ……!
 ……クッ……!
 それだけか……!」

 ナギが自分の腰の剣に手を添える。

「ヒィヤッ! や、やめてくれ!
 ……話す! ……今、全部話すから!!」

 男は、もう何度目かもわからない叫びを上げた。
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