122 / 261
続編記念ss4
しおりを挟む
お椀の半分くらいを食べたところで咀嚼が苦しくなってきて、由良さんはそれに気づいたのか匙を置き、ぎゅっと優しく目を細める。
「もうお腹いっぱい?」
「すみません…。」
せっかく作ってもらったのに、残しちゃった…。
「少しでも食べられて偉かったね。」
俺は俯いて謝ったけれど、彼は残したことを気にするそぶりを見せずに代わりに頭を撫でて食べたことを褒めてくれた。
「じゃあ、薬飲もうか。口開けて。」
由良さんのふしばった長い指がシートをぱちんと弾いて錠剤を取り出す、その仕草が色っぽい。
そんなことまで…、と思いながらも結局口を開けて錠剤を挟んだ彼の指先を食む。
「はい、水。」
由良さんから水の入ったコップを受け取り飲もうとしたが、上手に飲めずに大半をこぼしてしまった。
少しずつ錠剤が溶けてきて口の中が苦い。
それに由良さんの洋服にもすこし水がかかっている。
…今日俺、本当にだめだな…。
「すみません…。」
「謝らない。ほら、上向いて。」
ふと、なぜか俺が飲んでいたコップの水を由良さんが口に含んだ。
…喉渇いてたのかな…?でもうつるから俺の口つけたのから飲むのはあんまりよくないと…
ぼうっと考えている間に由良さんの指に顎を緩く持ち上げられる。
そのまま彼の顔がこちらに近づいてきて。
由良さんの紫紺の瞳が視界いっぱいに映し出されて、俺は驚いて目を見開く。
こんなに近くで見たら風邪のせいじゃなくても体温が上がりすぎてタンパク質が凝固して死ぬかもしれない。
あっ、でも由良さんに殺されるなら本望かな…。
本気でそんなことを考える程度には思考回路がおかしくなっていて、唇に何かがあたるまで由良さんの行動の意味を理解することができなかった。
見ると由良さんの唇が俺の唇に押し当てられていて、驚いて緩く開いた唇の隙間から、まだ冷たさを残した水が流し込まれてくる。
少しずつ流れ込んでくる水のせいで俺は反射的にこくりと喉を鳴らし、水と共に錠剤を飲み込んだ。
…水、気持ちいい…。
何が起こったのかに対する理解は唇が離れた後からついてきた。
由良さんの飲んだ水が俺の口の中に…しかもキスをしながら…。
「あ、あのっ…うつる… 」
動揺に目を泳がせながらしどろもどろに言葉を紡ぐ。
けれど由良さんは全く気にならない様子でくしゃりと笑って、
「看病の一環だよ。じゃあ僕は片付けをしてくるね。」
と言いながら椅子から立ち上がった。
「…幹斗君…?」
問いかけられて、反射的に彼の袖を掴んでいたことを悟る。
こんなに甘やかしてもらってさらにそばにいて欲しいなんてわがままだ。そんなこと言えない。
なのにどうして掴んでしまったのだろう。
「……つい…すみません…、、」
「だから、謝らないで。」
けれど由良さんは全てをわかっているように頷き、俯く俺の掌を彼の手が柔らかに包み込んだ。
「大丈夫、寝るまでそばにいて、片付けたらまたずっとそばにいるよ。だから安心して眠りなさい。」
「うん…。」
俺は彼の言葉にひどく安心して。
そのまま由良さんの手の温かさを感じていたらいつの間にか眠っていて、次の日には7度5分まで熱が下がっていたのだった。
「もうお腹いっぱい?」
「すみません…。」
せっかく作ってもらったのに、残しちゃった…。
「少しでも食べられて偉かったね。」
俺は俯いて謝ったけれど、彼は残したことを気にするそぶりを見せずに代わりに頭を撫でて食べたことを褒めてくれた。
「じゃあ、薬飲もうか。口開けて。」
由良さんのふしばった長い指がシートをぱちんと弾いて錠剤を取り出す、その仕草が色っぽい。
そんなことまで…、と思いながらも結局口を開けて錠剤を挟んだ彼の指先を食む。
「はい、水。」
由良さんから水の入ったコップを受け取り飲もうとしたが、上手に飲めずに大半をこぼしてしまった。
少しずつ錠剤が溶けてきて口の中が苦い。
それに由良さんの洋服にもすこし水がかかっている。
…今日俺、本当にだめだな…。
「すみません…。」
「謝らない。ほら、上向いて。」
ふと、なぜか俺が飲んでいたコップの水を由良さんが口に含んだ。
…喉渇いてたのかな…?でもうつるから俺の口つけたのから飲むのはあんまりよくないと…
ぼうっと考えている間に由良さんの指に顎を緩く持ち上げられる。
そのまま彼の顔がこちらに近づいてきて。
由良さんの紫紺の瞳が視界いっぱいに映し出されて、俺は驚いて目を見開く。
こんなに近くで見たら風邪のせいじゃなくても体温が上がりすぎてタンパク質が凝固して死ぬかもしれない。
あっ、でも由良さんに殺されるなら本望かな…。
本気でそんなことを考える程度には思考回路がおかしくなっていて、唇に何かがあたるまで由良さんの行動の意味を理解することができなかった。
見ると由良さんの唇が俺の唇に押し当てられていて、驚いて緩く開いた唇の隙間から、まだ冷たさを残した水が流し込まれてくる。
少しずつ流れ込んでくる水のせいで俺は反射的にこくりと喉を鳴らし、水と共に錠剤を飲み込んだ。
…水、気持ちいい…。
何が起こったのかに対する理解は唇が離れた後からついてきた。
由良さんの飲んだ水が俺の口の中に…しかもキスをしながら…。
「あ、あのっ…うつる… 」
動揺に目を泳がせながらしどろもどろに言葉を紡ぐ。
けれど由良さんは全く気にならない様子でくしゃりと笑って、
「看病の一環だよ。じゃあ僕は片付けをしてくるね。」
と言いながら椅子から立ち上がった。
「…幹斗君…?」
問いかけられて、反射的に彼の袖を掴んでいたことを悟る。
こんなに甘やかしてもらってさらにそばにいて欲しいなんてわがままだ。そんなこと言えない。
なのにどうして掴んでしまったのだろう。
「……つい…すみません…、、」
「だから、謝らないで。」
けれど由良さんは全てをわかっているように頷き、俯く俺の掌を彼の手が柔らかに包み込んだ。
「大丈夫、寝るまでそばにいて、片付けたらまたずっとそばにいるよ。だから安心して眠りなさい。」
「うん…。」
俺は彼の言葉にひどく安心して。
そのまま由良さんの手の温かさを感じていたらいつの間にか眠っていて、次の日には7度5分まで熱が下がっていたのだった。
11
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる