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41~50話

45e、私は急用をわかっていない2 ※

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食事を終えて店を出ると、ふと足を止めてガルが言う。

「マヤ、年齢に見合った服を新調しに行くか?」

「? 今あるので十分だって言ったじゃないですか」

「以前は遠慮もあったろう。もう、何も遠慮することはないんだぞ?」

自分の好みに合う服が欲しくないと言えば嘘になるけれど、それで着なくなれば今ある服達はすべて処分されることになるだろう。
まだまだ着られるというのに、そんな勿体ないことは看過できない。

「いいんです! ガル様が買ってきてくれた服が、たくさんありますから」

私が年齢以上に幼く見えている原因の一端が服にある気もするけれど、ガルが私のためにと用意してくれたものだ。慣れれば段々と愛着も湧いてきた。

「マヤ……」

瞳の赤が熱っぽく揺らめき、ゆっくりと顔が近……

ガバッ!

「ガル様っ!この前見られなかった街の続き、見に行きたいです!」

ガルの首筋にしがみついて顔を埋める。

危なかった!
なぜか突然に、キスされる雰囲気だった!
いくら何でもこんなに人目のある街中でキスされるのは恥ずかしすぎる。

「……では、そうするとするか」

急な話題転換に乗ってくれたガルに、ほっと息を吐く。

「ところでマヤ、あの店は知っているか?」

「え?」

ガルの首筋から顔を上げれば、

ちゅっ

「!!」

一瞬で唇を掠め取られた。

周囲の人全員に見られているような気がして、恥ずかしくて顔が上げられない。
再び首筋に顔を埋めぺしぺしとガルの肩を叩くと、喉の奥でくっくっと笑う振動が伝わってきた。



一事が万事この調子で、夕方屋敷に帰宅する頃にはもう、私はガルの首筋にしがみついたまま顔を上げられなくなっていたのだった。
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