探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅥ:詐欺捜査

#7

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 日下部竜司。彼との出会いは、私がまだ、ホームズに入社する、少し前の事だ。
 私は当時、ちゃんとした企業のホワイトハッカーをやっており、日夜、システムやサーバーを監視していた。
 私が言うのもなんだが、それなりの腕と知識があったため、一部の上司や先輩たちから、妬まれる事も、会ったと思う…。
 一般企業の依頼以外にも、国からの仕事もそれなりにあった、謂わば一流企業だった。
 しかし、私がそこに入社した翌年、この業界に震撼させる事件が起こった。
 日本政府管轄下のサーバーが、何者かにクラッキングされ、とあるデータが盗み出された。
 私の勤めていた職場に、その調査の依頼が舞い込んできた。もちろん極秘で。
 その案件に私も、微力ながら携わっていた。
 しかし、その翌日、盗まれたデータがマスコミ関係各所にメールで送られた。
 そのデータには、議員や大臣の汚職とみられる記録や天下り先の情報、警察関係者の不祥事など、マスコミが食いつきやすい情報が掲載されており、瞬く間に日本中はおろか、世界的にも問題視された。

 そのお陰で、その年の内閣は、年の瀬を待たずして、総辞職。警察庁長官や関係者が相次いでの辞任など、歴史に残る様な大事件に発展した。
 結局、私たちの捜査依頼も、たった三日で白紙になり、犯人を特定することは、実質不可能となった。
 どちらにせよ、海外のサーバーや、別の端末を無数に介し、足が付くまでは相当の時間を有すると、覚悟していた所だったため、都合がよかった。
 (この事件が、起きたのは四年前。この事件には、相沢も関わっていたが、それはまた、別のお話…。)
 だが、私だけ妙な手がかりを見つけていた。それは、介した端末には必ず、『AKIRA』というフォルダが存在していた事。
 それを、何度か上司に報告していたが、『それは終わった事だと』取り合ってくれなかった。
 しかし、その一か月後、事件は思わぬ形で収束する…。
 その日はいつも通り出社をし、自分のパソコンを立ち上げた。その時、とある企業のシステムトラブルが起こった。
 原因はかなり悪質なマルウェアが、システムに潜り込み、悪さをしていた。
 それが格納されていたとされるフォルダが、『AKIRA』だった。
 そして、それと全く同じサイズ、同じ内容のフォルダが私のパソコンにもこびり付いていた。
 上司たちの見解では、私がパソコンを立ち上げたのが引き金となり、サーバーに直接感染した。
 しかし、そのフォルダが、何故私のパソコンに存在したのか、それを捜査してほしいと願い出たが、別の上司に『しらばっくれるな』そう怒鳴られ、私は一気に会社での地位を失った。
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