109 / 277
21~30話
27b、さっき食べた飴の味
しおりを挟む
「どうして一人で行ってしまうんだ」
「グレニス様……」
私の頭上で本棚に肘をついたグレニスが、閉じ込めるように身体を寄せて私を見下ろしている。
「呼び方が違う」
「だ———グレン?」
「ああ」
旦那様と口にしかけた途端眉間のシワが深まったを見て、慌てて言い直す。
でもこれは、正体がばれないための一時しのぎの呼び方だったはず。
いいや、そんなことよりも。
「なんでここにいるんですか……? さっきの彼女は?」
隙間からチラリと左右を見ても、彼女の姿はない。
「さあ? 帰ったんじゃないか?」
「え……お誘いを断ったんですか?」
「当然だろう」
グレニスはそんなことを聞かれるなんて心外だとでも言いたげな様子だ。
でも、だってそんな、グレニスが女性を悲しませるようなこと……あっ! もしかして今日は先約があるからと、後日の約束でも交わして円満に話をまとめたのだろうか?
「彼女にはなんて……?」
「貴女と二人で行くことはない、と」
「えっ」
グレニスの返答は予想に反して明確な拒絶だった。
「でも、そんなこと言ったら彼女を悲しませちゃったんじゃ……」
もしかしたらはらはらと、涙だって流したかもしれない。
それを見て、何も思わずにいられる人ではないだろうに。
「だとしても、誰より悲しませたくない相手がいるからな」
そう言って、グレニスは私の頭を抱き寄せる。
よろけて固い胸に突っ伏すと、そのままぎゅっと抱きすくめられた。
「グレニス様……」
私の頭上で本棚に肘をついたグレニスが、閉じ込めるように身体を寄せて私を見下ろしている。
「呼び方が違う」
「だ———グレン?」
「ああ」
旦那様と口にしかけた途端眉間のシワが深まったを見て、慌てて言い直す。
でもこれは、正体がばれないための一時しのぎの呼び方だったはず。
いいや、そんなことよりも。
「なんでここにいるんですか……? さっきの彼女は?」
隙間からチラリと左右を見ても、彼女の姿はない。
「さあ? 帰ったんじゃないか?」
「え……お誘いを断ったんですか?」
「当然だろう」
グレニスはそんなことを聞かれるなんて心外だとでも言いたげな様子だ。
でも、だってそんな、グレニスが女性を悲しませるようなこと……あっ! もしかして今日は先約があるからと、後日の約束でも交わして円満に話をまとめたのだろうか?
「彼女にはなんて……?」
「貴女と二人で行くことはない、と」
「えっ」
グレニスの返答は予想に反して明確な拒絶だった。
「でも、そんなこと言ったら彼女を悲しませちゃったんじゃ……」
もしかしたらはらはらと、涙だって流したかもしれない。
それを見て、何も思わずにいられる人ではないだろうに。
「だとしても、誰より悲しませたくない相手がいるからな」
そう言って、グレニスは私の頭を抱き寄せる。
よろけて固い胸に突っ伏すと、そのままぎゅっと抱きすくめられた。
応援ありがとうございます!
13
お気に入りに追加
1,243
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる