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1巻
1-3
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ハッと我に返ると、優貴が千佳の大腿を温かいタオルで拭っているところだった。何を拭っているのかわからないまま、千佳は身を起こした。
瞬間、秘部がズキッと痛んだ。思わず呻き声を漏らす。
「ううっ……」
「大丈夫か? ……かなり傷つけてしまった」
シーツを見ると、インクを落としたような赤い染みがいくつもあった。
(これが、処女の証なのね。どうして、初めての時って、こんなにも痛いの? この痛みは最初だけ? それともずっと続くの?)
あんな痛みをもう一度体験するのなら、もう二度とセックスはしたくないと思った。
「どうして初めてだと言わなかった?」
初めてだと言ったとしても、優貴は決して行為をやめなかっただろう。やめてと懇願しても、彼はそのまま突き進んだのだから。
終わったことについて今さら何を言っても無駄だと思った千佳は、ただ頭を振った。
「シャワーを浴びさせて……」
優貴が千佳に手を伸ばしてきたが、今は触れて欲しくなかった。
千佳は、彼の手を避けるように胸元を隠して立ち上がった。絨毯の上に落ちている自分の鞄が、目に入る。それを取ろうとして一歩足を踏み出したが、大腿が震えてその場に崩れ落ちそうになった。
振動だけでズキッと秘部に痛みが走る。それでも何とか堪えて鞄を掴むと、曇りガラスで仕切られたシャワー室へゆっくりと向かった。
曇りガラスとはいってもかなり透けているので、優貴から見えるかもしれない。
だが、既に裸を見られてしまっている。今さら気にしても仕方がないと言い聞かせると、ゆっくりと服を脱いでシャワーの飛沫の下に立った。
ポタッと血が下に落ち、お湯で薄められて排水口へと流れていく。まだ出血は止まっていなかった。幸い、生理不順のためにナプキンはいつも常備している。それで何とかなると思った途端、千佳は安堵のため息を漏らした。
優貴から離れたのは、彼の前にいるときちんと考えることができないからだ。それに、少しでも触れられると、また躯が反応してしまいそうになる。それらを全て排除した場所で、一人で考えたかった。
これから、どうするべきか……を。
(優貴さんは、わたしを手放せないって言っていた。……わたしは?)
千佳は、自分の躯をしっかり抱き締めて心に訊ねる。このまま優貴との接点を断つのか、それとも彼を受け止めるのかと。
優貴を失うと思っただけで、躯が震える。彼の前で感じる恐れよりも、今まで受けていた誘いがなくなり、空虚な生活になる方が怖い。
(わたしは、いつの間にか優貴さんを愛していたのね。心が温かくなるような恋ではないけれど、これもまた恋なんだわ。優貴さんのことを考えるだけで緊張してしまうけれど、わたしは御曹司よりも優貴さんを……)
次男という立場だが、優貴もまた水嶋グループ御曹司の一人。いつの日か、どこかの令嬢と付き合うようになる。
でも、その日が訪れるまでは、決して優貴は千佳を手放したりはしない。そう考えるだけで心が浮き立つのがわかった。
この先に別れがあることは承知しつつも、優貴が千佳を一人の女性として見てくれるのであれば、こんなにも素晴らしいことはないからだ。
(もしレイプをされなければ、わたしの気持ちも徐々に高まって、数ヶ月後には優貴さんと素敵なスタートを切れたかもしれない。そう思うと残念だけど……優貴さんにレイプされなければ、わたしは自分の気持ちに向き合うことがなかったかもしれない)
起こらなかったことを考えるより、起こってしまったことに向き合うべきだと思った千佳は、シャワーを止めると何とか服を着た。ボタンが全て弾け飛んでいるので、ブラウスのボタンは留められないが、鞄の中に安全ピンが数本入っていたはず。もちろん裁縫道具も入っているが、優貴の前で縫うような真似はしたくない。
何が起こったのか、もう一度優貴に見せつけてしまうと思ったからだ。
(どうしてわたしは……自分でも関わり合いたくないと思っていた優貴さんを好きになってしまったの? レイプされた相手だというのに……)
それでも、千佳は彼に言うつもりだった。レイプされたことは心の傷として残るかもしれないが、それでも優貴との縁は切りたくないと。
一通り身仕度が整うと、千佳は意を決してシャワー室を後にした。
優貴に気持ちを伝えようと、千佳は恐る恐る面を上げた。
その瞬間、思ったことを彼に伝える機会は失われた。優貴が凄い形相でこちらを睨んでいたからだ。
「こんなことになったが、俺は……千佳を諦めない。逃げようとすれば追いかけて、絶対手に入れる。他の男には……絶対に渡さない!」
まるで、千佳が去っていくと思っているような口ぶりだ。
何がなんでも離れることは許さないと牽制してきた優貴に、千佳は何も言えなかった。もしかしたら、何か言えば良かったのかもしれない。
しかし、彼の前に立つといつも上手く気持ちを伝えられない千佳が、こんな風に怒りに駆られている優貴にきちんと言葉を伝えられるはずもない。
もし、千佳が気持ちを伝えようとしたとしても、こんな状態では優貴の心へは届かないだろう。
だから、千佳は何も言わなかった。ただ目を伏せて、鞄をギュッと握り締めていた。
優貴の前では言いたいことを何も言えなくなってしまう千佳。大切な言葉を言わずに我を通す優貴。性格から見ても絶対重なり合いそうになく、心もすれ違ったままの二人に楽しい未来はあるのだろうか?
いろいろな波乱が待ち受けている二人のラブストーリーが、今始まろうとしていた。
――五月。
「彼とイタリアに行ってきたの」
「いいですね、彼氏とだなんて。わたしは、大学時代の友人とトルコへ」
ゴールデンウィーク明けの、秘書室でのこと。新作ブランド品の品評会のようなものが、先輩秘書たちの間で行われていた。
彼女たちから旅行のお土産をもらった千佳だったが、社会人二年目となった今でも、この価値観の違いに驚かされる。
(どうして、旅行代金が高い時期に行きたがるの? わたしなら……絶対に行けない)
秘書室では皆パスポートを所持しなければいけないので、千佳も紺色の五年パスポートを作った。そのパスポートは、未だに真っ新ときている。仕事で使う機会がない限り、二十三歳で更新するまでずっとインクの臭いはしないだろう。
「千佳はどこかへ行った?」
突然話しかけられて振り向くと、いつも親切に話しかけてくれる同期の桜田だった。
異例で高卒入社をした千佳は、先輩秘書たちから爪弾きにされていた。
だが、桜田だけは周囲の陰険な態度を気にもせず、ずっと千佳を同僚として友達として扱ってくれている。
「いえ、わたしは……」
そこまで言って、千佳は顔を顰めた。というのも、このゴールデンウィークの初日に優貴から呼び出しを受けた時のことが脳裏に浮かんだからだ。
レイプされた後、優貴はその行為を謝るように千佳を食事へ誘った。
優貴に惹かれていると気付いたからには、もちろん断るつもりもなかった。
楽しい一時を過ごせたとは言い難いが、それでも食事を共にすることが嬉しくて千佳は静かに彼に従った。
細身の千佳を太らそうとしていたのか、それからゴールデンウィークまでの期間は食事に徹し、二人の関係は完全なプラトニックだった。
今回は休日ということもあり、恋人同士のようにデートを楽しめると期待した千佳は、優貴から連絡を受けると、すぐに彼が車を停めている大通りへと急いだ。
だが、優貴は千佳の顔を見るなり表情を強ばらせた。
どうしてそんな顔をするのかわからないまま、千佳は彼の運転する車の助手席に座った。
優貴はしばらく走らせた後いきなり車を停めて、とても激しいキスをしてきた。唇が痛かったが何も言えず、千佳は彼にされるままキスを受けた。
どこへ行くのかとも訊けずに前を見ていると、優貴は郊外へと車を走らせた。山道へ少し入ったところで、いきなり西洋のお城のような場所へ入った。中が見えないようになっているビニールのカーテンを潜って、初めてそこがどこなのかわかった。
ラブホテル……
優貴は、千佳を求めていた。
レイプされてから、一週間後のことだった。
優貴がデートを楽しむのではなく、突然躯を求めてきたことに少し青ざめたが、千佳は彼を拒むようなことはしなかった。
またあの痛さに耐えなければいけないのかと思うと、躯が拒否反応を起こしそうだった。それでも前戯として躯に触れられた愛撫は心地好く、もう一度あの快楽を感じてみたいと密かに思っていた。
だが、結果は散々だった。
優貴が千佳の膣内に進入しただけで痛みが起こり、引き攣れる感覚に耐えられず、涙を流しながらやめてと懇願するはめになった。そのことに優貴は苛立ち、千佳は何も言えずただ目を伏せるしかなかった。
優貴を心から受け入れていないから、千佳の躯が開かないとでも思っているのだろう。
そうではないとわからないのだろうか?
優貴に対して足を広げる時点で、既に心は彼を受け入れている。
ただ、躯が優貴の求めに応じない。
無言のまま二人はラブホテルを後にし、優貴は千佳を送るとそのまま走り去った。二人が共に過ごした時間は、正味三時間。
その日を境に、ゴールデンウィークが終わった今も優貴からの連絡はなかった。
気にしてはいけないと言い聞かせながら、千佳は同僚に頭を振った。
「特に……どこへも行ってません」
千佳は彼女に背を向け、自分の席に座った。
お昼からのスケジュールを確認した後、千佳は先輩秘書から渡された資料を手にコピー機へと向かった。
(それにしても……わたしと優貴さんの関係っていったい何? 恋人同士?)
千佳は、そっと小さく頭を振った。
そもそも、手放したくない、他の男には渡さない……とは言われたが、肝心な言葉〝付き合ってください〟とは、一度も言われたことはない。
つまり、二人の関係は……セックスフレンド?
千佳は口元を歪めた。
(優貴さんが満足して初めてそういう関係っていうんでしょ? わたしは、優貴さんを悦ばせたことは一度もないから、そういうお友達でないことは確か。そうよね?)
休み明けということで、仕事はそんなに溜まっていなかった。千佳は、やるべき仕事を一つずつ終わらせていく。先輩秘書の出張精算や秘書室内の備品補充など、簡単な作業ばかりだったので、今日は定時で帰れる予定だった。
そのはずなのに、何故か退社時間になっても千佳の前にはファイルが山積みになっている。
「鈴木さん、ごめんなさいね。この後用事があるから、これ頼めるかしら?」
昼間にブランド品の品評会をしていた先輩秘書の二人が、椅子に座っている千佳を見下ろす形で新たな仕事をそこに置く。
「お願い。どうせ、鈴木さんは真っ直ぐ家に帰るだけでしょ? それに、デートの予定もないと思うし」
「……わかりました」
いつものように、千佳は従順に答えた。事実、先輩秘書の言葉は的を射ている。千佳に、反論する余地はない。
一時間あれば処理できそうな書類を受け取ると、肩から軽く力を抜いて残業に取りかかった。
予想どおり、残業しているのは千佳唯一人。早く終わらせることができれば、十九時過ぎには会社を出ることが可能だろう。
先輩から渡されたメモには、明日重役会議で配られる資料に注釈として添付するファイルを探すようにと指示が書いてある。それを奥の書棚から探し出すと、必要箇所をコピーした。
後は、明日必要部数をコピーしてとじればいいだろう。
時計を見ると、既に十九時三十分を過ぎていた。書類を鍵付きの引出しに入れ、鞄を手にして更衣室へ向かおうとした時、秘書室内の電話が鳴り出した。
びっくりした千佳は、すぐに引き返して受話器を取った。
「秘書室、鈴木です」
『……上にある、俺の部屋に来てくれ。ナンバーは……』
その言葉だけで、通話は切れた。
突然耳に飛び込んできた優貴の言葉に、千佳の心臓が勢いよく飛び跳ねた。通話は既に切れているが、千佳はしばらく受話器を握り締めてその余韻に浸る。まだ、優貴から忘れられてはいなかったと安堵さえしていた。
だが、優貴の発した言葉の意味を理解すると、一瞬で緊張が走った。
(優貴さんが、わたしを彼専用の執務室へ呼んでいる?)
千佳は、胸元に下げている社員証をギュッと握った。
管理職の人たちの個室がある上の階へ行くには、セキュリティの関係から特別な暗証番号が必要だった。秘書たちは管理職とも仕事をするので、秘書専用の暗証番号が常に伝達されている。
だが、まだ下っ端の千佳にはその番号を知る権利はなかった。事実上、上の階への立ち入りは禁止となっている。そんな千佳に、優貴は大切な暗証番号を教えてきた。
千佳は、微かに手が震えるのを感じながら受話器を置いた。
「どうしてわたしを呼ぶの? しかも、上に?」
何が待ち受けているのか全く想像できないが、遅れて行くことで優貴の怒りを買う方がもっと恐ろしい。
千佳はすぐに鞄を持つと秘書室の電気を消し、エレベーターホールへ向かった。
優貴の執務室がある階で降りると、防弾ガラスのドアがあり、その横にセキュリティパネルが設置されていた。社員証のICチップを読み取れるようにかざすと、優貴が口にした暗証番号を恐る恐る入力する。
無事に照合が終わると、ドアがゆっくりと開いた。
階下よりもさらに高級な絨毯にビックリしながら廊下を進んでいくと、経営管理室のフロアに辿り着いた。さらにその奥へ進むと、重厚なドアに水嶋優貴と書かれたネームプレートが貼られているのが目に飛び込む。
(ここが、優貴さん専用の執務室なのね)
こんな場所に、一介の秘書が踏み込んでいいのかわからなかったが、勇気を奮い起こすと軽くドアをノックをした。
――コンコンッ。
どうして優貴がこの場所に呼び寄せたのか、全くわからない千佳の表情は少し青ざめていた。
思っていたよりも早くドアが開かれ、千佳はハッとして面を上げた。優貴だと思ったのに、何故かそこには見知らぬ男性がいた。
頭の中をフル回転させて、その人物が誰なのか必死になって思い出そうとしていると、目の前の彼がドアを大きく開けて千佳を室内へ促した。
「……し、失礼します」
さらに奥へと通じるドアの近くに、とても高価そうなデスクが一つあった。視線を右へ向けると、四人分のデスクがアイランド形式に置かれている。その横には、応接用のソファが完備してある。
「さ、こちらへ。優貴さんがお待ちになっております」
(つまり、この目の前にいる彼は、わたしがここへ来ることを知っていた? それってつまり……わたしの存在を知っているということ?)
千佳の中で、様々な考えが渦巻く。
「優貴さん、いらっしゃいました。……どうぞ」
面を上げると、目の前のドアが開いていた。千佳の目に、贅を尽くした部屋が飛び込んでくる。
先程の部屋にあったものとは桁違いだとわかるデスクの前に座り、優貴はこちらを見つめていた。
一般社員の千佳と、本社社長の息子の優貴。暮らしぶりや価値観がまるで違う二人なのだと、千佳は改めて実感した。
その二人がこうして一緒にいることを周囲に知られたりしたら、いったいどうなるのだろうか?
女性社員からの嫉妬を受けることは、目に見えていた。それでなくても、千佳は高卒でありながら秘書室勤務という幸運を得ている。有名大学を卒業しているにもかかわらず、希望職に就くことができなかった女性から見れば、当然、千佳はいじめの対象となる。
これ以上、注目を浴びるようなことはしたくない。
後ろのドアが閉められたと同時に、千佳は口を開いた。
「お願い……こんな風に呼びつけないで。……他の社員には知られたくないの」
優貴の目が、千佳を射貫くように鋭く光った。
「俺と一緒だと、恥ずかしいということか?」
「違う! わたしは、そんな意味で言ったのでは……」
千佳は、頭を振った。優貴を前にすると緊張してしまい、上手く言葉が出てこない。それでも、千佳は引き下がらず、おずおずとしながらもう一度彼に視線を向けた。
「もし、わたしが……優貴さんと……お付き合いしているのなら、それを他の社員たちに知られたくはないの」
「俺たちが、付き合っていないとでも思ってたのか!?」
憤慨したように、優貴が声を荒らげる。
これで、問題は一つ解決した。優貴は、千佳と付き合っていると思っている。つまり、遊ばれているわけではないということだ。
(あの日、わたしを誰にも渡さないと言った言葉は、信じてもいいのよね?)
唾をゴクッと呑み込むと、さらに頭を振った。
「……お付き合いをしていると、知られたくないの。わたしは、普通の一般社員だから」
何故か受付の女性のように姿勢を正すと、千佳はお腹の前で右手の上に左手を重ねながら待った。
だが、優貴はジッと何かを考えているようで微動だにしない。いつ、彼が口を開くのか待っていると、優貴は椅子からゆっくりと立ち上がった。ドアの前から動こうとしない千佳の側まで近寄ると、右手の甲に爪を立てている彼女の手を取ってソファへと導く。
「ゆ、……優貴さん?」
「千佳が気になるというなら、そうしよう。それより……」
それより?
その次に出てくる言葉を待っていた千佳に、優貴がゆっくりと顔を近づけてきた。
(えっ? まさか……ここでわたしを? ……えっ!?)
手を伸ばして千佳の頬に触れると、優貴が覆い被さるようにキスをしてきた。
「……んんっ」
「今度こそ、……大丈夫だ」
千佳の唇に囁くと、優貴は再びキスをした。千佳の唇を舌で愛撫してくる。耐え切れずに口を開いたところへ、優貴の舌が滑り込んできた。
「っあん……」
キスした後に呟いた優貴の言葉が気になったが、唇を求められていると何も言えない。いつしか押し倒されていて、千佳の背中に柔らかなクッションが当たった。
息を継ぐために優貴がそっと唇を離した隙に、千佳は大きく深呼吸した。そして、すぐに拒絶するように彼の肩を押す。
「千佳?」
「待って……、こんな場所で?」
もし、優貴がこの場所で求めているのであれば、いくら千佳が拒絶したいと思っても、最終的には彼に屈してしまうだろう。ただ、二人が付き合っていると言うのならば、せめて千佳の気持ちを訊いてから行動に移して欲しかった。
「誰も来ない……」
そういう意味ではなかったが、それを言う前に、優貴が千佳のブラウスに手を伸ばしてきた。一つ一つ、器用にボタンを外していく。千佳のブラウスのボタンを、無理やり引きちぎったことがあるとは思えないほどだ。
スカートの裾を捲り上げると、彼は自らの躯で千佳を押さえ込んだ。手を伸ばして、ゆっくりと千佳のブラウスの合わせを開く。優貴の目に、チェック地のブラジャーが飛び込んだ。彼は、ブラジャーの上から乳首を撫で始めた。
「……っぁ」
千佳の口から、喘ぎ声が漏れる。期待するように躯が急激に火照り出し、秘部がピクピク蠢くのを感じた。
優貴に触れられると、必ずこうなる。初めてキスされた時も同じ衝動が起きていた。
つまり、好きだと自覚していなかったあの時から、千佳は優貴に欲情していたということになる。
(この感覚が好きって言ったら……優貴さんは嫌がる? セックスは痛いだけだから、どうしても好きになれないけれど、これは……わたしを未知の楽園へと誘ってくれるから)
心の中で思うことは、とても簡単だった。
だが、優貴を前にすると、恥ずかしい気持ちとセックスに対しての恐れが湧き起こる。
優貴の愛撫を気持ちよく感じることができるのは、彼を想う気持ちが根本にあるからだ。
(優貴は、わたしを愛してくれてる?)
仕事が終わった後に食事に誘われたことはあるが、千佳が想像しているデートらしいデートは一回もしたことがない。それでいて、こうしてセックスを求められる。優貴の本当の気持ちがよくわからなかった。
(でも、優貴さんははっきり言葉にする人ではないって、わたしは知ってる。彼の本当の気持ちは、レイプされたあの日、わたしに謝ろうと……慰めようと手を伸ばしていたあの姿でしょ? 鏡越しに映し出された優しさを、わたしは知ってる)
そっと視線を胸元へ落とすと、優貴がブラジャーのカップを下げていた。熟れたように赤い乳首が露になる。そこに、優貴の指が触れた。
「あっ……」
優貴にも伝わるぐらい、躯がブルッと震えた。一度視線を千佳に合わせてから、優貴は乳首が硬く尖るまで愛撫を繰り返した。
千佳の大腿に力が入り、知らず知らず優貴の腰を挟むように押しつけている。
それを合図に、優貴が千佳の乳首を唇に挟んだ。一度引っ張って軽い痛みを与えてから解放すると、次は口に咥えて舌で乳首を優しく転がすように愛撫をした。
千佳は、自然と両手を伸ばして優貴の頭を抱いていた。
小さな乳房は、千佳のコンプレックスの一つでもある。少女のような膨らみしかない乳房なのに、優貴は貶すようなことは何一つ言わない。むしろ、優貴の方から手を伸ばしてきてくれる。
それがどれほど嬉しいか、優貴には絶対にわからないだろう。
その時、優貴の手が膝の裏を撫でた。その手が、だんだん上へと進み、千佳のお尻を撫で上げる。
触れられた場所から背筋に向かって変な電流が走り、思わず千佳は息を呑んだ。初めて感じた甘い痺れだった。
優貴もそれを感じたのだろう。一層舌での愛撫が激しくなると同時に、パンティの上から秘部をそっと愛撫した。指の腹で上下に摩り、執拗にそれを何度も繰り返す。
千佳の心臓がドキドキと激しく高鳴り始めた。セックスを連想させる動きに一瞬躯が強ばるが、それ以上に快感が襲ってくる。フルマラソンをしているかのように息が切れる。
「ゆ、優貴、さん……んんっ、あん!」
躯が勝手にビクッと跳ねる。それを躯で押さえつけながら優貴は何度も指の腹で秘部を愛撫した。
どんどん熱をもつ秘部から、何かが流れ落ちるのがわかった。パンティを濡らしてしまうとわかっても、優貴の愛撫をやめさせることができなかった。
今まで感じたことのない快楽が、千佳のお尻からどんどん這い上がってくる。
「あっ、あっ……やぁ……っはぅ」
勝手に口から漏れる喘ぎ声に、千佳自身驚いた。こんなにも甘い声が、自分の口から途切れることなく発せられるとは思いもしなかった。
一度目の時も、びっくりするような甘い刺激を受けたが、それはほんの数十秒のこと。二度目は、挿入時の痛みをまた体験しなければいけないと思うと、躯が思うように開かなかった。
そして今日が三度目。いったい今までの行為とどう違うのだろうか?
千佳は、襲ってくるさざ波のような甘い電流に躯を震わせた。官能の世界に引っ張られそうになるのを意思の力で必死に耐えていると、肌がしっとりと汗ばんできた。
これも初めてのことだった。
(わかった……。どうして今日に限ってこんなにも感じてしまうのか。……優貴さんの触れ方が今までと全然違う!)
千佳は、セックスの前に行う前戯行為そのものを知らなかった。男性が女性を求めるセックス、子孫を残すための秘めごとは知っていても、こんな風に触れ合う行為が存在するとは想像すらしてなかった。
「凄い、濡れてる……」
優貴は顔を上げてそう呟くと、千佳の唇にキスをし、優しく啄ばんだ。
千佳は、優貴の言っている意味がわからなかった。
(濡れているって、どういう意味? いけないことなの!?)
優貴に訊いて、もし機嫌が悪くなられたら困る。千佳は、訊きたい気持ちを必死に抑えた。
その時、優貴が千佳のパンティを指に引っかけて脱がし始めた。
また、あの痛みを我慢しなければならない。
そう思っただけで、優貴の愛撫で蕩けそうになっていた千佳の躯は強ばった。二度目の時、優貴は力を抜けと言った。
だが、強く命令されたことで躯が勝手に萎縮してしまい、深呼吸すらできないほど緊張でいっぱいだった。
今も、同じことが起きようとしている。
千佳は、動悸が速くなるのを感じた。
(怖い……。優貴さんのアレがわたしの膣内に入ってくると思うだけで、わたしはこの場から逃げ出したくなってしまう! でも、もしわたしがそうすれば、優貴さんの機嫌は絶対に悪くなる。それだけはイヤ!)
躯から力を抜こうと必死に言い聞かせていると、いつものように大腿を掴まれ、大きく足を開かされた。片方の足は、ソファの背へ置くように持ち上げられる。
挿れられる!
瞼をギュッと閉じて痛みに耐えようとした千佳だったが、痛みはなかなか襲ってこない。衣擦れやベルトを外す音が聞こえてきたので、優貴が服を脱ぎ始めたのだとわかった。
それにしても、なんという格好で優貴を待っているのだろうか。大腿を大きく開き、優貴にしか見せたことのない秘部を晒している。
そう思っただけで、秘部がピクッと蠢いた。何だか、変な気分だった。触れられてもいないのに、乳首がツンと硬く尖っているのがわかるほどだ。
こういう躯の変化は、決まって優貴に触れられている時に起こる。
自分の躯なのに、いったい何が起こっているのか全く想像がつかなかった。
閉じていた瞼を開けると、優貴は勢いよくそそり勃つ彼自身にコンドームをつけているところだった。やっぱりすぐに挿入されるんだと思うと、再び千佳の躯が強ばる。
その時、優貴がこちらを見た。獰猛なライオンが獲物を見つけて目を光らせるように、優貴も千佳から視線を逸らそうとはしない。思わず身を起こして後ずさりたくなった。
だが、それを防ぐようにいきなり優貴が覆い被さってきた。
瞬間、秘部がズキッと痛んだ。思わず呻き声を漏らす。
「ううっ……」
「大丈夫か? ……かなり傷つけてしまった」
シーツを見ると、インクを落としたような赤い染みがいくつもあった。
(これが、処女の証なのね。どうして、初めての時って、こんなにも痛いの? この痛みは最初だけ? それともずっと続くの?)
あんな痛みをもう一度体験するのなら、もう二度とセックスはしたくないと思った。
「どうして初めてだと言わなかった?」
初めてだと言ったとしても、優貴は決して行為をやめなかっただろう。やめてと懇願しても、彼はそのまま突き進んだのだから。
終わったことについて今さら何を言っても無駄だと思った千佳は、ただ頭を振った。
「シャワーを浴びさせて……」
優貴が千佳に手を伸ばしてきたが、今は触れて欲しくなかった。
千佳は、彼の手を避けるように胸元を隠して立ち上がった。絨毯の上に落ちている自分の鞄が、目に入る。それを取ろうとして一歩足を踏み出したが、大腿が震えてその場に崩れ落ちそうになった。
振動だけでズキッと秘部に痛みが走る。それでも何とか堪えて鞄を掴むと、曇りガラスで仕切られたシャワー室へゆっくりと向かった。
曇りガラスとはいってもかなり透けているので、優貴から見えるかもしれない。
だが、既に裸を見られてしまっている。今さら気にしても仕方がないと言い聞かせると、ゆっくりと服を脱いでシャワーの飛沫の下に立った。
ポタッと血が下に落ち、お湯で薄められて排水口へと流れていく。まだ出血は止まっていなかった。幸い、生理不順のためにナプキンはいつも常備している。それで何とかなると思った途端、千佳は安堵のため息を漏らした。
優貴から離れたのは、彼の前にいるときちんと考えることができないからだ。それに、少しでも触れられると、また躯が反応してしまいそうになる。それらを全て排除した場所で、一人で考えたかった。
これから、どうするべきか……を。
(優貴さんは、わたしを手放せないって言っていた。……わたしは?)
千佳は、自分の躯をしっかり抱き締めて心に訊ねる。このまま優貴との接点を断つのか、それとも彼を受け止めるのかと。
優貴を失うと思っただけで、躯が震える。彼の前で感じる恐れよりも、今まで受けていた誘いがなくなり、空虚な生活になる方が怖い。
(わたしは、いつの間にか優貴さんを愛していたのね。心が温かくなるような恋ではないけれど、これもまた恋なんだわ。優貴さんのことを考えるだけで緊張してしまうけれど、わたしは御曹司よりも優貴さんを……)
次男という立場だが、優貴もまた水嶋グループ御曹司の一人。いつの日か、どこかの令嬢と付き合うようになる。
でも、その日が訪れるまでは、決して優貴は千佳を手放したりはしない。そう考えるだけで心が浮き立つのがわかった。
この先に別れがあることは承知しつつも、優貴が千佳を一人の女性として見てくれるのであれば、こんなにも素晴らしいことはないからだ。
(もしレイプをされなければ、わたしの気持ちも徐々に高まって、数ヶ月後には優貴さんと素敵なスタートを切れたかもしれない。そう思うと残念だけど……優貴さんにレイプされなければ、わたしは自分の気持ちに向き合うことがなかったかもしれない)
起こらなかったことを考えるより、起こってしまったことに向き合うべきだと思った千佳は、シャワーを止めると何とか服を着た。ボタンが全て弾け飛んでいるので、ブラウスのボタンは留められないが、鞄の中に安全ピンが数本入っていたはず。もちろん裁縫道具も入っているが、優貴の前で縫うような真似はしたくない。
何が起こったのか、もう一度優貴に見せつけてしまうと思ったからだ。
(どうしてわたしは……自分でも関わり合いたくないと思っていた優貴さんを好きになってしまったの? レイプされた相手だというのに……)
それでも、千佳は彼に言うつもりだった。レイプされたことは心の傷として残るかもしれないが、それでも優貴との縁は切りたくないと。
一通り身仕度が整うと、千佳は意を決してシャワー室を後にした。
優貴に気持ちを伝えようと、千佳は恐る恐る面を上げた。
その瞬間、思ったことを彼に伝える機会は失われた。優貴が凄い形相でこちらを睨んでいたからだ。
「こんなことになったが、俺は……千佳を諦めない。逃げようとすれば追いかけて、絶対手に入れる。他の男には……絶対に渡さない!」
まるで、千佳が去っていくと思っているような口ぶりだ。
何がなんでも離れることは許さないと牽制してきた優貴に、千佳は何も言えなかった。もしかしたら、何か言えば良かったのかもしれない。
しかし、彼の前に立つといつも上手く気持ちを伝えられない千佳が、こんな風に怒りに駆られている優貴にきちんと言葉を伝えられるはずもない。
もし、千佳が気持ちを伝えようとしたとしても、こんな状態では優貴の心へは届かないだろう。
だから、千佳は何も言わなかった。ただ目を伏せて、鞄をギュッと握り締めていた。
優貴の前では言いたいことを何も言えなくなってしまう千佳。大切な言葉を言わずに我を通す優貴。性格から見ても絶対重なり合いそうになく、心もすれ違ったままの二人に楽しい未来はあるのだろうか?
いろいろな波乱が待ち受けている二人のラブストーリーが、今始まろうとしていた。
――五月。
「彼とイタリアに行ってきたの」
「いいですね、彼氏とだなんて。わたしは、大学時代の友人とトルコへ」
ゴールデンウィーク明けの、秘書室でのこと。新作ブランド品の品評会のようなものが、先輩秘書たちの間で行われていた。
彼女たちから旅行のお土産をもらった千佳だったが、社会人二年目となった今でも、この価値観の違いに驚かされる。
(どうして、旅行代金が高い時期に行きたがるの? わたしなら……絶対に行けない)
秘書室では皆パスポートを所持しなければいけないので、千佳も紺色の五年パスポートを作った。そのパスポートは、未だに真っ新ときている。仕事で使う機会がない限り、二十三歳で更新するまでずっとインクの臭いはしないだろう。
「千佳はどこかへ行った?」
突然話しかけられて振り向くと、いつも親切に話しかけてくれる同期の桜田だった。
異例で高卒入社をした千佳は、先輩秘書たちから爪弾きにされていた。
だが、桜田だけは周囲の陰険な態度を気にもせず、ずっと千佳を同僚として友達として扱ってくれている。
「いえ、わたしは……」
そこまで言って、千佳は顔を顰めた。というのも、このゴールデンウィークの初日に優貴から呼び出しを受けた時のことが脳裏に浮かんだからだ。
レイプされた後、優貴はその行為を謝るように千佳を食事へ誘った。
優貴に惹かれていると気付いたからには、もちろん断るつもりもなかった。
楽しい一時を過ごせたとは言い難いが、それでも食事を共にすることが嬉しくて千佳は静かに彼に従った。
細身の千佳を太らそうとしていたのか、それからゴールデンウィークまでの期間は食事に徹し、二人の関係は完全なプラトニックだった。
今回は休日ということもあり、恋人同士のようにデートを楽しめると期待した千佳は、優貴から連絡を受けると、すぐに彼が車を停めている大通りへと急いだ。
だが、優貴は千佳の顔を見るなり表情を強ばらせた。
どうしてそんな顔をするのかわからないまま、千佳は彼の運転する車の助手席に座った。
優貴はしばらく走らせた後いきなり車を停めて、とても激しいキスをしてきた。唇が痛かったが何も言えず、千佳は彼にされるままキスを受けた。
どこへ行くのかとも訊けずに前を見ていると、優貴は郊外へと車を走らせた。山道へ少し入ったところで、いきなり西洋のお城のような場所へ入った。中が見えないようになっているビニールのカーテンを潜って、初めてそこがどこなのかわかった。
ラブホテル……
優貴は、千佳を求めていた。
レイプされてから、一週間後のことだった。
優貴がデートを楽しむのではなく、突然躯を求めてきたことに少し青ざめたが、千佳は彼を拒むようなことはしなかった。
またあの痛さに耐えなければいけないのかと思うと、躯が拒否反応を起こしそうだった。それでも前戯として躯に触れられた愛撫は心地好く、もう一度あの快楽を感じてみたいと密かに思っていた。
だが、結果は散々だった。
優貴が千佳の膣内に進入しただけで痛みが起こり、引き攣れる感覚に耐えられず、涙を流しながらやめてと懇願するはめになった。そのことに優貴は苛立ち、千佳は何も言えずただ目を伏せるしかなかった。
優貴を心から受け入れていないから、千佳の躯が開かないとでも思っているのだろう。
そうではないとわからないのだろうか?
優貴に対して足を広げる時点で、既に心は彼を受け入れている。
ただ、躯が優貴の求めに応じない。
無言のまま二人はラブホテルを後にし、優貴は千佳を送るとそのまま走り去った。二人が共に過ごした時間は、正味三時間。
その日を境に、ゴールデンウィークが終わった今も優貴からの連絡はなかった。
気にしてはいけないと言い聞かせながら、千佳は同僚に頭を振った。
「特に……どこへも行ってません」
千佳は彼女に背を向け、自分の席に座った。
お昼からのスケジュールを確認した後、千佳は先輩秘書から渡された資料を手にコピー機へと向かった。
(それにしても……わたしと優貴さんの関係っていったい何? 恋人同士?)
千佳は、そっと小さく頭を振った。
そもそも、手放したくない、他の男には渡さない……とは言われたが、肝心な言葉〝付き合ってください〟とは、一度も言われたことはない。
つまり、二人の関係は……セックスフレンド?
千佳は口元を歪めた。
(優貴さんが満足して初めてそういう関係っていうんでしょ? わたしは、優貴さんを悦ばせたことは一度もないから、そういうお友達でないことは確か。そうよね?)
休み明けということで、仕事はそんなに溜まっていなかった。千佳は、やるべき仕事を一つずつ終わらせていく。先輩秘書の出張精算や秘書室内の備品補充など、簡単な作業ばかりだったので、今日は定時で帰れる予定だった。
そのはずなのに、何故か退社時間になっても千佳の前にはファイルが山積みになっている。
「鈴木さん、ごめんなさいね。この後用事があるから、これ頼めるかしら?」
昼間にブランド品の品評会をしていた先輩秘書の二人が、椅子に座っている千佳を見下ろす形で新たな仕事をそこに置く。
「お願い。どうせ、鈴木さんは真っ直ぐ家に帰るだけでしょ? それに、デートの予定もないと思うし」
「……わかりました」
いつものように、千佳は従順に答えた。事実、先輩秘書の言葉は的を射ている。千佳に、反論する余地はない。
一時間あれば処理できそうな書類を受け取ると、肩から軽く力を抜いて残業に取りかかった。
予想どおり、残業しているのは千佳唯一人。早く終わらせることができれば、十九時過ぎには会社を出ることが可能だろう。
先輩から渡されたメモには、明日重役会議で配られる資料に注釈として添付するファイルを探すようにと指示が書いてある。それを奥の書棚から探し出すと、必要箇所をコピーした。
後は、明日必要部数をコピーしてとじればいいだろう。
時計を見ると、既に十九時三十分を過ぎていた。書類を鍵付きの引出しに入れ、鞄を手にして更衣室へ向かおうとした時、秘書室内の電話が鳴り出した。
びっくりした千佳は、すぐに引き返して受話器を取った。
「秘書室、鈴木です」
『……上にある、俺の部屋に来てくれ。ナンバーは……』
その言葉だけで、通話は切れた。
突然耳に飛び込んできた優貴の言葉に、千佳の心臓が勢いよく飛び跳ねた。通話は既に切れているが、千佳はしばらく受話器を握り締めてその余韻に浸る。まだ、優貴から忘れられてはいなかったと安堵さえしていた。
だが、優貴の発した言葉の意味を理解すると、一瞬で緊張が走った。
(優貴さんが、わたしを彼専用の執務室へ呼んでいる?)
千佳は、胸元に下げている社員証をギュッと握った。
管理職の人たちの個室がある上の階へ行くには、セキュリティの関係から特別な暗証番号が必要だった。秘書たちは管理職とも仕事をするので、秘書専用の暗証番号が常に伝達されている。
だが、まだ下っ端の千佳にはその番号を知る権利はなかった。事実上、上の階への立ち入りは禁止となっている。そんな千佳に、優貴は大切な暗証番号を教えてきた。
千佳は、微かに手が震えるのを感じながら受話器を置いた。
「どうしてわたしを呼ぶの? しかも、上に?」
何が待ち受けているのか全く想像できないが、遅れて行くことで優貴の怒りを買う方がもっと恐ろしい。
千佳はすぐに鞄を持つと秘書室の電気を消し、エレベーターホールへ向かった。
優貴の執務室がある階で降りると、防弾ガラスのドアがあり、その横にセキュリティパネルが設置されていた。社員証のICチップを読み取れるようにかざすと、優貴が口にした暗証番号を恐る恐る入力する。
無事に照合が終わると、ドアがゆっくりと開いた。
階下よりもさらに高級な絨毯にビックリしながら廊下を進んでいくと、経営管理室のフロアに辿り着いた。さらにその奥へ進むと、重厚なドアに水嶋優貴と書かれたネームプレートが貼られているのが目に飛び込む。
(ここが、優貴さん専用の執務室なのね)
こんな場所に、一介の秘書が踏み込んでいいのかわからなかったが、勇気を奮い起こすと軽くドアをノックをした。
――コンコンッ。
どうして優貴がこの場所に呼び寄せたのか、全くわからない千佳の表情は少し青ざめていた。
思っていたよりも早くドアが開かれ、千佳はハッとして面を上げた。優貴だと思ったのに、何故かそこには見知らぬ男性がいた。
頭の中をフル回転させて、その人物が誰なのか必死になって思い出そうとしていると、目の前の彼がドアを大きく開けて千佳を室内へ促した。
「……し、失礼します」
さらに奥へと通じるドアの近くに、とても高価そうなデスクが一つあった。視線を右へ向けると、四人分のデスクがアイランド形式に置かれている。その横には、応接用のソファが完備してある。
「さ、こちらへ。優貴さんがお待ちになっております」
(つまり、この目の前にいる彼は、わたしがここへ来ることを知っていた? それってつまり……わたしの存在を知っているということ?)
千佳の中で、様々な考えが渦巻く。
「優貴さん、いらっしゃいました。……どうぞ」
面を上げると、目の前のドアが開いていた。千佳の目に、贅を尽くした部屋が飛び込んでくる。
先程の部屋にあったものとは桁違いだとわかるデスクの前に座り、優貴はこちらを見つめていた。
一般社員の千佳と、本社社長の息子の優貴。暮らしぶりや価値観がまるで違う二人なのだと、千佳は改めて実感した。
その二人がこうして一緒にいることを周囲に知られたりしたら、いったいどうなるのだろうか?
女性社員からの嫉妬を受けることは、目に見えていた。それでなくても、千佳は高卒でありながら秘書室勤務という幸運を得ている。有名大学を卒業しているにもかかわらず、希望職に就くことができなかった女性から見れば、当然、千佳はいじめの対象となる。
これ以上、注目を浴びるようなことはしたくない。
後ろのドアが閉められたと同時に、千佳は口を開いた。
「お願い……こんな風に呼びつけないで。……他の社員には知られたくないの」
優貴の目が、千佳を射貫くように鋭く光った。
「俺と一緒だと、恥ずかしいということか?」
「違う! わたしは、そんな意味で言ったのでは……」
千佳は、頭を振った。優貴を前にすると緊張してしまい、上手く言葉が出てこない。それでも、千佳は引き下がらず、おずおずとしながらもう一度彼に視線を向けた。
「もし、わたしが……優貴さんと……お付き合いしているのなら、それを他の社員たちに知られたくはないの」
「俺たちが、付き合っていないとでも思ってたのか!?」
憤慨したように、優貴が声を荒らげる。
これで、問題は一つ解決した。優貴は、千佳と付き合っていると思っている。つまり、遊ばれているわけではないということだ。
(あの日、わたしを誰にも渡さないと言った言葉は、信じてもいいのよね?)
唾をゴクッと呑み込むと、さらに頭を振った。
「……お付き合いをしていると、知られたくないの。わたしは、普通の一般社員だから」
何故か受付の女性のように姿勢を正すと、千佳はお腹の前で右手の上に左手を重ねながら待った。
だが、優貴はジッと何かを考えているようで微動だにしない。いつ、彼が口を開くのか待っていると、優貴は椅子からゆっくりと立ち上がった。ドアの前から動こうとしない千佳の側まで近寄ると、右手の甲に爪を立てている彼女の手を取ってソファへと導く。
「ゆ、……優貴さん?」
「千佳が気になるというなら、そうしよう。それより……」
それより?
その次に出てくる言葉を待っていた千佳に、優貴がゆっくりと顔を近づけてきた。
(えっ? まさか……ここでわたしを? ……えっ!?)
手を伸ばして千佳の頬に触れると、優貴が覆い被さるようにキスをしてきた。
「……んんっ」
「今度こそ、……大丈夫だ」
千佳の唇に囁くと、優貴は再びキスをした。千佳の唇を舌で愛撫してくる。耐え切れずに口を開いたところへ、優貴の舌が滑り込んできた。
「っあん……」
キスした後に呟いた優貴の言葉が気になったが、唇を求められていると何も言えない。いつしか押し倒されていて、千佳の背中に柔らかなクッションが当たった。
息を継ぐために優貴がそっと唇を離した隙に、千佳は大きく深呼吸した。そして、すぐに拒絶するように彼の肩を押す。
「千佳?」
「待って……、こんな場所で?」
もし、優貴がこの場所で求めているのであれば、いくら千佳が拒絶したいと思っても、最終的には彼に屈してしまうだろう。ただ、二人が付き合っていると言うのならば、せめて千佳の気持ちを訊いてから行動に移して欲しかった。
「誰も来ない……」
そういう意味ではなかったが、それを言う前に、優貴が千佳のブラウスに手を伸ばしてきた。一つ一つ、器用にボタンを外していく。千佳のブラウスのボタンを、無理やり引きちぎったことがあるとは思えないほどだ。
スカートの裾を捲り上げると、彼は自らの躯で千佳を押さえ込んだ。手を伸ばして、ゆっくりと千佳のブラウスの合わせを開く。優貴の目に、チェック地のブラジャーが飛び込んだ。彼は、ブラジャーの上から乳首を撫で始めた。
「……っぁ」
千佳の口から、喘ぎ声が漏れる。期待するように躯が急激に火照り出し、秘部がピクピク蠢くのを感じた。
優貴に触れられると、必ずこうなる。初めてキスされた時も同じ衝動が起きていた。
つまり、好きだと自覚していなかったあの時から、千佳は優貴に欲情していたということになる。
(この感覚が好きって言ったら……優貴さんは嫌がる? セックスは痛いだけだから、どうしても好きになれないけれど、これは……わたしを未知の楽園へと誘ってくれるから)
心の中で思うことは、とても簡単だった。
だが、優貴を前にすると、恥ずかしい気持ちとセックスに対しての恐れが湧き起こる。
優貴の愛撫を気持ちよく感じることができるのは、彼を想う気持ちが根本にあるからだ。
(優貴は、わたしを愛してくれてる?)
仕事が終わった後に食事に誘われたことはあるが、千佳が想像しているデートらしいデートは一回もしたことがない。それでいて、こうしてセックスを求められる。優貴の本当の気持ちがよくわからなかった。
(でも、優貴さんははっきり言葉にする人ではないって、わたしは知ってる。彼の本当の気持ちは、レイプされたあの日、わたしに謝ろうと……慰めようと手を伸ばしていたあの姿でしょ? 鏡越しに映し出された優しさを、わたしは知ってる)
そっと視線を胸元へ落とすと、優貴がブラジャーのカップを下げていた。熟れたように赤い乳首が露になる。そこに、優貴の指が触れた。
「あっ……」
優貴にも伝わるぐらい、躯がブルッと震えた。一度視線を千佳に合わせてから、優貴は乳首が硬く尖るまで愛撫を繰り返した。
千佳の大腿に力が入り、知らず知らず優貴の腰を挟むように押しつけている。
それを合図に、優貴が千佳の乳首を唇に挟んだ。一度引っ張って軽い痛みを与えてから解放すると、次は口に咥えて舌で乳首を優しく転がすように愛撫をした。
千佳は、自然と両手を伸ばして優貴の頭を抱いていた。
小さな乳房は、千佳のコンプレックスの一つでもある。少女のような膨らみしかない乳房なのに、優貴は貶すようなことは何一つ言わない。むしろ、優貴の方から手を伸ばしてきてくれる。
それがどれほど嬉しいか、優貴には絶対にわからないだろう。
その時、優貴の手が膝の裏を撫でた。その手が、だんだん上へと進み、千佳のお尻を撫で上げる。
触れられた場所から背筋に向かって変な電流が走り、思わず千佳は息を呑んだ。初めて感じた甘い痺れだった。
優貴もそれを感じたのだろう。一層舌での愛撫が激しくなると同時に、パンティの上から秘部をそっと愛撫した。指の腹で上下に摩り、執拗にそれを何度も繰り返す。
千佳の心臓がドキドキと激しく高鳴り始めた。セックスを連想させる動きに一瞬躯が強ばるが、それ以上に快感が襲ってくる。フルマラソンをしているかのように息が切れる。
「ゆ、優貴、さん……んんっ、あん!」
躯が勝手にビクッと跳ねる。それを躯で押さえつけながら優貴は何度も指の腹で秘部を愛撫した。
どんどん熱をもつ秘部から、何かが流れ落ちるのがわかった。パンティを濡らしてしまうとわかっても、優貴の愛撫をやめさせることができなかった。
今まで感じたことのない快楽が、千佳のお尻からどんどん這い上がってくる。
「あっ、あっ……やぁ……っはぅ」
勝手に口から漏れる喘ぎ声に、千佳自身驚いた。こんなにも甘い声が、自分の口から途切れることなく発せられるとは思いもしなかった。
一度目の時も、びっくりするような甘い刺激を受けたが、それはほんの数十秒のこと。二度目は、挿入時の痛みをまた体験しなければいけないと思うと、躯が思うように開かなかった。
そして今日が三度目。いったい今までの行為とどう違うのだろうか?
千佳は、襲ってくるさざ波のような甘い電流に躯を震わせた。官能の世界に引っ張られそうになるのを意思の力で必死に耐えていると、肌がしっとりと汗ばんできた。
これも初めてのことだった。
(わかった……。どうして今日に限ってこんなにも感じてしまうのか。……優貴さんの触れ方が今までと全然違う!)
千佳は、セックスの前に行う前戯行為そのものを知らなかった。男性が女性を求めるセックス、子孫を残すための秘めごとは知っていても、こんな風に触れ合う行為が存在するとは想像すらしてなかった。
「凄い、濡れてる……」
優貴は顔を上げてそう呟くと、千佳の唇にキスをし、優しく啄ばんだ。
千佳は、優貴の言っている意味がわからなかった。
(濡れているって、どういう意味? いけないことなの!?)
優貴に訊いて、もし機嫌が悪くなられたら困る。千佳は、訊きたい気持ちを必死に抑えた。
その時、優貴が千佳のパンティを指に引っかけて脱がし始めた。
また、あの痛みを我慢しなければならない。
そう思っただけで、優貴の愛撫で蕩けそうになっていた千佳の躯は強ばった。二度目の時、優貴は力を抜けと言った。
だが、強く命令されたことで躯が勝手に萎縮してしまい、深呼吸すらできないほど緊張でいっぱいだった。
今も、同じことが起きようとしている。
千佳は、動悸が速くなるのを感じた。
(怖い……。優貴さんのアレがわたしの膣内に入ってくると思うだけで、わたしはこの場から逃げ出したくなってしまう! でも、もしわたしがそうすれば、優貴さんの機嫌は絶対に悪くなる。それだけはイヤ!)
躯から力を抜こうと必死に言い聞かせていると、いつものように大腿を掴まれ、大きく足を開かされた。片方の足は、ソファの背へ置くように持ち上げられる。
挿れられる!
瞼をギュッと閉じて痛みに耐えようとした千佳だったが、痛みはなかなか襲ってこない。衣擦れやベルトを外す音が聞こえてきたので、優貴が服を脱ぎ始めたのだとわかった。
それにしても、なんという格好で優貴を待っているのだろうか。大腿を大きく開き、優貴にしか見せたことのない秘部を晒している。
そう思っただけで、秘部がピクッと蠢いた。何だか、変な気分だった。触れられてもいないのに、乳首がツンと硬く尖っているのがわかるほどだ。
こういう躯の変化は、決まって優貴に触れられている時に起こる。
自分の躯なのに、いったい何が起こっているのか全く想像がつかなかった。
閉じていた瞼を開けると、優貴は勢いよくそそり勃つ彼自身にコンドームをつけているところだった。やっぱりすぐに挿入されるんだと思うと、再び千佳の躯が強ばる。
その時、優貴がこちらを見た。獰猛なライオンが獲物を見つけて目を光らせるように、優貴も千佳から視線を逸らそうとはしない。思わず身を起こして後ずさりたくなった。
だが、それを防ぐようにいきなり優貴が覆い被さってきた。
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