1 / 19
1 優しい夫が豹変していく
私はアメリア・イシド伯爵令嬢。歳の離れた姉がもうずいぶん前に家出をして、平民と結婚して行方知れずになっていた。そんなせいで、私がこのイシド伯爵家を継ぐことになった。
爵位は私が女伯爵となり、イシド伯爵家の事業は私が運営している。ただ、イシド伯爵家は、貴族でありながら医学の発展に貢献するために病院経営を生業としてきた。私は医師の資格がないため、父の勧めもあり男爵家の次男のイアンを婿に迎えた。彼は医者になっていて、とても真面目で誠実な人柄だったからだ。
「僕は男爵家の次男で医学に詳しいことしか取り柄がないし、特にかっこよくもないしダンスも上手じゃないけれど、君のことだけは生涯大事にするつもりだ」
その言葉はとても誠実に聞こえたし、彼が言うようにそれほど見栄えが良くないことも、きっと私を裏切らないだろうと信じられた。そう、私は面食いではないから人柄重視と思ってイアンを選んだのだった。
結婚してもなかなか子供には恵まれず、それでも夫婦仲は良いと思っていた。ところが父が亡くなり、彼が医院長になるとだんだんと態度がでかくなっていった。
そして、それはどんどんとエスカレートしていくのだった。
「最近、屋敷に戻ってくるのが遅くなったわね? しかも、泊まりも増えたし」
「あぁ、急患が立て続けにはいってね。俺がこんなに頑張っているからこの病院は儲かっているんだ! 文句はいうのはよせよ!」
「え? 文句じゃないわよ。ただ、泊まりなんて今までなかったから・・・・・・」
「俺はね、患者さんひとりひとりを大事にしてるのさ。だから、それを放りっぱなしにして部下の医師にまかせたりできないよ。わかるだろ?」
医師は彼の他に7人いるから、夜は交代制で仮眠をとって急患に備えてもらっているはず。彼は医院長だから、泊まり込む必要なんてないのだ。
私は不審に思い滅多に訪れない病院に足をはこんだ。事務長室に行き、病院の経理に関しての書類と勤務表を持って来させていたらイアンが血相を変えてやって来た。
「おい! 俺の病院にいきなりなんの用だよ! 帳簿のチェックなら、わざわざ病院に来なくてもその写しを屋敷に持っていくさ。俺の城にずかずかと、やって来るなよ!」
「え? 俺の城? この病院は貴方のものなの?」
「そうさ! 俺が病院長なんだからさ! 俺がいなきゃ、この病院はまわっていかないだろ?」
「ほんとですよ! なんで、奥様がこんなところに、のこのことやって来るんですか? ここは私とイアン先生の病院ですよ!」
派手な美貌のその女は、私を嘲るように見る。
「貴女のお名前は? それと貴女はこの病院の看護師よね?」
「私はキャサリンです。それに私は看護部長です。ただの看護師と一緒にしないでください! 医学のことなどなにもわからない奥様がここにいるのは場違いでは? 関係ない方はお屋敷に戻って、奥様同士で優雅にお茶会でもなさってください!」
キャサリンは胸をそらせて、得意満面で私に言ったのだった。
爵位は私が女伯爵となり、イシド伯爵家の事業は私が運営している。ただ、イシド伯爵家は、貴族でありながら医学の発展に貢献するために病院経営を生業としてきた。私は医師の資格がないため、父の勧めもあり男爵家の次男のイアンを婿に迎えた。彼は医者になっていて、とても真面目で誠実な人柄だったからだ。
「僕は男爵家の次男で医学に詳しいことしか取り柄がないし、特にかっこよくもないしダンスも上手じゃないけれど、君のことだけは生涯大事にするつもりだ」
その言葉はとても誠実に聞こえたし、彼が言うようにそれほど見栄えが良くないことも、きっと私を裏切らないだろうと信じられた。そう、私は面食いではないから人柄重視と思ってイアンを選んだのだった。
結婚してもなかなか子供には恵まれず、それでも夫婦仲は良いと思っていた。ところが父が亡くなり、彼が医院長になるとだんだんと態度がでかくなっていった。
そして、それはどんどんとエスカレートしていくのだった。
「最近、屋敷に戻ってくるのが遅くなったわね? しかも、泊まりも増えたし」
「あぁ、急患が立て続けにはいってね。俺がこんなに頑張っているからこの病院は儲かっているんだ! 文句はいうのはよせよ!」
「え? 文句じゃないわよ。ただ、泊まりなんて今までなかったから・・・・・・」
「俺はね、患者さんひとりひとりを大事にしてるのさ。だから、それを放りっぱなしにして部下の医師にまかせたりできないよ。わかるだろ?」
医師は彼の他に7人いるから、夜は交代制で仮眠をとって急患に備えてもらっているはず。彼は医院長だから、泊まり込む必要なんてないのだ。
私は不審に思い滅多に訪れない病院に足をはこんだ。事務長室に行き、病院の経理に関しての書類と勤務表を持って来させていたらイアンが血相を変えてやって来た。
「おい! 俺の病院にいきなりなんの用だよ! 帳簿のチェックなら、わざわざ病院に来なくてもその写しを屋敷に持っていくさ。俺の城にずかずかと、やって来るなよ!」
「え? 俺の城? この病院は貴方のものなの?」
「そうさ! 俺が病院長なんだからさ! 俺がいなきゃ、この病院はまわっていかないだろ?」
「ほんとですよ! なんで、奥様がこんなところに、のこのことやって来るんですか? ここは私とイアン先生の病院ですよ!」
派手な美貌のその女は、私を嘲るように見る。
「貴女のお名前は? それと貴女はこの病院の看護師よね?」
「私はキャサリンです。それに私は看護部長です。ただの看護師と一緒にしないでください! 医学のことなどなにもわからない奥様がここにいるのは場違いでは? 関係ない方はお屋敷に戻って、奥様同士で優雅にお茶会でもなさってください!」
キャサリンは胸をそらせて、得意満面で私に言ったのだった。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。
【完結済み】妹の婚約者に、恋をした
鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。
刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。
可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。
無事完結しました。
【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜
恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」
不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。
結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、
「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。
元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。
独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場!
無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。
記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける!
※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる
物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。