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21~30話

22b、私はどんな店があるかをわかっていない

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それでも興味は尽きず、あちこち見回しては立ち止まったり駆け寄ったり、ちょこまかと動き回る。
ガルは私の動きを遮らないよう緩く手を繋ぎ、ゆっくりと歩いて私のしたいようにさせてくれている。

手を繋いで歩くなんてこれではまるでデートではないか。
———と、まあ最初のうちは思ったりもした。

実際はあれだ、リードを繋がれ散歩するペットと飼い主に相違ない。


クンクン

漂ってくる魅惑的な香りに釣られて鼻を向ける。
見れば、この辺り一帯は食料品店や食事処が軒を連ねているようだった。

陽の高さからしてそろそろ昼をまわった頃だろう。
美味しそうな香りを嗅いだ事で、俄然がぜんお腹が空いてくる。

「マヤ? ……ああ、そろそろ昼食にするか」

食事処の店内に熱視線を送る私に気付いたガルが言う。
ありがたい提案に、私はコクコクと頷いた。







「ここ……ですか?」

店構えを見て、ガルを見て、もう一度店構えを見る。

綺麗に白く塗られた外壁、壁に沿って置かれた背の低い観葉植物の鉢植え、楕円形の看板に茶色で書かれた文字はくるんくるんと丸みを帯びている。
大きな窓から見える店内は白と薄ピンクを基調とした家具で統一され、そこにいる客のほとんどが若い女性だ。

いい店がある、とガルがつれて来てくれたのだが……少なくともガルのイメージに合致する要素は微塵もない。

「入るぞ」

当のガルは気にした風もなく私の手を引いて、まん丸のドアノブに手をかけた。
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