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土曜日。
いつものように冒険者ギルドで依頼を受けようとしていると、
「サトウ」
という声をかけられた。
「どうしたんですか、マリアさん」
「サトウ、冒険者ギルドで何か依頼を受けるんですか?」
「ええ。休日に冒険者ギルドで依頼を受けるのが、私の趣味でして」
「そうなんですか? ならサトウ、私と一緒に冒険者ギルドの依頼を受けませんか?」
「一緒にですか? ぜひっ」
「なら一緒にやりましょう。サトウは一体どんなクエストをやるんですか?」
「恥ずかしながら、薬草採集とモンスター討伐というクエストしかやらないんです。あまり難易度の高いクエストをして、けがをしてしまっても困るので」
休日の趣味でけがをしてしまっても困る。
趣味でけがをして、本業である仕事に支障をきたしても困るのだ。
「ええと……じゃあ薬草採集とか、そういったクエストをやっているんですか?」
「はい。マリアさんもそんな簡単なクエストでいいですか? 私は簡単なクエストしかやっていないんですけど」
「薬草採集、やりたいですっ。私もサトウと一緒に薬草採集をやろうと思います」
「では一緒にやりましょう」
「はいっ」
というわけで、いつものように冒険者ギルドで薬草採集のクエストを受けて、外に出る。
いつものように村を出ると、そこでいつものように声をかけられた。
「今日も森に行くのか。頑張りなよ、兄ちゃん」
「はい」
「今日は女連れか」
にやにやとした顔で言われた。
「はい。まあ今日はほかの冒険者さんと一緒に行くことにしました」
「頑張んなよっ」
「はいっ」
そして森の中までやってくる。
いつもならそんなミスはしないのだが、森の木に足を引っかけてしまった。
「いてえええええええええええええええええ」
と言って、地面に思いっきり顔をぶつけてしまう。
こんなことはいつもしないというのに、なぜせっかく女の子と一緒に森の中にやってきたという日に、こんなことをしなくてはならないのだろうか。
「もう、サトウ、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。別になんの問題もないっ」
なんの問題もないことはなかった。
むしろ大問題だった。
顔が痛い。
まるで猫に顔を引っかかれたように、顔が真っ赤になっているであろう。
というくらいに、顔に痛みを感じる。
「もう、サトウはおっちょこちょいなんですねっ」
「悪い悪いっ」
「サトウ、薬草のある場所まで私が案内をしてあげますか?」
「いや、大丈夫。場所はわかっているから。うっかりとして、足を地面に引っ掛けてしまっただけだから」
女の子と一緒に薬草を採集するなんていうことが初めてのことだったので、オレは今日のクエストに力が入りすぎてしまっていたのだろう。
まさか地面に足をかけて転んでしまうだなんて、そんなことになるとは思ってもいなかったのだ。
「はい。これで安心です」
「なぜ手をつなぐ? そんなにもオレのことが信用できないか?」
「いえ、この方が安心だと思うので」
「安心じゃないんだが……」
むしろオレの胸がどきどきと高鳴り、安心などしていられない。
というか、女の子に道案内をしてもらうなんて、なんだか恥ずかしい。
むしろ男なのだから、オレが女の子の腕を引っ張っていくべきだというのに、オレは一体何をやっているのであろうか。
情けない。
だが。女の子を前にして、なんだか気分が高揚としすぎてしまっているというか、そんな気分なのである。
「早く行きますよっ、サトウ」
「ああ。先に進もう、マリアさん」
「よければ、回復魔法をかけて差し上げましょうか?」
「いえ、このくらい自然になおるんで……別に大丈夫です」
「せっかくなので、回復魔法でその顔の傷を治しますね、ヒール」
顔に真っ赤な傷ができていたのが、その回復魔法であっという間になおる。
「おお。マリアさん、すごい魔法使いだったんだな。顔の傷をなおすことができるだなんて」
「こんなこと、冒険者をやっていれば、誰だってなおすことができますよっ」
「そんなことないよ、誰だってできるわけではないさ」
「とにかく行きましょうか、道は長いですからね」
「そんなに長くはないけどな、薬草が生えている群生地帯はすぐそこだ」
「あははは。私はあんまり薬草採集のクエストはないので、群生地帯はわからないんです。さすがはサトウですね、薬草が生えている場所がわかるなんて」
「なあに。簡単なクエストはオレはやりなれているからな。さあて、すぐそこだぞ。クエストのクリアはあともう少しだっ」
「ならさっさとクリアしてしまいましょう」
「そうだな」
オレはマリアさんとともに、薬草が生えている場所まで進むことにした。
群生地帯はすぐそこにあった。
「あった! マリアさん、あったぞ」
「ありましたね、サトウ」
「ああ。これで薬草を入手すれば、このクエストはクリアだな」
「そうですねっ」
始まりはどうなることかと思いきや、終わりよければすべてよしである。
マリアさんに回復魔法をかけてもらえたし、まあいうことなしだな。
いつものように冒険者ギルドで依頼を受けようとしていると、
「サトウ」
という声をかけられた。
「どうしたんですか、マリアさん」
「サトウ、冒険者ギルドで何か依頼を受けるんですか?」
「ええ。休日に冒険者ギルドで依頼を受けるのが、私の趣味でして」
「そうなんですか? ならサトウ、私と一緒に冒険者ギルドの依頼を受けませんか?」
「一緒にですか? ぜひっ」
「なら一緒にやりましょう。サトウは一体どんなクエストをやるんですか?」
「恥ずかしながら、薬草採集とモンスター討伐というクエストしかやらないんです。あまり難易度の高いクエストをして、けがをしてしまっても困るので」
休日の趣味でけがをしてしまっても困る。
趣味でけがをして、本業である仕事に支障をきたしても困るのだ。
「ええと……じゃあ薬草採集とか、そういったクエストをやっているんですか?」
「はい。マリアさんもそんな簡単なクエストでいいですか? 私は簡単なクエストしかやっていないんですけど」
「薬草採集、やりたいですっ。私もサトウと一緒に薬草採集をやろうと思います」
「では一緒にやりましょう」
「はいっ」
というわけで、いつものように冒険者ギルドで薬草採集のクエストを受けて、外に出る。
いつものように村を出ると、そこでいつものように声をかけられた。
「今日も森に行くのか。頑張りなよ、兄ちゃん」
「はい」
「今日は女連れか」
にやにやとした顔で言われた。
「はい。まあ今日はほかの冒険者さんと一緒に行くことにしました」
「頑張んなよっ」
「はいっ」
そして森の中までやってくる。
いつもならそんなミスはしないのだが、森の木に足を引っかけてしまった。
「いてえええええええええええええええええ」
と言って、地面に思いっきり顔をぶつけてしまう。
こんなことはいつもしないというのに、なぜせっかく女の子と一緒に森の中にやってきたという日に、こんなことをしなくてはならないのだろうか。
「もう、サトウ、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。別になんの問題もないっ」
なんの問題もないことはなかった。
むしろ大問題だった。
顔が痛い。
まるで猫に顔を引っかかれたように、顔が真っ赤になっているであろう。
というくらいに、顔に痛みを感じる。
「もう、サトウはおっちょこちょいなんですねっ」
「悪い悪いっ」
「サトウ、薬草のある場所まで私が案内をしてあげますか?」
「いや、大丈夫。場所はわかっているから。うっかりとして、足を地面に引っ掛けてしまっただけだから」
女の子と一緒に薬草を採集するなんていうことが初めてのことだったので、オレは今日のクエストに力が入りすぎてしまっていたのだろう。
まさか地面に足をかけて転んでしまうだなんて、そんなことになるとは思ってもいなかったのだ。
「はい。これで安心です」
「なぜ手をつなぐ? そんなにもオレのことが信用できないか?」
「いえ、この方が安心だと思うので」
「安心じゃないんだが……」
むしろオレの胸がどきどきと高鳴り、安心などしていられない。
というか、女の子に道案内をしてもらうなんて、なんだか恥ずかしい。
むしろ男なのだから、オレが女の子の腕を引っ張っていくべきだというのに、オレは一体何をやっているのであろうか。
情けない。
だが。女の子を前にして、なんだか気分が高揚としすぎてしまっているというか、そんな気分なのである。
「早く行きますよっ、サトウ」
「ああ。先に進もう、マリアさん」
「よければ、回復魔法をかけて差し上げましょうか?」
「いえ、このくらい自然になおるんで……別に大丈夫です」
「せっかくなので、回復魔法でその顔の傷を治しますね、ヒール」
顔に真っ赤な傷ができていたのが、その回復魔法であっという間になおる。
「おお。マリアさん、すごい魔法使いだったんだな。顔の傷をなおすことができるだなんて」
「こんなこと、冒険者をやっていれば、誰だってなおすことができますよっ」
「そんなことないよ、誰だってできるわけではないさ」
「とにかく行きましょうか、道は長いですからね」
「そんなに長くはないけどな、薬草が生えている群生地帯はすぐそこだ」
「あははは。私はあんまり薬草採集のクエストはないので、群生地帯はわからないんです。さすがはサトウですね、薬草が生えている場所がわかるなんて」
「なあに。簡単なクエストはオレはやりなれているからな。さあて、すぐそこだぞ。クエストのクリアはあともう少しだっ」
「ならさっさとクリアしてしまいましょう」
「そうだな」
オレはマリアさんとともに、薬草が生えている場所まで進むことにした。
群生地帯はすぐそこにあった。
「あった! マリアさん、あったぞ」
「ありましたね、サトウ」
「ああ。これで薬草を入手すれば、このクエストはクリアだな」
「そうですねっ」
始まりはどうなることかと思いきや、終わりよければすべてよしである。
マリアさんに回復魔法をかけてもらえたし、まあいうことなしだな。
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