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21~30話
30e、無知で恥ずかしい
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「ああ。あいにくと手が塞がっていて、自分では食べられそうにないな」
手が塞がっているのは私を抱きしめているせいじゃないか。
「だから下り———」
「あー」
グレニスがこちらに向けて口を開く。
…………え?
「まさか……」
「あー」
目を丸くして見つめ返しても、グレニスは口を開けたまま姿勢を崩さない。
綺麗な歯並びの口内を見て、テーブルに置かれたままのもう一つのケーキ皿を見て、手元のケーキに視線を落とす。
「でも……」
「あー」
諦める気配のないグレニスに観念して、ケーキを一口分切り分けると、少し高い位置にあるグレニスの口元へおずおずとフォークを差し出した。
ぱくりっ
差し出したフォークにかぶり付くグレニスが、餌付けされる雛のようで可愛く見えてしまっただなんて……口が裂けても言えない。
「ん、確かに美味いな」
「ソウデスネ……。あとはご自分で———」
「まだ手が塞がっている」
ぎゅっ
その後ケーキ皿が二つとも空になるまで、グレニスの塞がった手が空くことはなかった。
手が塞がっているのは私を抱きしめているせいじゃないか。
「だから下り———」
「あー」
グレニスがこちらに向けて口を開く。
…………え?
「まさか……」
「あー」
目を丸くして見つめ返しても、グレニスは口を開けたまま姿勢を崩さない。
綺麗な歯並びの口内を見て、テーブルに置かれたままのもう一つのケーキ皿を見て、手元のケーキに視線を落とす。
「でも……」
「あー」
諦める気配のないグレニスに観念して、ケーキを一口分切り分けると、少し高い位置にあるグレニスの口元へおずおずとフォークを差し出した。
ぱくりっ
差し出したフォークにかぶり付くグレニスが、餌付けされる雛のようで可愛く見えてしまっただなんて……口が裂けても言えない。
「ん、確かに美味いな」
「ソウデスネ……。あとはご自分で———」
「まだ手が塞がっている」
ぎゅっ
その後ケーキ皿が二つとも空になるまで、グレニスの塞がった手が空くことはなかった。
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