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取り敢えずは一件落着と言って良いのだろうか?

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「って事があったわけよ!」
俺は得意げな表情を浮かべて、自分の家の庭先で、ロージーを相手に、あの誘拐事件の事を語っていく。
「へぇ~、それで、その後はどうなったわけさ?」
「そうそう、その後が大変でさーー」
俺は人差し指を立てて、事件の詳細を語っていく。あの後はサミュエルもガブリエルも、ロイヤルもディビッドもその場に居た全員が、何食わぬ顔で食事をとっていたエミリオに殺意を向けるので、俺が慌てて、それを止めたのだ。
その後、駆け付けた騎士団により、父ガラバもエミリオも捕らえられて監獄に送られた。
その後、裁判でガラバ公爵家は本来ならば、お取り潰しという事になるのだが、息子のエミリオが俺の誘拐に反対であり、王国の騎士団に協力し、スパイの役割を果たしていた事や情報を漏洩した事、父親が誘拐に至る決定的な証拠を掴んだ事や父の逮捕に貢献した事などを考慮され、我々の敬愛の対象である本来ならば、連帯責任で捕らえられるところを国王陛下は寛大な処置を施された。
まず、元凶である父ガラバは鞭打ちの上、投獄、釈放後は息子を頼り、屋敷の隠居する事を命じられた。
では、息子ガラバことエミリオはどうなったのかといえば、なんと罰は一年間の身分剥奪だけで済んだ。
敬愛する国王陛下曰く、平民の身分に落ち、罪を顧みろという事らしい。
その間、ガラバ公爵家は遠縁の親戚の人が守ってくれるらしいから、安心しろ、という事も国王陛下は仰せられた。
この話を聞くと、俺が前世でよく読んだペルシアと十字軍の戦争をモデルにした異世界ファンタジーの主人公の裁きを思い出す。
一年間の反省の後に、ガラバ公爵家の当主になる事を命じられ、父親の罪を反省し、子孫を教育し、公爵家を導いていく事になったという。
爵位の降格やおとり潰しという厳格な処置でなかった事を知ると、彼はホッと溜息を吐いていた。
では、暫くの間、身分を剥奪された彼は何処にいるのかというと、
「どうぞ、お茶です。お嬢様」
そう、ここだ。一ヶ月の間、彼はここで執事をする事になっている。
俺はエミリオに礼を言い、彼の手から紅茶を受け取る。
やはり、エミリオの入れてくる紅茶は美味い。飲むととても落ち着く。
俺がホッとしていると、ロージーが俺の腕の裾を引っ張って、
「ねぇ、エミリオって彼だよね?今は身分が剥奪されているとはいえ、公爵家の令息なんだよね?こんなところで働かせていいの?」
「構いませんよ。私が望んだのですから。短い間ですが、お嬢様にお迎えできて光栄です」
ロージーの疑問はエミリオが代わりに答えてくれた。
その眩しい笑顔でそう言われれば、ロージーも納得せざるを得ないのだろう。
彼女は返答の代わりに、微笑み、黙って、彼が淹れた茶を飲み干す。
その顔は満足そうのものであった。
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