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21~30話
26d、他人のふりしときましょうか?
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「お会いしたかったですわ! 覚えていらっしゃいますか? 以前悪漢から助けていただいたオリーヴィアですわ! たまに夜会でお見かけしてもいつもお忙しそうにしていらっしゃるから、なかなかお話しに行けなくて、わたくし———。あの、もしお暇でしたらこのあとご一緒いたしませんか? 助けていただいたお礼もまだですもの」
すごい……。
彼女の目には、グレニスに腰を抱かれて同行する私が一切見えていないらしい。
ワインレッドのドレスに映える、透き通るような白い肌。指先はほっそりと、艶めくプラチナブロンドは凝った形に結い上げられて、きっと日傘なしに外出するなんて考えもしないだろう。
後方から追い付いた従者が呼びかけるのも聞こえないようで、彼女はグレニスの胸に埋まって上目遣いに返事を待っている。
「市民を守るのが仕事だ。礼をされるようなことはしていない、何も気にするな」
「そんな……っ! ……では、わたくしが勝手にご一緒したいだけでしたら? それでも受け入れてくださいませんの……?」
長い睫毛の下で、たっぷりと涙を蓄えた瞳がカボションカットのルビーのようにうるうると輝く。
———ダメ。やめて。そんな目でグレニスを見たら……
「グ……旦那様っ! 私、ちょっとそこの本屋に行ってますね! 私のことは気にせずごゆっくり!」
「おい!?」
彼女に注意が向いている隙にするりとグレニスの腕を抜けると、前方に見えた本屋に駆け足で逃げ込んだ。
すごい……。
彼女の目には、グレニスに腰を抱かれて同行する私が一切見えていないらしい。
ワインレッドのドレスに映える、透き通るような白い肌。指先はほっそりと、艶めくプラチナブロンドは凝った形に結い上げられて、きっと日傘なしに外出するなんて考えもしないだろう。
後方から追い付いた従者が呼びかけるのも聞こえないようで、彼女はグレニスの胸に埋まって上目遣いに返事を待っている。
「市民を守るのが仕事だ。礼をされるようなことはしていない、何も気にするな」
「そんな……っ! ……では、わたくしが勝手にご一緒したいだけでしたら? それでも受け入れてくださいませんの……?」
長い睫毛の下で、たっぷりと涙を蓄えた瞳がカボションカットのルビーのようにうるうると輝く。
———ダメ。やめて。そんな目でグレニスを見たら……
「グ……旦那様っ! 私、ちょっとそこの本屋に行ってますね! 私のことは気にせずごゆっくり!」
「おい!?」
彼女に注意が向いている隙にするりとグレニスの腕を抜けると、前方に見えた本屋に駆け足で逃げ込んだ。
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