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21~30話

26c、他人のふりしときましょうか?

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「なぜだ? せっかく一緒にいられるというのに」

 一歩後ずさろうとした身体を捕まえ、がっちりと腰を抱き寄せられる。
 これなら、下手なことは言わず大人しく隣に立っていた方がマシだったかもしれない。
 こんな状態を見られては言い訳の余地もない。

「団長、今日はまたべっぴんさん連れてるねぇ! あーあ、団長にはうちの孫娘を紹介したかったんだがなぁー」

「紹介は不要だ。……しかし孫は五つだと言っていなかったか?」

「はっはっは、ぴっちぴちだろう? そら、これ持ってけ」

 グレニスの抱える紙袋にお菓子が追加される。

 グレニスが騎士団長として、凱旋パレードなどの催しで広く顔を知られているのはわかるけれど、それにしたってみんな随分と親しげな様子だ。

 自分の店の商品やら小さな鉢植えやらお守りやら作りすぎたジャムやら……グレニスの片手と、ついでに私の両手があっという間に物で埋まってしまった。



 見かねた近くの店の店主が屋敷まで届けてくれると言うのに甘え、荷物を預ける。
 預けようのないむき出しの棒飴とコップに注がれた果実水だけはその場で食べて、お礼を言って店を出た。

「なんだか……すごく人気者ですね?」

「よくここを訪れているうちに、自然とな」

 ああ、そうか。
 いつもは顔も隠していないだろうし、きっとここに来るたび今日のように、行く先々で人助けをしていたに違いない。
 だから街の人たちも『凱旋パレードで見かける手の届かない英雄』ではなく、『自分たちを守ってくれる身近な英雄』としてグレニスに好意を抱いているのだろう。

「せっかくのデートだったのに、騒がれてしまって悪いな」

「!」

 先ほど街の人々からデートかと尋ねられた時も肯定していたけれど、やっぱり今日のこれはデートだったのか……!

「あの、デ、デートってことは……その、もしかして、付き合———」

「ジェルム様っ!」

 鈴を転がすような声音と共に、グレニスの胸に勢いよく何かが飛び込んだ。
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