月見草戀物語

大和撫子

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その三

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 今宵は中秋の名月。月はやけにでかく、真珠みたいに輝いて見える。俺もお人よしだよな。彼を探して連れて来てやるなんてさ。彼女を口説く事もしないで。だけど放っておけないよ。彼女の花期は間もなく尽きちまう。

 おっ?! 月光に酔った月夜烏《つきよがらす》たちが森のケヤキに止まってカーカー浮かれて騒いでいるぞ! 奴らに聞いてみるか。

「久しいな」
「東風の旦那、お久しぶりでさぁ」
「ところで、この辺で新米の月光の使者を見かけなかったかい?」
「あぁ、それなら毎晩道に迷ったみたいにフラフラと空を漂っていますぜ」
「そうか、有難う。またな」
「だけど男ですぜ? そいつ」

 思わず苦笑しちまった。俺はそんなに女好きに見えるのか。まぁ、良い。この辺りをゆっくりと旋回してみるか。

 生前というか、前世の彼女は、黄色い巻き毛に翡翠の瞳、勝気な感じだったそうだ。奴は銀髪ストレートに銀色の瞳だそうだけど、どう変わっているかな。ま、どうせナヨナヨとした優男だろうさ。

 突如、真珠色の大きな翼が目に入った。薄青色の狩衣に紺色の袴姿。細身で背の高い男だ。両手に月の光を抱えて地上に撒いている。象牙色の肌に面長の輪郭。酷く端正な顔立ちだ。漆黒の髪は右耳の下あたりで一つに束ね、清流みたいに流れていた。だけど瞳は酷く虚ろで。俺の事も気づかないくらい上の空だ。

「ちょっといいかな?」

 口惜しいけど、本当に美形だった。驚いて俺を見つめる涼やかな目元は、こっくりとした黒で。吸い込まれそうなほど深く澄み切っていた。仮に彼女の事を覚えていなくても、引き合わせたらたちまち恋に落ちてしまうだろう。

 今なら、見つからなかった事にして俺が咲夜と残り時間を過ごせば良い、そんな欲望が胸を突きあげる。

 けれども、彼女の涙に艶めく星空の瞳が思い浮かんだ。次の瞬間、

「来い! 銀鈴《ぎんれい》! 咲夜が待っている!」

 と彼の背後に回り込み、羽交い締めにして強制的に彼女の元へと飛び立っていた。

「え? あ、あの……何故、私の名を?」

 動揺する彼。そう、彼女が俺に愛しそうに告げた名は銀鈴。声も綺麗だった。横笛の音色みたいで。

「もう、時間が無い。行くぞ!」

 有無を言わさず、奴を抱えたまま飛び立った。いささか強引過ぎたか。でもまぁ、案ずる事は無いさ。彼女に引き合わせれば、何もかも解決しちまうだろうからな。

 ……くそっ! 何でこんな当て馬役、自ら……
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