(完)浮気ぐらいで騒ぐな?ーーそれを貴方が言うのですか?

青空一夏

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1 優しい夫が豹変していく

 私はアメリア・イシド伯爵令嬢。歳の離れた姉がもうずいぶん前に家出をして、平民と結婚して行方知れずになっていた。そんなせいで、私がこのイシド伯爵家を継ぐことになった。

 爵位は私が女伯爵となり、イシド伯爵家の事業は私が運営している。ただ、イシド伯爵家は、貴族でありながら医学の発展に貢献するために病院経営を生業としてきた。私は医師の資格がないため、父の勧めもあり男爵家の次男のイアンを婿に迎えた。彼は医者になっていて、とても真面目で誠実な人柄だったからだ。


「僕は男爵家の次男で医学に詳しいことしか取り柄がないし、特にかっこよくもないしダンスも上手じゃないけれど、君のことだけは生涯大事にするつもりだ」

 その言葉はとても誠実に聞こえたし、彼が言うようにそれほど見栄えが良くないことも、きっと私を裏切らないだろうと信じられた。そう、私は面食いではないから人柄重視と思ってイアンを選んだのだった。



 結婚してもなかなか子供には恵まれず、それでも夫婦仲は良いと思っていた。ところが父が亡くなり、彼が医院長になるとだんだんと態度がでかくなっていった。

 そして、それはどんどんとエスカレートしていくのだった。

「最近、屋敷に戻ってくるのが遅くなったわね? しかも、泊まりも増えたし」

「あぁ、急患が立て続けにはいってね。俺がこんなに頑張っているからこの病院は儲かっているんだ! 文句はいうのはよせよ!」

「え? 文句じゃないわよ。ただ、泊まりなんて今までなかったから・・・・・・」

「俺はね、患者さんひとりひとりを大事にしてるのさ。だから、それを放りっぱなしにして部下の医師にまかせたりできないよ。わかるだろ?」

 医師は彼の他に7人いるから、夜は交代制で仮眠をとって急患に備えてもらっているはず。彼は医院長だから、泊まり込む必要なんてないのだ。

 私は不審に思い滅多に訪れない病院に足をはこんだ。事務長室に行き、病院の経理に関しての書類と勤務表を持って来させていたらイアンが血相を変えてやって来た。

「おい! 病院にいきなりなんの用だよ! 帳簿のチェックなら、わざわざ病院に来なくてもその写しを屋敷に持っていくさ。にずかずかと、やって来るなよ!」

「え? 俺の城? この病院は貴方のものなの?」

「そうさ! 俺が病院長なんだからさ! 俺がいなきゃ、この病院はまわっていかないだろ?」

「ほんとですよ! なんで、奥様がこんなところに、のこのことやって来るんですか? ここは私とイアン先生の病院ですよ!」

 派手な美貌のその女は、私を嘲るように見る。

「貴女のお名前は? それと貴女はこの病院の看護師よね?」

「私はキャサリンです。それに私は看護部長です。ただの看護師と一緒にしないでください! 医学のことなどなにもわからない奥様がここにいるのは場違いでは? 関係ない方はお屋敷に戻って、奥様同士で優雅にお茶会でもなさってください!」

 キャサリンは胸をそらせて、得意満面で私に言ったのだった。
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